威風堂々としたオーラをまとい、異彩を放つ女優、シガニー・ウィーバー。約半世紀にわたるそのキャリアにおいて、彼女はイメージを決めつけられることも定義されることも拒んできた。現在71歳になるが、ともすればこれまで以上に意欲的に、彼女らしく、“遊び心も携えて”、前へ突き進んでいく

BY FRANK BRUNI, PHOTOGRAPHS BY CRAIG MCDEAN, STYLED BY JASON RIDER, TRANSLATED BY JUNKO HIGASHINO

 ウィーバーと3本の映画で共演した俳優ケヴィン・クラインとは、からかい合いながら、現場に互いのエゴや自意識を持ち込まないようにしてきた。クラインは、ふたりともそのことに感謝しているからこそ、友情が長続きしていると言う。ホワイトハウスを舞台にした『デーヴ』(1993年)で初めて共演したとき、ウィーバーはクラインの背後で、スタッフたちにあくびや居眠りのポーズをさせて写真を隠し撮りしていたそうだ。「最後にその写真をまとめてアルバムを作ってくれてね。ものすごい力作だったから、相当時間がかかったはず。あんな手の込んだいたずらをされたのは初めてだったよ」

 その肩肘張らない、のびやかな性質は一貫していて、彼女は同世代の俳優たちのようにアカデミー賞狙いの作品だけに出たり、選り好みをしたりはしなかった。1994年に私が初めてインタビューをしたとき、彼女はこんなふうに話してくれた。「ときどき(ストリープと共通の)エージェントに、私だって『ソフィーの選択』(ストリープ主演、1982年)や『愛と哀しみの果て』(ストリープ主演、1985年)みたいな映画に出たいって、ぼやいたものよ。だからといって、そのために自分自身で何か特別に動いたわけじゃないんだけれど。ただ私は“正統派”じゃないって感じていたの。“シリアスな役が似合う女優”と聞くと、私は違うなと。自分はアーノルド・シュワルツェネッガーとアイヴァン・ライトマン(『ゴーストバスターズ』等の監督)の掛け合わせで、メリル・ストリープやグレン・クローズの要素は雀の涙ほどしか持ち合わせていないと思っていたから」

 だがそんなふうに話しながらも、当時おとめの彼女は『死と処女』(1994年)で主演を務め、そのプロモーション活動をしているところだった。彼女が演じたのは、過去に自分を拷問した容疑者を見つけ、その男を監禁するという女性だ。ブロードウェイの舞台版(『死と乙女』)ではグレン・クローズが演じた役である。1990年代のスクリーンに頻繁に現れた“死”をテーマにした作品を通して、ウィーバーは女優として徐々に自信をつけていった。時がたつにつれてストリープやクローズが、ユーモラスな役を演じるようになる一方で、ウィーバーは以前よりシリアスな役を任されるようになった。『アイス・ストーム』(1997年)では、冷酷で魅惑的な不倫妻に扮し、再びクラインと共演した。彼女がもっと多くの人に観てもらいたかったという『マップ・オブ・ザ・ワールド』(1999年)では、身に覚えのない児童虐待の疑いで逮捕される女性を演じた。

 これらの人物も“アウトサイダー”ではあるが、以前の役とは違って、ひっそりと地味で、哀愁を帯びている。もちろん彼女らしい遊び心は失わず、1990~2000年代には奇抜な演出の小規模作品にも多く登場した。『コピーキャット』(ハリー・コニックJr.と共演したサスペンス。1995年)のような大衆映画や、『ギャラクシー・クエスト』(傑作SF作品をパロディ化したカルトムービー。1999年)といったコメディがその一例だ。

