BY CHIKAYO TASHIRO
今年の上半期、『涙の女王』と人気&話題を二分したといっても過言ではないドラマ『ソンジェ背負って走れ』で、主役のソンジェ役を演じて大ブレイクを遂げたビョン・ウソク。
それまでは二番手を演じることが多かった彼が初の主演を務めたのが、ソンジェというアイドルと、彼の大ファンのヒロインがタイムワープを繰り返しながら繰り広げていくロマンチックラブストーリーの『ソンジェ背負って走れ』。この青春ラブストーリーの中で、高校生からトップアイドルになった姿までを演じたビョン・ウソクは、哀愁があってピュアでまっすぐな眼差しがいつも潤んでいて、それがはかなさを醸し出し、美しかった。
脚本家は、17歳の少女の初恋を描いた映画『20世紀のキミ』で初恋相手の高校生を演じるビョン・ウソクを見て、ソンジェ役にぴったりと感じたそうだが、『20世紀のキミ』でも『ソンジェ背負って走れ』でも、笑顔がどこかはかなげで、うるんだ涙目が似合う。
モデル出身だけに190センチというとびぬけたスタイルの良さがまず目を引くが、彼の一番の魅力はやはり目元に浮かぶ揺らぎというか危うさ、はかなさだと思う。それが甘さ、ロマンチックさとなって女心をときめかす。そんな憂いを秘めた揺らぎや危うさは、まだ定まらない青春、思春期にぴったりで、実年齢は30歳を超えているものの、青春のアイコンとしてもハマるのだろう。2017年の俳優デビューから着実にステップアップして、今最もHOTな人気を誇る存在となったビョン・ウソク。
そんな彼の、1年半前、昨年3月の初来日ファンミーティングに続いて2度目のファンミーティングとなった今回は、その人気ぶりを証明するように会場も動員数もトップスターにふさわしく、武蔵野の森総合スポーツプラザ、メインアリーナという1万人規模のキャパシティーの会場で2日にわたって行われた。前回が800人規模の会場で満席ではなかった状況から考えると、俳優のブレイクとはこういうものかとまざまざと感じる状況だった。
『ソンジェ背負って走れ』のおかげで大ブレイクした恩を忘れず、ドラマが終了してから4か月が経っているにもかかわらず、ウソクは『ソンジェ背負って走れ』の制作チームを東京ファンミに招待。開場前にはそのドラマ制作陣ご一行チームが、「ソンジェは贈り物です。私たちのウソクさんを末永く幸せにしてください~」「ソンジェ、ウソク、フォエバー 君を見に韓国から来たよ」と、ウソクの好意に応えるように、作ってきた横断幕を掲げて客席から拍手を浴びていた。制作陣にもこんなにも愛されているビョン・ウソクの人柄がわかる一コマだった。
そして客席の尋常ならざる期待と熱気の中で始まったファンミーティング。ステージに駆け込むように『ソンジェ背負って走れ』の挿入歌「Loveholic」を歌いながら、ビョン・ウソクが登場。キラッキラのオーラを振りまきながら現れたウソクは、ニットのカーディガンにジーパン姿。足が長っ、顔ちいさっ、腰の位置高っか~い、いったい何頭身なんだ~と思えるスタイルの良さ。笑顔も体も弾けるようで、ファンの手拍子を促したり花道のステージに進んでしゃがみ込んでファンと目を合わせたりなど、アジアツアーも最終地点だけに、初々しさの中にも余裕が感じられた。
「こんばんは、私はビョン・ウソクです」と日本語で言ったあと、「初めてのファンミは日本で、アジアツアーの最後をまたこの日本で迎えられて意味深いです。より大きな会場でより多くの愛を受け取ることができてすごく緊張しています。すごくうれしかったのでかなり飛び回ってしまいました。なので今少し息が切れています」と少し興奮の面持ちでご挨拶。
