明と暗、動と静、そして清と濁。キャリアのなかで多種多様な役柄を演じてきた高橋一生が、不惑の今年、鬼才 野田秀樹が手がける新作舞台に初主演。多面的な役作りに定評のある彼が、舞台上でどんな顔を見せるのか。真か噓か、果たしてそれは――

BY SATOKO HATAKEYAMA, PHOTOGRAPHS BY TAKAY, STYLED BY TAKANORI AKIYAMA, HAIR & MAKEUP BY MAI TANAKA(MARVEE)

 今回の「フェイクスピア」での主人公だけでなく、今まで高橋が演じてきた虚構性の強い役柄についても、こうした彼なりの方法論が駆使されてきたのかと思うと、その完成度とリアリティに合点がいく。難役をパーフェクトに演じてみせるそのストイックさから、役柄に憑依するタイプなのかと尋ねてみると「全くそうではないです」と意外な答えが返ってきた。

「僕は常に『離見の見(世阿弥の能楽論で、演者が自分の演技について客観的な視点を持つこと)』でいるほうです。けれど『この瞬間は役に没入してもいいんだ』という瞬間へのスイッチングは非常に早いということを、今回、野田さんとの稽古で初めて認識できたような気がしています。野田さんがあまりにも自由に演らせてくれるものだから、そこに気づいたときには自分でも『おお!』となりました。『離見の見』は、ある意味アウト・オブ・コントロールな状態。けれど、そうはありながらもどこかで手綱を握る自分もいて、没入していると気づいたら手綱を引っ張って客観的な視点に戻る瞬間もある。『おい、マジになるなよ』という自分が意識の奥底にいることで、自分と役柄のバランスをいい具合に取れているような気がします」

画像1: <撮りおろし&インタビュー>
多面体の男ーー
高橋一生とは何者なのか

 俳優として数多くの作品で積んできた様々な経験に加え、客観的に自分を見ることのできる冷静さを保ち続けていることも、高橋の魅力を大いに深めているのだろう。本人は「気恥ずかしさが助けてくれている部分もあるでしょうね」と謙遜するが、作り手からのオファーが絶えない理由も、そういった時間の積み重ねと経験則にあるのではと推察できる。

「実はこの稽古中、ふと思って前のドラマの台本を読み返しました。男性と女性が入れ替わる物語で、僕の役は『なんて献身的な人間なのだろう』と思いながら演じていたのですが、改めて読み返したら、その芯は最初から最後までブレていませんでした。人からはよく、(サイコなキャラが)『途中で変わりましたね』と言われたんですが、脚本家の方は僕が演じる役のキャラクターを全く変えていなかったことに驚いたんです。人間というものは不安定な生き物で、角度によって見え方がガラリと変わってしまう。それだけ複雑で曖昧な多面体なんです。裏を返せば、人間は境遇や生活によって表面的に違う人格に見えているだけで、たとえそれが犯罪者であっても、根幹は同じひとつの『魂』なのかもしれない。そんな風に考えるのは、長い間お芝居をさせていただいて、様々な役を演じてきたことも、少なからず影響しているのかもしれません。大仰なことではありませんけれど、僕にとってはそういうことを感じられる境地に、少しだけですけれど足を踏み込めたのはよかったなと思っています」

 新しい生活様式が必須となった現在、世の中は以前にも増してわからないものをひとつに捉えようとしたり、出るはずのない答えに対して白か黒かの正解を求めようとする風潮にある。その空気に囚われることなく、多面体であり続ける高橋一生。彼はいったい何者なのか。我々はもしかすると、その爽やかな笑顔で、さらりと煙に巻かれているのかもしれない

高橋一生(ISSEY TAKAHASHI)
1980年、東京都生まれ。ドラマ、映画、舞台と幅広く活躍。近年の主な出演作に、映画『スパイの妻』、『ロマンスドール』、ドラマ『天国と地獄~サイコな2人~』、『岸辺露伴は動かない』など。映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』が2021年6月4日(金)公開予定

NODA・MAP第24回公演『フェイクスピア』
<東京公演>
会期:~2021年7月11日(日)
場所:東京芸術劇場プレイハウス
電話:03(6802)6681(NODA・MAP)
※ 新型コロナウイルス感染予防に関する来館時の注意、最新情報はこちらを確認ください
<大阪公演>
会期:2021年7月15日(木)〜7月25日(日)
場所:新歌舞伎座
電話:0570‐200‐888(キョードーインフォメーション)
※ 新型コロナウイルス感染予防に関する来館時の注意、最新情報はこちらを確認ください

公式サイト

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