歌舞伎ワールドへようこそ。劇場の扉、時空の扉、そして心の扉を開いて、絢爛たる異世界へと誘う連載。第十回は、片岡孝太郎さん・千之助さんによる、連載初の親子インタビューが実現

BY MARI SHIMIZU

 千之助さんにとって心強いのは、苅屋姫経験者である孝太郎さんが一緒に出演していることだ。苅屋姫は「デート」の後、孝太郎さん演じる姉の立田の前によって匿われるのである。孝太郎さん自身も、初めて苅屋姫を勤めたときは、伯父にあたる人間国宝の片岡秀太郎さんが立田の前を演じていたという。
「伯父の存在は、役の上だけでなく役者としても自分にとって大きな支えでした。今度は自分が支える立場。そういう意味で世代交代を意識させられる公演でもあります」

画像: 『菅原伝授手習鑑 加茂堤』苅屋姫=片岡千之助 ©︎ SHOCHIKU

『菅原伝授手習鑑 加茂堤』苅屋姫=片岡千之助
©︎ SHOCHIKU

 菅丞相が流罪地への船を待つ「道明寺」の場面では、仁左衛門さん、孝太郎さん、千之助さんが顔を揃えることになる。孝太郎さんは、「十三代目仁左衛門は、私にとって尊敬する大好きな祖父。その追善に、父と息子と、三代で出演できるのは嬉しいですし何よりありがたいことです。今の千之助に苅屋姫は荷が重いでしょうけれど、代々が大切にしてきた芝居です。ここからまた新たな未来へとつなげていかなければと思います」

画像: 『菅原伝授手習鑑 道明寺』立田の前=片岡孝太郎 ©︎ SHOCHIKU

『菅原伝授手習鑑 道明寺』立田の前=片岡孝太郎
©︎ SHOCHIKU

 立役の仁左衛門さんと女方の孝太郎さんと、幼い頃からそれぞれの舞台に接して来た千之助さんはごく自然に歌舞伎俳優の道に進んだ。
「祖父が演じるカッコイイ役や、父が演じる可愛らしい役を目にすると、自分もやってみたいと素直に思いました。踊りでは十八代目(中村)勘三郎のおじさまの影響も大きいです。小さい頃から楽屋にもよく行っていましたから、自分にとって芝居は日常。当たり前のようにそこにあるものだったんです」

 舞台を離れれば、現在は青山学院大学の比較芸術学科へ通う大学生でもある。
「西洋と東洋それぞれの音楽、美術、演劇映像をさまざまな角度から勉強しているのですが、西洋の古典に歌舞伎に通じるものを感じることがあります。そうするとこれは歌舞伎にできるなと考えたりします。そういう時間がとても楽しいですね」

画像: 片岡千之助(KATAOKA SENNOSUKE) 歌舞伎俳優。2000年生まれ。片岡孝太郎の長男。祖父は十五代目片岡仁左衛門。2003年7月、大阪松竹座『男女道成寺』の所化で初お目見得。2004年11月、歌舞伎座『松栄祝嶋台』お祭りの若鳶千吉で初代片岡千之助を名のり初舞台。祖父と父のもとで、立役、女方ともに研鑽を積み、進境著しい歌舞伎界のホープ PHOTOGRAPH BY KEIKO HARADA

片岡千之助(KATAOKA SENNOSUKE)
歌舞伎俳優。2000年生まれ。片岡孝太郎の長男。祖父は十五代目片岡仁左衛門。2003年7月、大阪松竹座『男女道成寺』の所化で初お目見得。2004年11月、歌舞伎座『松栄祝嶋台』お祭りの若鳶千吉で初代片岡千之助を名のり初舞台。祖父と父のもとで、立役、女方ともに研鑽を積み、進境著しい歌舞伎界のホープ
PHOTOGRAPH BY KEIKO HARADA

 進学をせず舞台に専念して経験を積んだほうがいいという考え方もあるが、学業と両立させたいという千之助さんの意志を孝太郎さんは尊重している。
「役者の世界はこの先いくらでもどっぷりと浸かることができます。が、大学生活はいまだから経験できること。芝居のなかだけにいたのでは知り得ないことをたくさん学べるチャンスです。彼には広い視野でものごとを見られる人になってもらいたいと思います。うちは歌舞伎のなかでは、どちらかというと“守り”が強いファミリーなのですが、息子たちの時代には新しい方向性があってもいいのではと思っています」

 祖父や父の稽古は「舞台よりも緊張する」という千之助さんにとって、試験シーズン真っただ中の大役はまさに「十代最後の試練」。そしてどうそれを乗り越えるかに未来を拓く鍵がある。取材後、帰路につく車の中で、親子の稽古はさっそく始まったという。

二月大歌舞伎
<演目>
昼の部『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)「加茂堤」「筆法伝授」「道明寺」』
**夜の部『八陣守護城』『羽衣』『人情噺文七元結』『道行故郷の初雪』

会期:~2020年2月26日(水)
会場:歌舞伎座
住所:東京都中央区銀座4-12-15
料金:1等席¥18,000、2等席¥14,000、3階A席¥6,000、3階B席¥4,000、1階桟敷席¥20,000
公式サイト
<チケットの購入は下記から>
電話: 0570-000-489(チケットホン松竹)
チケットWEB松竹

 

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