ソンジェはどんな存在かと聞かれて、「一生忘れられないし、忘れたくないです。それほどこのキャラクターを本当に愛しているし、この作品を作ってくれた皆さんのことも感謝でいっぱいです。ソンジェがあったからこうして皆さんに会えていると思うと、この瞬間をずっと記憶しておきたいし、いつか歳を重ねたあとにもやっぱりこの瞬間を思い出したいと思わせてくれる作品です。とても愛しているキャラクターです」と熱い思いを語ったあとで、通訳がしゃべりだすと、自分がつい長くしゃべってしまったことに気が付いて、「話が長すぎますね。今度からはもっと短く区切ってお話しします~」と反省していたのもご愛敬だった。
それにしても、足を組んだ座り方がノーブルで、まるでどこかの国の皇太子のようだ。ソンジェで彼のファンになったという人が圧倒的に多い客席だけに、このコーナーは外せないということで、【ソンジェのすべての時間】という客席から3名を選んで『ソンジェ背負って走れ』の中のソルとソンジェの胸キュンシーンを実際に演じるというドラマ場面再現コーナーが行われた。大会場で客席からファンを呼ぶのも時間がかかるので、この企画をやるかどうか主催は躊躇したそうだが、ウソク自身の「これは東京でもやらないと」との声で実現したのだそう。
眠っているソルの手にこっそり手を当てて喜ぶシーンや、野球場でいきなりソルが持っている飲み物を横から飲むシーンなど、ウソクは、ファンにこんな風に演技をしてねと指導してあげて、顔を近づけるように再現してあげていて、これは当選したファンにとっては気絶もののキュンキュンコーナーだった。
ウソクは、ファンに相対するときのひとつ一つの仕草が柔らかくて優しい。胸に手を当ててお礼を言ったり、顔の前で両手を合わせて感謝の気持ちを示したり、客席への手の振り方も丁寧だ。さぞかし繊細で優しい人柄なのだろうなと想像できる。そんなところも大好感ポイントだった。
第二部は、衣装を着替えて会場練り歩きからスタート。ラメ入りの黒のニットジャケットに黒のパンツ。これはもう『ソンジェ背負って走れ』がアイドルの役だったので、そのままソンジェがドラマから抜け出してきたようなシーンの再現に、客席のファンの熱気も最高潮に! ウソクは、手を振ったり、ファンが作るハートに手を合わせてあげたり、終始穏やかな笑顔を浮かべて丁寧に客席をまわっている姿は神々しさすら感じた。
そして歌ったのが、なんと70年代シティポップの松原みき「真夜中のドア〜Stay With Me」を日本語で。歌詞がすごく良いので、曲は難しかったけど一生懸命に練習して歌いましたとのこと。特別に日本向けに準備してくれたのがファンには嬉しい。
ラストの歌のコーナーでは「皆さんに届けたくてこの曲を準備しました」と言って、ドラマ『ソンジェ背負って走れ』の映像をバックに「I Think I Did」を歌い、最後の最後に、劇中でウソク演じるソンジェが歌った「ソナギ」を披露してくれてファンはもう大感激!ステージを去り際に「僕にこんなに素敵な思い出をくれてありがとうございます」と目を真っ赤にして声を詰まらせて泣いていて、思わず客席ももらい泣き。今最も旬のスターと熱烈ファンたちの熱い気持ちが通い合う温かいファンミーティングだった。
ドラマの役でブレイクするとその役のイメージとは違う自分をファンミで見せようとするスターもいるが、ビョン・ウソクの場合は、徹底的に自分に求められている期待に沿った、ソンジェの世界観を大切にした内容だった。ドラマの中の、一途にヒロインを想い、はにかんだ微笑みを浮かべる純粋なイメージそのままのビョン・ウソクの姿がそこにあった。
ドラマの役に恋をして、そして実物に会って、その役柄とのシンクロ率の高さを感じて、役を離れたビョン・ウソク自身に恋をする。これはかつて『冬のソナタ』でペ・ヨンジュンが多くの女性たちの心をとらえた現象の再来だと感じた。ビョン・ウソクは韓国男子の義務である兵役もすでに終えているので、これからも存分に活躍できるのが強みだ。さわやかな瑞々しさで「青春のアイコン」、「国民の初恋」として大ブレイクを遂げた彼だが、今後は、彼特有の、眼差しに浮かぶミステリアスな憂いを生かした、ちょっと危険でセクシーな役どころもどんどん演じてほしい。これからの活躍が楽しみでしかたがない。
▼あわせて読みたいおすすめ記事