長い自粛期間を乗り越えて、ついに映画館に足を運べる日がやってきた。久しぶりの大スクリーンで堪能したいのは、ジム・ジャームッシュが挑むゾンビ映画か、グレタ・ガーウィグが描く不朽の名作か、はたまた?

BY REIKO KUBO

 新型コロナウイルスのパンデミックによって閉館を余儀なくされていた映画館がようやく再開され、話題の監督たちの最新作が一気に公開される。家に居ながらにしてあれこれ観られる配信サービスも楽しいけれど、暗闇の中で1本の映画と静かに対峙する時間は、やはり格別なひととき! 感染対策にも気をつけながら、自分好みの作品と出会っていただきたい。


1. ジム・ジャームッシュがジャンル映画を借りて描くは!?
『デッド・ドンド・ダイ』

 いつもは穏やかなアメリカの片田舎。ところが最近、なんだかおかしなことが続出し……。西部劇風『デッドマン』や、ヴァンパイアを主人公にした『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』など、ジャンル映画のスタイルを借りて独特の詩や哲学を描いてきたジム・ジャームッシュが、今回挑むのはなんとゾンビ映画だ。元祖ジョージ・A・ロメロ監督のマスターピース『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』を踏襲しつつのオフビート・コメディは、スマートフォンを片時も離さず夢遊病患者のように歩き回る現代人を強烈風刺。

そんなジャームッシュ版ゾンビは生前の執着からも逃れられずに彷徨い、ミュージシャンのイギー・ポップが怪演するコーヒー・ゾンビをはじめ、Wi-Fi・ゾンビ、ファッション・ゾンビ、シャルドネ・ゾンビなど続々と増殖。日本刀を操る謎の葬儀屋(ティルダ・スウィントン)とともに、ビル・マーレイ、アダム・ドライバー、クロエ・セヴィニー扮するおとぼけ警官チームは果たして町を救うことができるのか!?

画像: 『デッド・ドント・ダイ』予告編 © 2019 Image Eleven Productions Inc. All Rights Reserved. youtu.be

『デッド・ドント・ダイ』予告編
© 2019 Image Eleven Productions Inc. All Rights Reserved.

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『デッド・ドンド・ダイ』
公開中
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2. 旬の女性監督が名作を蘇らせた
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』

 19世紀の作家オルコットが、南北戦争時代の4人姉妹を描いた名著『若草物語』。前作『レディ・バード』でアカデミー賞監督賞にノミネートされた注目の女性監督グレタ・ガーウィグが「まさに少女時代の私の物語だった」と映画化を熱望。「女性作家の本なんて売れない!」と言われ、初版を男性名で出版したオルコットの原作小説を読み込んで、女の幸せといえば裕福な男性との結婚が総てだった時代に、それぞれの幸福のために心傾ける姉妹の生き様を描いた珠玉作。

 主人公の次女ジョーを託されたシアーシャ・ローナンは、瑞々しい演技でアカデミー賞にノミネート。長女メグの結婚を掘り下げたエマ・ワトソン、美人だけど自己中のレッテルを貼られていた末娘エイミー役のフローレンス・ピュー(『ミッドサマー』)、姉妹の母親役でアカデミー賞助演女優賞に輝いたローラ・ダーン、そして隣人ローリー役のティモシー・シャラメと、人気俳優たちが演じる登場人物それぞれが、より深みを増して新たな若草物語を織り上げる。

画像: 『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』予告編 COURTESY OF SONY PICTURES ENTERTAINMENT youtu.be

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』予告編
COURTESY OF SONY PICTURES ENTERTAINMENT

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『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
6月12日(金)より、TOHOシネマズ六本木ヒルズ、新宿ピカデリーほか 全国順次公開
公式サイト

3. ベルギーの巨匠ダルデンヌ兄弟のカンヌ受賞作
『その手に触れるまで』

 ベルギーに暮らす13歳のゲーム少年アメッドは、ある時からイスラム教の聖典コーランに夢中になり、熱心に礼拝に通う日々。「アラーの神は他の宗教を否定していない」という声にも聞く耳を持たず、彼を気にかける女性教師との握手を「大人のムスリムは女性に触らない」という理由で激しく拒む。そんな息子を母親は心配するが……。

『ロゼッタ』『ある子供』でパルムドールに二度輝いたヒューマニズムの巨匠、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌが、思春期の潔癖さから狂信的に傾いてゆく少年の危うさに焦点を当てた、第72回カンヌ映画祭監督賞受賞作。過去作『息子のまなざし』を思い出させるスリリングな手法で、少年を取り巻く現代社会、農場での更生プログラムや、指導教官やカウンセラーの仕事ぶりをドキュメンタリーのように追いながら、アメッドの心の変遷を細やかに刻んでゆく。ラストでは、強く、優しく主人公に寄り添い続ける兄弟監督の、人間への揺るがぬ信頼が観る者の胸を熱くする。

画像: 『その手に触れるまで』予告編 © Les Films Du Fleuve – Archipel35 – France 2 Cinéma –Proximus –RTBF youtu.be

『その手に触れるまで』予告編
© Les Films Du Fleuve – Archipel35 – France 2 Cinéma –Proximus –RTBF

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『その手に触れるまで』
6月12日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか 全国順次公開
公式サイト

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