BY TOMOKO KAWAKAMI for TEA ROOM, PHOTOGRAPHS BY MASANORI AKAO, STYLED BY YUKARI KOMAKI, HAIR BY TAKAYUKI SHIBATA(Signo), MAKEUP BY Fusako(Ota Office), MODEL BY HANAKA
学生街の喫茶店
シャツとスカートとカーディガン。大人になった今、永遠のノスタルジーを着るなら最上級の最新形で。
喫茶ルオー/本郷
画家の森田賢氏が1952年、東大赤門にほど近い場所に開いたのが画廊喫茶ルオー。森田氏は自分がコレクションしていた絵画を鑑賞しながら、コーヒーが楽しめる画廊喫茶を開店させたのだ。120席あった広い店内には、店の名前にもなっているフランスが生んだ孤高の画家、ジョルジュ・ルオーの作品を筆頭に多くの芸術品を鑑賞することができた、と現在のオーナー、山下淳一さんは振り返る。「赤門の前の店は一度閉店になりましたが、常連さんたちなどのご尽力があり、半年後に現在の場所に移転して営業を再開できることに。1979年に店名を喫茶ルオーに改め、私がオーナーとなって再出発しました」
現在の店のエントランスにある格子が付いた窓も、前の店舗から引き継いだものだそう。使い込まれた木製の家具を基調にした落ち着いた店内は、居心地の良い空間。椅子がどれも小ぶりなサイズなのは、昔の日本人は小柄な人が多く、このくらいのサイズでちょうど良かったから、と山下さん。
二階の窓側は、作家、司馬遼太郎の指定席。そしてシンガーソングライターの小椋佳もこの店の2階席で多くの作品を生み出した。「小椋佳さんが、さだまさしさんのために書いた歌もうちの2階の席で生まれたものだそうです」。東大の敷地内にカフェがなかった時代から、多くの飲食店が学内にできた今もなお、たくさんの学生や近隣の人々が集まり、思い思いの時間を過ごす「喫茶ルオー」。「昔は、大学に行かないでずっとうちの店で論議をしている学生さんたちもいましたね(笑)」。東大紛争のときは怪我した学生が店に逃げ込んできたこともあったそう。本郷通り沿いにあった本屋、麻雀店など学生たちが集う店の大半は姿を消してしまったが、「喫茶ルオー」はオーナーの山下さんと息子さんの二人三脚で、昔ながらの味を継承している。
ここで多くの客が名物の「セイロン風カレー」に舌鼓を打つ。ごろっとした肉とジャガイモが入ったシンプルなカレーは飽きのこない味で長く店の看板料理として愛されている。「場所柄、東大の関係者や学生さんが多く通ってくれています。卒業して、一度、本郷から離れた方もお子さんやお孫さんを連れて訪れてくれることも。この場所で長く商売を続けているからこそ、感じられる幸せですね」
「喫茶ルオー」
住所:東京都文京区本郷6-1-14
営業時間:月〜金曜/9:30〜20:00、土曜/9:30〜17:00
定休日:日曜・祝日
電話:03(3811)1808