BY HIROKO NARUSE
極めて精巧にデザインされ生き生きとした輝きを放つ、フラワーやバタフライなど自然モチーフのジュエリー。ティファニーの “ジャン・シュランバージェ コレクション”には、見る人すべての目を惹きつける秘密が隠されている。
’50~’70年代にティファニーで活躍した伝説的なデザイナー、ジャン・シュランバージェ。フランス人の彼は、’30年代にパリのオートクチュールメゾン、スキャパレリのビジューを手がけ、独創的なデザインで頭角をあらわした。第二次大戦を機にアメリカに渡り、’56年にティファニー社の副社長に就任。同年にニューヨーク本店に自身のサロンをオープンした。そこに数多くのセレブリティやスターが訪れ、彼の作品を愛用したことで、さらに評判をよんだ。その彼が残したデッサンから制作されたジュエリーコレクションが、この10月に揃って来日。ティファニー社チーフ・ジェモロジストのメルヴィン・カートリー氏に、コレクションの魅力と作品に込められた職人たちの匠の技について伺った。
「今回来日したシュランバージェ コレクションのジュエリー制作は、彼が残した芸術的なスケッチを解釈することから始まりました」とカートリー氏は語る。すべての作品の制作を担うのは、ティファニー社のシュランバージェ専任の職人で構成されるチーム。カートリー氏は、鍵となる宝石選びと、制作の方向性に携わる。「スケッチはいわゆるテクニカルドローイングではないため、その作品で彼が表現したいことは何かを読み解き、最適な宝石を選びます。シュランバージェはジュエリーの制作過程において、素材となる宝石の候補を選定し、決定するまでの道のりを大きな喜びとしていました。その精神を大切に、ぴったりの色の宝石を見つけるまで探し続けます」。これはストーンハンターでもある、カートリー氏ならではの含蓄あるひとこと。シュランバージェ没後に発表されたシュランバージェ コレクションは、すでに制作された作品の再現や素材違いが主流だった。しかしカートリー氏という優れたトランスレーターを得て、これまで眠っていた数多くのデッサンから、新たな美が誕生することになったのだ。
それでは制作に際して、固有の伝統技法と最新技術のどちらが優先されるのだろうか。「制作現場においては、クラフツマンシップを最優先します。デザインに応じて最適と判断した場合に現代のテクノロジーを用いる部分もありますが、基本的には伝統的な手作業を大切にしています。ティファニー社では、その技術が途絶えないように専任の職人を養成しているのです。作業の99%を社内のチームで行います」とカートリー氏。さらに「ジャン・シュランバージェ コレクションには、ハイテクがとって代われない部分があります。そこを大切にしていかなくては」と熱く語る。このハイテクに置き換えられない部分に込められているのが、匠の技だ。熟練職人の手が、作品の価値を高めている。
シュランバージェのジュエリーの大きな特徴は、アシンメトリーなデザインと、印象的なカラーストーンの使い方にある。「それらはすべて、着けた時にニュアンスを引き出すためなのです」とカートリー氏。「彼は、そのジュエリーが身につけられた時にどのように見えるかを計算し尽くして、最も美しく輝くようにデザインしました。宝石を生かしたブローチが多いのは、そのためです」。さらに続けて、「シュランバージェは自然モチーフのジュエリーを多くデザインしていますが、それらは自然界そのままの再現ではありません。世界各地への旅や、自宅のあったカリブ海の島の自然に題材を得て、そこに自身の幻想的な解釈を加えた結果誕生した、独創的なクリエイションなのです。そのジュエリーを着けることで、どのようなインパクトを与えられるかを、彼は考え抜きました。その結果到達したのが、独特のボリュームとバランスだと思います」。これこそ、シュランバージェ自身にしかできない匠の技だったのではないだろうか。その唯一無二のクリエイションの真髄は、時代を超えて、現代のティファニーの匠たちに確実に継承されている。
最後に、カートリー氏からのメッセージをご紹介しよう。「シュランバージェは、ジュエリーを着けること自体が自己表現だと考えていました。身に着ける女性の個性を高め、創造性を刺激してくれるのが、彼のジュエリーです。どうぞ楽しんで着けてください」
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ティファ二ー・アンド・カンパ二ー・ジャパン・インク
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