「すべてのブランドは、もはや中立ではいられない」と語るビッザーリは、いかにしてグッチの‟カルチャー”を構築し、ブランドを再生し得たのか

BY KEI WAKABAYASHI, PHOTOGRAPHS BY YASUHIDE KUGE

 アレッサンドロ・ミケーレがクリエイティブ・ディレクターに就任してからこの間、実に150名にも上るコラボレーターとコラボレーションを行ってきたことも、こうした「意味=価値体系」を表現していくうえで有効な戦略だったといえる。インスタグラムなどで見つけた無名の才能を、グッチというプラットフォームに迎え入れ、個々のクリエイターにブランドと自由に遊ぶことを許容することは、世間でオープン・イノベーションと呼ばれる開発手法とシンクロしている。自社のクリエイティビティを、外部のクリエイターと交わらせることで、社内の創造性も、無名の才能も、同時に向上させることができる。ビッザーリは、ミケーレのこうしたやり口を「スーパー・クレバーだ」と称賛する。

画像1: グッチ躍進の立役者
CEOマルコ・ビッザーリが
ビジネスロジックを語る

「ただし、これをやるためには大きな勇気を必要とします。アレッサンドロのクリエイターとしての稀な資質は、人に聞くことを決して恐れないということです。オープンなのです。クリエイターにありがちなのは、人に聞いたりもしないし、聞かれても教えないというタイプですが、彼はまったく逆。どこにでも出向いて、一緒に仕事をする相手を探してこられるというのは、誰にでもできることではありません。また、ブランドのカルチャーとして『自分が自分であること』を重視してきたからこそ、こうした戦略も意味をもつのです」

「とはいえ、オープンさやインクルージョンが大事っていうのは、そもそものファッションの本義と矛盾しませんか? ファッションって『あなたは特別』と思わせること、つまりはエクスクルージョンが生命線じゃないですか」と筆者が問うと。「おっしゃるとおり、それがまさにファッションの本質です。私たちが『個人』というものを大事にしているのは、だからなのです。『エクスクルーシブ』であるということは『あなたは特別だ』とみなすことです。一方『インクルーシブ』であるということは『あなたは他と違わない』とみなすことです。一見相反する考えですが、『すべての人はそれぞれにおいてユニークである』という立場に立つと両方が矛盾することなく共存することができるのです。それこそがまさに、グッチが謳ってきたことなのです」

 驚くのは、何を聞いてもビッザーリの口から出てくる答えがすべて明晰にロジカルだということだ。しかもそれらのすべてが「ビジネスのロジック」として語られていることだ。ビッザーリが「カルチャーが大事」と語るとき、それが意味しているのは、「カルチャーこそが経営戦略の根幹である」ということを意味している。あてずっぽうにそれらしい言葉を並べて「ビジョン」と称してみたところでもはや誰もそこに「意味」や「価値体系」を見いだすことはない。企業というものが、大きな転換を迫られ、その思考回路のドラスティックなアップデートが迫られているなか、企業経営者がただ数字を見るだけの番頭に成り下がってしまっている状況はいかにも貧しい。「日本にはたくさんの優秀なクリエイターがいるのに比べて、ビジネスサイドが貧相のように思えるのですが」と最後に質問してみたところ、こんな答えが返ってきた。

「そのとおりだと思いますよ。日本には世界に名だたる優秀なクリエイターがいますが、彼らが、その才能に見合ったビジネスになっているかと言えば、おっしゃるとおりかもしれませんね」

 

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