シェイクスピアと日本の古典、そしてロックの名盤を自在に操り、極限の愛を描く。誰も見たことのない世界を現出してきた野田秀樹が、いま到達した新たな境地

BY NORIHIKO YONEHARA, PHOTOGRAPHS BY KISHIN SHINOYAMA

 劇伴音楽への考え方は揺れてきた。「音楽には観客をたやすく感動させる力がある」との実感は若い頃からあった。だが、ロンドン留学時、「言葉重視、音楽排除」の傾向が強い英国演劇に直面。帰国後の2000年から10年間ほどは、音楽の使用を抑制していた。今回は音楽ありきの作品だが、「音楽は危険な側面があるというところを一回通っているから、自分ではわかって使っています」。

 創作にあたり野田は、NODA・MAP公演への出演が決定していた松たか子、上川隆也、広瀬すず、志尊淳、竹中直人ら俳優陣とともにワークショップを重ねた。各曲でどんな場面が描けるのか、模索が続いた。「音楽と芝居が同化する使い方と同時に、芝居の内容と対照的な気分の曲を異化的に使えば、できそうだと思った」。野田は登場人物の相関図や、簡単なセリフ入りの物語の流れと使用する曲名などを記したシノプシス(あらすじ)を書き上げ、クイーン側に渡した。その構想にクイーン側も興味をもち、ギターのブライアン・メイが「光栄に感じています」とのメッセージを送ってきた。「メッセージには感激しました。ちゃんとわかってくれたと思いました」

画像: 松たか子と上川隆也、広瀬すずと志尊淳。二組のロミオとジュリエットの物語が時代を超えて重なり合う

松たか子と上川隆也、広瀬すずと志尊淳。二組のロミオとジュリエットの物語が時代を超えて重なり合う

 曲に感化された箇所は随所にあった。「セリフがなく、『ボヘミアン・ラプソディ』だけが流れるシーンを作りました」。「’39」の詞にも触発された。「『Your mother’s eyes, from your eyes』『Write your letters in the sand』などは人物設定に合うと思ったり、『白い砂に書かれた文字』などという言葉に変えて戯曲に取り込んだりしました」と語る。「今までたぶん書いたことがないようなものに仕上がりました。特に2 幕は、今まで作ったことがないものという気がしますね」。クイーンと野田。それぞれの世界で名を確立した両者が、みずみずしい感覚を持ち合って、新たな芸術的世界を求め歩み寄る。そんな光景が目に浮かぶ。
JASRAC 出 1912245-901

画像: 出演者たちと。稽古前、リラックスした笑顔がこぼれる

出演者たちと。稽古前、リラックスした笑顔がこぼれる

 周囲から見ると、野田は『Q』の戯曲を生き生きと執筆していたというが、本人の脳裏には、ひとりの人物の姿がよぎっていた。1970年、野田が14歳のときに自決した鬼才、三島由紀夫だった。「『ロミオとジュリエット』をなぜみんな好きかというと、若者の『美しい死』が描かれているからでしょう。今回の戯曲は、ある意味で、若者の美しい死を冒瀆しているわけで、三島さんが生きていたらどう思うだろう、とはちょっと思いました」。今作は、そうした三島のまなざしをはね返そうとする意識からか、2幕はひたむきに終点へと急ぐかのようだ。

 近年、英語戯曲『THE BEE』をはじめ海外での上演に積極的な野田。好評を得る『Q』。欧米などでの公演にも意欲を示す。
 野田秀樹は今、クイーンの名曲群を得て、ぐっと思考を深めながら疾走している。

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NODA・MAP第23回公演『Q』:A Night At The Kabuki
出演:松たか子、上川隆也、広瀬すず、志尊淳、橋本さとし、小松和重、伊勢佳世、羽野晶紀、野田秀樹、竹中直人
会場:東京芸術劇場プレイハウス(東京・池袋)
住所:東京都豊島区西池袋1-8-1
期間:~12月11日(水)
料金: S席¥12,000、A席¥8,500、サイドシート¥5,700※(全席指定・税込)
※ 25歳以下は、サイドシート¥3,000
※ 当日券あり
電話:0570-010-296(休館日を除く10:00-19:00)
公式サイト

 

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