威風堂々としたオーラをまとい、異彩を放つ女優、シガニー・ウィーバー。約半世紀にわたるそのキャリアにおいて、彼女はイメージを決めつけられることも定義されることも拒んできた。現在71歳になるが、ともすればこれまで以上に意欲的に、彼女らしく、“遊び心も携えて”、前へ突き進んでいく

BY FRANK BRUNI, PHOTOGRAPHS BY CRAIG MCDEAN, STYLED BY JASON RIDER, TRANSLATED BY JUNKO HIGASHINO

 今年の夏、私はマンハッタンのミッドタウンにあるウィーバーの自宅を訪れ、ソーシャルディスタンスを保ちながら、彼女と長いあいだ話をした。イーストリバーの美しい景色が見渡せる大きなレセプションルームに入った途端、人々にはあまり知られていない、ウィーバーの遊び心を感じさせるディテールに目を奪われた。上品なダイニングテーブルと、優雅に配されたカウチソファの間に、高い天井からロープで吊られた分厚い木製のブランコがゆらゆら揺れていたのだ。そのゆったりした心地よい雰囲気は、彼女の“肩の力を抜いた生き方”を象徴している。『アニー・ホール』(ウディ・アレンの隣に無言で一瞬登場。1977年公開)を皮切りに、45年間に出演した50作以上のフィルモグラフィにも、同じしなやかさが感じられる。

 『エイリアン』(1979年)と『エイリアン2』(1986年)の間には、『シガニー・ウィーバーの大発掘』というフレンチコメディで、著名なセックスセラピストのルース・ウエストハイマーと共演。ビル・マーレイや巨大なお化け“ステイパフト・マシュマロマン”が登場した幽霊退治のドタバタコメディ『ゴーストバスターズ』(1984年)ではゴーストに取りつかれる役を演じた。シリアスな役にくだらない役、恋に落ちる役、汗だくになって動き回るアクションヒロインまで、彼女が演じてきた役柄には一貫性も共通項もない。またキャリアの絶頂期にありながら、1988年公開の『ワーキング・ガール』ではメラニー・グリフィスとハリソン・フォードの陰で脇役に徹した。だがこのおかげでゴールデン・グローブ賞の助演女優賞を受賞し、同時に『愛は霧のかなたに』の主演女優賞も手にする。同作で悲運の霊長類学者ダイアン・フォッシーを演じたウィーバーの共演相手は、主要ロケ地のルワンダに棲む“シルバーバック”と呼ばれるマウンテンゴリラだ。ウィーバーは撮影中、ジャングルに分け入ってゴリラの群れの間に座った。「ゴリラの赤ちゃんが私の上にのぼってきて、おしっこをかけたり、髪の毛を引っ張ったりしたときは、彼らに手で触れないように細心の注意を払ったわ。ゴリラの母親は、食べるのに夢中で周りのことなんて気にしていないみたいなのに、人間が赤ちゃんに触れようものなら、ものすごい勢いで飛んでくるから」

 この撮影を通じて熱心な自然環境保護論者になったという彼女は、当時のことを懐かしそうに語る。「ゴリラたちと過ごしたあの経験は、“至上の喜び”に近いかもしれない。彼らは人間よりずっと直観的に生きているの。スマートに、食べること、寝ること、交尾することを最優先しながら」

 1989年のダブル受賞の2年ほど前にも、ウィーバーは『エイリアン2』で突き抜けた才能を披露し、最優秀主演女優賞にノミネートされている。同作の脚本家兼監督であるジェームズ・キャメロンは回想する。「あれは体力的にタフな撮影だったと思うよ。シガニーは複雑な舞台装置の中をあちこち駆け回って、バルブやハンドルが飛び出た場所に腕や肩や腰をぶつけていたから。その後何週間も彼女の体じゅうがあざだらけだったのを今も覚えているよ」。このあと『アバター』(2009年)でもウィーバーを起用したキャメロン監督は、『アバター2』の過酷な水中撮影にも彼女ならたじろがないことを知っていた。

 ウィーバーは決してためらわない。何も生まれつき自信に満ちていたわけじゃない。ただ彼女には常に、普通の道とは違うほうへ引っ張られているような、背中を押されているような、そんな感覚があった。ウィーバーには自分自身の存在を肯定するものが必要だった。なぜなら、ほかの人よりずっと背が高かったから。

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「11歳のときすでに今と同じ身長だったわ」。つまり180cmあったということだ。「巨大な蜘蛛みたいだったの」。彼女の本名はスーザン・ウィーバー。両親はスーザンを医者に連れていき、検査を受けさせた。「私の背がどんどん伸び続けるんじゃないかって、きっと心配したのよね」。背はそこで止まったが、“規格外の、生物学的に見て頑強な人”というレッテルは一生ついてまわり、彼女は普通とは違うレールの上を歩んでいくことになった。のちに彼女がスーザン(Susan)から、『グレート・ギャツビー』の登場人物に由来するシガニー(Sigourney)という、長身に似合う長い名前に変えたのは至極当然のことかもしれない。ウィーバーの父親はマンハッタンのテレビ局で重役を務めており、彼女もその街で育った。コネチカット州の寄宿学校を卒業後、スタンフォード大学で英語の学位を取得し、イェール大学の演劇大学院に入学。「演劇の教師たちには『君には才能がない』って酷評されたわ。でもすぐあとに彼らは少し言い直したの。『今の言葉は取り消すけど、君にはコメディしかできないよ。ドラマは絶対無理だから』って」

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