次々と新しい物が大量に送り出されては更新されていく。そんな目まぐるしいファッション界にあって、パートナーとともに力を合わせ、納得のいくものを納得のいく形でコツコツと作る人たちがいる。連載第1回は、詩的でありながら地に足のついた「SOWA」の服

BY OGOTO WATANABE, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO

 ずいぶん長いこと着ているのに、あるときふと、あ、こんなところにこんなステッチが施されていたのか、と気づく。なにかの拍子に裾がめくれて、表とは違う世界が内側に張り巡らされていることに気づく。気づけばもう何年も着ていて、ワードローブのなかですっかり定番化している。

「SOWA(ソーワ)」の服には、そんな“発見”がある。予想がつかない展開があり、読み返すたびに解釈が少し変わる。まるで物語のようだ。こんな面白い服、どうやって生まれてくるのだろう。ファッションは、世の中の動きと人々の思いをいち早く映し出すものだ。これまでファッションに関わる中で多くの服を見る機会に恵まれてきたが、近頃いいなあと思うのは、作り手の生き方そのものが色濃く映し出された服だ。

画像: SOWAを手がける、yugoさん(左)とaicaさん。 波長ぴったりのふたりだが、aicaさんはストリートも好むし、デビッド・ボウイやマイケル・ジャクソンなどのポップスターも大好き。yugoさんはロマンティックなものを愛し、音楽はクラシックやオペラ派。キッチンではaicaさんは料理、yugoさんはお菓子担当だとか COURTESY OF SOWA

SOWAを手がける、yugoさん(左)とaicaさん。
波長ぴったりのふたりだが、aicaさんはストリートも好むし、デビッド・ボウイやマイケル・ジャクソンなどのポップスターも大好き。yugoさんはロマンティックなものを愛し、音楽はクラシックやオペラ派。キッチンではaicaさんは料理、yugoさんはお菓子担当だとか
COURTESY OF SOWA

「SOWA」はaicaさんとyugoさんが作るブランドだ。今季のテーマは『Floating Cherry』。さくらんぼの刺繍、泡のように繊細なコットンレース、小花柄やチェックのサマードレスなど、どこかノスタルジックでキュンと甘酸っぱい気持ちを呼び起こす服が並ぶ。「たとえばこのコットンリネンのカーディガン、僕らはこれを“お風呂”って愛称で呼んでいます。透かし編みの柄はお風呂場の壁や床のタイル、飾りボタンはひんやりした飾り蛇口の取っ手、そしてリボンはふんわりたちこめ、漂う湯気。日常や記憶のなかの光景から、さまざまなアイデアが生まれて服になっていくんです」

画像: ニットガウン¥40,000 “お風呂場”がインスピレーションソースというニットガウン。さらりと涼しげなリネン混はタイル模様の透かし編み。たゆたう湯気のようなチュールのリボンはブローチで取り外し可

ニットガウン¥40,000
“お風呂場”がインスピレーションソースというニットガウン。さらりと涼しげなリネン混はタイル模様の透かし編み。たゆたう湯気のようなチュールのリボンはブローチで取り外し可

 次のコレクションのテーマはどうする? どんなシーン? どんな気持ち? 音楽は? その情景にふさわしい服はどんな服なんだろう? いつもふたりで徹底的に話し合う。「“会議”と決めた時間以外でも、お茶の時間やスーパーからの帰り道、日常のふとした会話からアイデアが生まれることも多い。思いついたらもうって感じで、突発的に始まって何時間も話が続くこともあります」

 同じ展覧会を違う機会に見ても同じ作品を好きだと感じたりと、感性の波長が一致することも多いという。とはいえ、ものをつくる際には方向性や意見に違いがあるときもあるだろう。そんなときはどうするのかと尋ねると、口をそろえて「お互い納得するまで話をします」という。「そのままそれはナシってことにしてもいいのですが、納得するまで考えてみると、新しいもの、自分の中に最初はなかったものが発見できるんです」とaicaさん。yugoさんは「デジャブと思えるもの、お客さまの視線で見て違和感があると感じたら、僕はそう伝えます。妥協はしたくないから。でも、彼女は必ず疑問に応えて、最終的に思った以上にいいものを作って見せてくれる」

画像: 2019年春夏コレクションより ワンピース¥50,000

2019年春夏コレクションより
ワンピース¥50,000

「僕自身が彼女の大ファン」とyugoさんは公言してはばからない。ふたりの出会いは19歳の頃。文化服装学院の学生だったaicaさんの卒業制作のショーに、ヘアメイクを勉強していたyugoさんが参加したのだが、彼女の作品を見て衝撃を受けたという。「天才だ! と思いました。以来、僕はずっと彼女の才能と彼女自身を尊敬しています」とキッパリ。

 一方、aicaさんは「私はデザイナーになる」と、小学校を卒業時には心の中で決めていたという。最初に作った服は、祖母に買ってもらったリカちゃん人形のためのもの。夏休みの自由研究では、母に教わりながら自分が着る服も作った。「小さい頃、母はよくワンピースを縫ってくれたり、セーターを編んでくれたりしました。子ども心にも、なんだか特別な気持ちになる。今でもそれらの服のことを覚えています」

 

This article is a sponsored article by
''.