「すべてのブランドは、もはや中立ではいられない」と語るビッザーリは、いかにしてグッチの‟カルチャー”を構築し、ブランドを再生し得たのか

BY KEI WAKABAYASHI, PHOTOGRAPHS BY YASUHIDE KUGE

 アレッサンドロ・ミケーレは最初のショーからジェンダーの流動性をテーマにし、大胆な引用を多用しながら絶妙なバランスで文化の多様性・多元性を表現してきた。そうしたなかで、幾度か文化盗用との指摘を受けたりもしてきたが、ビッザーリの以下の説明は、そうした状況を企業としてどう考え、向き合うのかを端的に表している。

「企業の根幹にあるのはカルチャーです。それが何よりも大事な柱です。それは決して動きません。エステティック、つまり審美的な価値は、むしろ枝葉だと思っています。枝葉の部分は時代とともに変化します。けれども、カルチャーは残ります。そのカルチャーこそが企業を持続させるのです。クリエイティブな思考をリスペクトすることが私たちのカルチャーです。それは勇敢であることをみなに求めるものです。新しいことに挑戦し、実験していく、そのカルチャーがグッチというブランドを永続させるのです」

画像: グッチ2020年クルーズコレクションより。ファッションの潮流を完全に変えたアレッサンドロ・ミケーレのスタイルは、インクルーシブでありながら圧倒的な個を感じさせる COURTESY OF GUCCI SHOT BY DAN LECCA

グッチ2020年クルーズコレクションより。ファッションの潮流を完全に変えたアレッサンドロ・ミケーレのスタイルは、インクルーシブでありながら圧倒的な個を感じさせる
COURTESY OF GUCCI SHOT BY DAN LECCA

 80年代カルチャーで育った筆者にとってビリー・アイドルというミュージシャンはとても重要な存在だ。今でも折に触れて聴く。グッチは、2019年の春夏シーズンにおいて、そのビリー・アイドルにオマージュを捧げるラインナップを発表した。Tシャツで5万円台。買おうか買うまいか悩んで結局諦めた。グッチがビリー・アイドルを取り上げる。ファン心理からするとなかなか微妙なところだ。「おお、よくぞ!」と思う半面「ダシにされた」と感じなくもない。

いずれにせよ、そこをどう判断するかにおいて重要なのは、「それを、どういう人たちがやっているのか」ということだ。ビリー・アイドルにおよそ興味のなさそうな人たちが、それをやればそれは「文化盗用」と見なされる。逆に「ほんとに好きなんだな」と思わせられるのであれば「よくやった」となる。人は、そのプロダクトの背後にある人を見ている。そしてこのSNSの時代、いくら取り繕ったところで、人は出てしまう。

 ビッザーリの語る「カルチャー」とは、そういうことを指し示している。それは、その企業が文化として体現する、あるいは後押しする、あるいは共感するものが合わさった「価値体系」だと言ってもいい。プロダクトは、そうした価値体系の中に置かれるひとつの(にして最も重要な)ピースにすぎない。ビッザーリは、そうした「価値体系」を整合的にまとめあげていくことの重要性をことさら語る。

「これからの時代、お客さまをコントロールすることはますますできなくなっていきます。そして若い世代は、あらゆることに『意味』を求めていくようになっています。ファッションの世界はニーズによってドライブされるものではありません。ひとつジャケットを持っていたら、新しいジャケットは必ずしも必要ないわけです。であればこそ、なおさら、その『意味』が問われることになります。ですから、私たちのブランドの意味・意義を伝え、それがメイクセンスする(意味を成す)ものであることを証明しなくてはならないのです。今後の企業にとって『ナラティブ』はますます大事なものとなっていきますが、それが大事なのは、それを通して『意味』を伝えるものだからです」

 

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