 それ以降は彼女のキャリアを象徴してきた“折衷主義”がますます顕著になり、ここ10年間、活躍の幅は広がるばかりだ。ブロードウェイでは、デュラングがチェーホフを現代パロディ化した『ワーニャ、ソーニャ、マーシャ、と、スパイク』(2012年初演)に出演。ケーブルテレビ番組では『ポリティカル・アニマルズ』(2012年)でヒラリー・クリントンを彷彿させる国務長官に扮し、映画ではホラーからアニメまで多様なジャンルで活躍している。どんな意外な場所にも足を踏み入れる彼女は、英『ドクター・マーティン』や仏『コール・マイ・エージェント』といったコメディドラマにゲストとして登場したりもした。『スポンジ・ボブ/スクエアパンツ』や政治風刺番組『フル・フロンタル・ウィズ・サマンサ・ビー』では自らをネタに笑いをとって楽しんでいる。型破りなキャリアを築いてきた彼女は「若さを武器にしたことがないから年齢はさほどネックにならない」と言いきる。多くの女優が名乗り出て告発したセクシュアルハラスメントにも、屈辱を味わうような出来事にも遭ったことがないという。彼女はやはり正真正銘のリプリーなのだ。「ある意味、デビューしてすぐに火炎放射器を手に駆け回るヒロインを演じられたのはラッキーだったのかも」とウィーバーはいたずらっぽく笑った。

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 確かに、一時代前にこの世界に入った彼女はラッキーだった。今、俳優の“ブランド”は細かく定義され、ソーシャルメディアでイメージを保つことは、その人なりの戦略を立て、実績を積み重ねていくことと同じくらい重要になっている。ウィーバーやクラインのエスプリはもっと自由だ。前はあっちを向いていたから、今度は違うほうへと、思うままに進んできた。彼らは振り幅の大きい演技力があってこそ、充足感を伴った息の長い活躍ができるのを知っているのだ。ウィーバーの最新出演作は、今年末から来年頭にかけて3本封切られる予定だ。内容は極秘だという『ゴーストバスターズ/アフターライフ』、“プラダを着ていない悪魔”とも呼ぶべき出版エージェントを演じた『サリンジャーと過ごした日々』。そして、小さな町を舞台に、ウィーバー扮する繁盛した不動産業者と、クライン(再び共演)が演じる地元の便利屋との関係や、この女性が隠していたアルコール依存症が招く問題を描いた『The Good House(邦題未定)』である。

『ゴーストバスターズ/アフターライフ』と同様に、『アバター2』の内容については「ノーコメント」とのことで、水中撮影の目的はわからない。だが、彼女とほかのキャストたちが、巨大な水槽の中で何度も撮り直しをする間、口を開けておく必要があったことだけは教えてくれた(普通水中では口を閉じるはずだが)。腰回りにウエイトをつけていたので、プロのダイバーが急いで彼女を水面に浮上させては空気を吸わせたらしい。これを聞いて、思わず私は言ってしまった。「撮影中に『こんなのナンセンスよ』って一度も言わなかったんですか?」

「たしかにちょっと怖かったわ。でも不安を減らすために訓練したわけだし、私は絶対やり遂げたかったの。『ああ、彼女はもう年だから無理だよね』って誰にも思われたくなかったから」いったいウィーバーには、まだ足を踏み入れていない地などあるのだろうか。彼女は嬉々としながら『My Daughter Keeps Our Hammer』(ブライアン・ワトキンス原作、2014年初演の舞台劇)の映画化のプロジェクトについて語りだした。「ちょっと厄介な母親を演じる予定よ。この母親の親友は羊でね、羊と一緒にメロドラマを観たりするの」

 いかにもスター然とした役柄は、ほかの俳優たちに任せておこう。だが異星人や羊や笑いとも無縁なスターたちはどうもがいても、ウィーバーの高みにはたどりつけないはずだ。

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PRODUCTION: PRODN. MANICURE: MEGUMI YAMAMOTO FOR SUSAN PRICE NYC. DIGITAL TECH: NICK BRINLEY. PHOTO ASSISTANTS: ALEX HOPKINS, PETER DUONG AND NICHOLAS KRASZNAI. SET ASSISTANT: EMMA MAGIDSON. TAILOR: CAROL AI. STYLIST ASSISTANT: ZANE LI

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