身にまとうものには、その人の思いや考え、ときに主義や信条や、生きる時代の空気までも映し出されるもの。自他ともに認める稀代のモード愛好者、ファッションライター・栗山愛以が、自らの装いや物欲の奥にあるものを、ゆるゆると紐解き覗き込む

TEXT AND ILLUSTRATION BY ITOI KURIYAMA

 はじめまして。
 ファッションライターの栗山愛以と申します。

 私は1976年生まれの46歳なのですが、同年代が落ち着いた装いへと向かっていく中、四六時中ファッションの情報収集をし、物欲はちっとも衰えることがなく稼いだお金の大半を衣装代につぎ込み、デザインに魅了されて着心地や機能性度外視で服を選んだりすることもしばしばの日々を送っています。

 けっこうな大人なのに衣食住の「衣」にかなりの重点を置く私の姿勢はどうやら特異な方のよう。このたびはそんな私のワードローブをご紹介する連載を始めさせていただくことになりました。どうぞよろしくお願い致します。

 さて、記念すべき初回に取り上げたいのは、まだまだ寒かった2月末〜3月頭のパリコレクション取材でも活躍したプラダのフェイクファーのベストです。

画像1: 我、装う。ゆえに我あり。
栗山愛以、モードの告白
Vol.1 プラダのもふもふベスト

 2年前に手に入れたこちらは、ある日毛むくじゃらの大型犬と出くわした時に同類と見なされたのか執拗に寄ってこられて動揺したこともあるほど(私は動物全般が苦手です)のボリューム感。

画像2: 我、装う。ゆえに我あり。
栗山愛以、モードの告白
Vol.1 プラダのもふもふベスト

 私は社交的な方ではないので、スタイリングにこうした思わず話題にしたくなるようなインパクトのあるアイテムを入れて会話の糸口にしたい、とつねに考えている節があります。望むと望まざるに関わらず、服装は必ず目に入る。私はそれを苦手なコミュニケーションの助けにしたいのです。

 また、「2年前に手に入れた」と書きましたが、今の空気に合っていると思えたら、10年、20年前のアーカイブでも手に取るので私は劣化した場合を除いてほとんどワードローブを処分しません。ですから、購入する時は時代を経てもずっと付き合っていける「強さ」があるかどうかを必ず考えます。「強さ」には、質の良さや流行りすたりを超越するデザイン性などを含みます。

 ちなみに、たとえばプライベートで買い物に行くとしたらこんな感じで身につけます。

画像3: 我、装う。ゆえに我あり。
栗山愛以、モードの告白
Vol.1 プラダのもふもふベスト

 スタッズといった武器にもなりかねない突起物があしらわれた攻撃的なアイテムを意気揚々と身につけるためあまり周囲に伝わっていないようではあるものの、1%でもフェミニンさを感じさせる、というのが信条です。「モテ」かどうかを念頭に置いているわけではなく、何らかの性に寄せすぎない方が魅力的な装いになると考えているからです。今回はファーにその役を担わせています。

 Tシャツ生地のゆったりパンツと超厚底靴の組み合わせはカジュアルですが、ファーのエレガンスでバランスは取れているはず。カジュアルなアイテムは昔から好きなのですが、全身それでまとめるのは年相応ではない気がして極力避けています。

 というわけで、私の趣味嗜好、ファッションへの思いが何となくわかっていただけたでしょうか。 
 これから、そんな私がどんなアイテムをどうやって身につけているのかお話ししていければと思います!乞うご期待?!

栗山愛以(くりやまいとい)
1976年生まれ。大阪大大学院で哲学、首都大学東京大学院で社会学を通してファッションについて考察。コム デ ギャルソンのPRを経て2013年よりファションライターに。モード誌を中心に活動中。Instagram @itoikuriyama

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