ファッションからコスメまで、確固たる世界観を貫いてきたデザイナー、アナ・スイ。彼女のキャリアを包括する回顧展の会場で、アナが語ったこととは

BY MASANOBU MATSUMOTO, PHOTOGRAPHS BY MITSUE YAMAMOTO

画像: ロンドンでの回顧展と同様に、赤い台座にマネキンが並ぶ。赤はアナ・スイのアイコニックカラー。初めて住んだ時のアパートのリビングの壁をアンリ・マティスの赤い部屋をまねして塗った時以来、愛用している色だ

ロンドンでの回顧展と同様に、赤い台座にマネキンが並ぶ。赤はアナ・スイのアイコニックカラー。初めて住んだ時のアパートのリビングの壁をアンリ・マティスの赤い部屋をまねして塗った時以来、愛用している色だ

 2017年5月から10月まで、ロンドンのファッション&テキスタイル博物館で開催されていたファッションデザイナー、アナ・スイ初の回顧展『THE WORLD OF ANNA SUI』。その巡回展がいよいよ東京・六本木で始まった。

 会場には、これまで彼女がランウェイで発表してきた100以上のルックが、年代順ではなく、彼女独自の世界観を構成するテーマに沿って並ぶ。モッズやパンク、ノマド、ヒッピー、グランジ、ビクトリアン……いかにも“アナ・スイらしい”キーワードだ。アナはこう語る。

「この構成は、ファッション&テキスタイル博物館のキュレーター、デニス・ノースドラフトのアイデア。展覧会が決まったとき、彼は私にこう言 ったの。『1991年にランウェイを始めた頃から、いま現在も、アナのコレクションにはあなたの好きなモノやムーブメントが何回もリピートされていますね』って。それは私にとって新しい発見だった。この30年間、本当に忙しくて、コレクションを発表して、作って、発表して……の繰り返し。自分の仕事を振り返る初めてのタイミングだったから」

画像: デザイナーのアナ・スイ。本展の構想から実現までに、2年半もの時間をかけたという

デザイナーのアナ・スイ。本展の構想から実現までに、2年半もの時間をかけたという

 アナ・スイは、アメリカ・デトロイト生まれ。パーソンズ美術大学在学中に、ファッションブランド「チャーリーズ ガールズ」のデザイナーに抜擢されキャリアをスタート。同級生だった写真家スティーブン・マイゼルと組んでスタイリストとしても活動した。1981年から自身のブランドを展開し、スーパーモデルのリンダ・エヴァンジェリスタやナオミ・キャンベルがアナのドレスをプライベートで着用。アナの名前がじわじわと業界に広まっていく。そして満を持して1991年秋、ニューヨークで、ランウェイ形式での初めてのコレクションを発表した。

「スティーブンが背中を押してしてくれたの。『ランウェイショーをやったら? 次はアナの番だよ』って。毎シーズン、スティーブンが私のオフィスにやって来て、『次は何をする? アイデアを見せて!』ってコレクションを作っていったの。いまでもブランドの重要なビジュアルは彼が撮影しているし、キャスティングに関してはずっと彼がサポートしてくれているわ」

画像: 「モッズ」のカテゴリーで展示されている、最初のランウェイに登場したルック。「手前の2ルックは、リンダが着たもの。その奥のワンピースは、スティーブンが撮ったナオミの写真をスクリーンプリントにしたものね」

「モッズ」のカテゴリーで展示されている、最初のランウェイに登場したルック。「手前の2ルックは、リンダが着たもの。その奥のワンピースは、スティーブンが撮ったナオミの写真をスクリーンプリントにしたものね」

ロンドンの回顧展に合わせ、彼女のキャリアをたどる同名の書籍も出版された。そこには、スティーブンやリンダ、ナオミのほか、多くのクリエイターと彼女の関係についても記されている。「ページをめくりながら改めて気が付いたのは、これは私についての本ではなく、私のコラボレーションに関する本だということ。つまり、いつもたくさんの人のサポートによってアナ スイは成り立たっているのよ」 なぜ、アナのもとには、こんなにも多くの才能ある人々が集まるのかーー? そう聞くと、彼女は「わからないわ」と笑い、こう続けた。「私はとにかくファッションが大好き。そしてファッションの歴史、プロダクトの背後にある物語をリサーチするのも好きなの。5分時間があれば、ウェブで検索したり、雑誌をみてる。そうして発見した素敵な写真を誰かに見せて、『これはあの雑誌のあのページ! まさにバイブルね!』なんて語り合っているうちに、特別なリレーションシップが生まれるの。彼らとはファッションに対するパッションを共有しているのね」

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