INTERVIEWS BY ELLA RILEY-ADAMS, PHOTOGRAPH BY LINDSAY ELLARY, TRANSLATED BY MIHO NAGANO
ジュリエット・ルイス(シンガーソングライター/女優)
私がソフィーに初めて会ったのは、バーバンクにある大きなオフィスビルで、(テレビドラマ・シリーズ『イエロージャケッツ』の)第1話の撮影の前だった。私たちは互いに「これは、あなたにぴったりの役!」と言い合った。彼女と私は、ともにナタリー役にキャスティングされており、若い頃のナタリーを演じるのが彼女だった。ソフィーは、撮影現場で私の演技をじっと観察し、私が醸し出す陰鬱さをすぐに自分のものにした。ナタリーという役柄は、弾丸が込められている拳銃のような存在で、彼女は、一触即発の危険と常に隣り合わせだ。ソフィーの年齢で、観客にそんな印象を抱かせることができる俳優は多くはない。私は若い頃からその手の資質には恵まれていた。――映画『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(ルイスが殺人を繰り返す逃亡者を演じた1994年の作品)に出演したおかげで、私が観客を震撼(しんかん)させることができるということだけは、認知されていた。それと同じように、ソフィーの際立った才能は、彼女の立ち居振る舞いの端々から、自然にほとばしっている。
今のソフィーと同じ年齢の頃、私はひそかに歌手やダンサーになりたいと願っていた。実際に30歳で音楽をやりはじめると、俳優業に戻るのは大変だった。周囲の人々からは「ダメだ、あなたは音楽をやっていればいい」と言われた。私は「でも、両方やりたい」と思っていた。今の時代は、美術展を開催したり、詩を書いたり、音楽を作ったりしながら、テレビ番組に出演することもできる。今の若いアーティストたち全員に言えることだけど、自分の成功の妨げになるような自己規制をせずに、自分が伝えたいメッセージを見つけられるかどうかのカギは、彼女たち自身が握っている。
当時の私は、自分には価値がないと思い込み、この業界で自分の居場所を見つけられず、自分はキャリアを諦めるべきだと思っていたけど、それは間違いだった。そんな思考でいると、投げやりな態度にその考え方が透けて見えてしまうし、結局その先、何も得るものはない。自分自身を守り、自分という存在を大事にしてやる習慣をちゃんと身につけることが大切だ。
ソフィー・サッチャー(女優)
ジュリエットが私にくれたアドバイスは、「考えたことはちゃんと形にしなさい」ということ。歌を作っていると、いつも自分の頭の中で、そんなものを作ってもしょうがないとか、自分で録音した曲なんかダメだとかいう声が聞こえてくる。私は完璧主義者だから、つい徹底的にこだわってしまう。私が初めて出演した映画『PROSPECT プロスペクト』(2018年のSF作品)の撮影が終わって、家に戻ったときに、自分の中で何かが変わったのを覚えている。前より自分に自信がついたし、この世界に全身で飛び込むと、こんなにパワーをもらえるんだとわかった。そうなると、目に映るものすべてがアートに見えてくる。
批判されることを恐れて心配ばかりしていると、それが壁になってしまう。そんな壁をぶち壊して何でも自分がやりたいと思うことに挑戦し、考えてもみなかったことをやってみるのが大事だと思う。ジュリエットのおかげでそう思えるようになった。彼女のことを見ているだけで勉強になる。彼女は決して安易な道を選ばないから。私がよく話題にするアートや音楽は陰鬱すぎると言われることが時々あるけど、他人が私をどう見ているかを気にしすぎないようにしている。俳優は白いキャンバスのように色がついていないほうがいい、という考え方もあるけれど、私はそういうタイプじゃない。私は、自分が何にのめり込んでいるのかをちゃんと熟知しているから。
INTERVIEWS HAVE BEEN EDITED AND CONDENSED. PRODUCTION: PETER McCLAFFERTY. STYLING: DANI + EMMA. LEWIS: HAIR: PAUL NORTON. MAKEUP: SU NAEEM. THATCHER: MAKEUP: ROBERT RUMSEY