名品の“最初と最新”ーー
サルヴァトーレ フェラガモの
「Fヒール」

First of Its Kind, Last of Its Kind(For Now) Vol.4ーSalvatore Ferragamo’s F Heel
時代を超えて人々を魅了する名品たち。第4回は、サルヴァトーレ フェラガモの美しい曲線を描いたウェッジヒール「Fヒール」。1947年に発表された「見えないサンダル」から最新作まで、そのデザインに秘められた物語を読む

BY LINDSAY TALBOT, STILL LIFE BY ANTHONY COTSIFAS, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI

  サルヴァトーレ・フェラガモが初めて靴を作ったのは9歳のときだ。家は貧しく、初聖体を迎える妹が教会で履く白いメリージェーンを買えなかった。彼は地元の靴職人から釘と糸とキャンバス地を借り、夜を徹して妹のために靴を作った。12歳になる頃にはナポリ東部の小村ボニートで自ら靴店を経営するように。5年後の1915年、彼は米国に移り、ほどなくハリウッドの映画スタジオやセシル・B・デミル監督のために靴のデザインを手がける。やがて、メアリー・ピックフォード、グレタ・ガルボ、ダグラス・フェアバンクス、ルドルフ・ヴァレンティノらが顧客として名を連ねた。

 その後イタリアへ戻ったフェラガモは、1930年代にはもはやスター御用達デザイナーではなく、“発明家”となった。スチール製のシャンク(土踏まずのアーチをサポートする、中底の芯)を発明したり、サルディーニャ産のコルクを削ってウェッジヒールを生み出し、特許を取得。戦時中の物資不足でレザーが入手しづらくなると、セロハンやフェルト、麻や魚の皮まで、あらゆるものをアッパーに用いた靴を考案した。もっとも有名なのは、1947年に発表された「見えないサンダル」だ。大洋を渡る大型船の船尾をイメージした曲線を描く、高さ約7.6cmの木製ウェッジヒールは「Fヒール」と呼ばれ、そこに取り付けられたアッパーは透明なナイロンの釣り糸でできていた。

画像: 1947年に特許を取得した、サルヴァトーレ・フェラガモの「見えないサンダル」。当時、靴の素材としては画期的だったナイロンを使用。Fシェイプのウェッジヒールは、履いた女性がまるで空中を歩いているかのように見せる効果がある ARCHIVAL IMAGE: CENTRAL STATE ARCHIVES, MICA, ITALIAN PATENT AND TRADEMARK OFFICE, INVENTIONS, N. 426001

1947年に特許を取得した、サルヴァトーレ・フェラガモの「見えないサンダル」。当時、靴の素材としては画期的だったナイロンを使用。Fシェイプのウェッジヒールは、履いた女性がまるで空中を歩いているかのように見せる効果がある
ARCHIVAL IMAGE: CENTRAL STATE ARCHIVES, MICA, ITALIAN PATENT AND TRADEMARK OFFICE, INVENTIONS, N. 426001

画像: テクニカラー・イエローの最新バージョンの「Fヒール」¥108,900 STYLIST: MARCI LEISETH. RETOUCHING: ANONYMOUS RETOUCH. PHOTO ASSISTANTS: KARL LEITZ, RUSSELL UNDERWOOD

テクニカラー・イエローの最新バージョンの「Fヒール」¥108,900
STYLIST: MARCI LEISETH. RETOUCHING: ANONYMOUS RETOUCH. PHOTO ASSISTANTS: KARL LEITZ, RUSSELL UNDERWOOD

 同ブランドのクリエイティブ・ディレクターを務めたポール・アンドリュー(註:今年5月で退任)は2021年春夏コレクションで、このアイコニックなデザインを、ヒッチコック映画のテクニカラーを着想源に復活させた(アンドリューは昨春のロックダウン中、ヒッチコック作品を一気見したそうだ)。バックストラップをなくし、ナッパレザーでFヒール全体を包み、ぐっとソフトでフェミニンなミュールが誕生した。「Fヒールはフェラガモにとって重要なもの。サルヴァトーレが発表した40年代には、非常に奇抜なデザインでした」とアンドリュー。「今も、この靴を履く女性はまるで空中を歩いているように見えるのです」

問い合わせ先
フェラガモ・ジャパン
フリーダイヤル:0120-202-170

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