三宅一生が創業し率いたイッセイ ミヤケ関連の会社は、独創的で創造性豊かなデザイナーを多く輩出していることでも知られる。なかでも三宅から薫陶を受け、その後、世界的に活躍するデザイナーに思い出や学んだことを聞いた。二人目は「Mame Kurogouchi」デザイナー、黒河内真衣子

BY MAKIKO TAKAHASHI, PHOTOGRAPHS BY YUKI KUMAGAI, STYLED BY NAOMI SHIMIZU, HAIR & MAKEUP BY HIROKO ISHIKAWA, MODEL BY YUMEMI ISHIDA, EDITED BY JUN ISHIDA

「 存在自体が憧れ。姿が発光しているように見えたほど」──黒河内真衣子

画像: 竹籠のディテールを取り入れたドレス。ループからスカートに至るまで、すべてがひと続きのパターンで作られている。 ドレス¥180,400/マメ クロゴウチオンラインストア(マメ クロゴウチ)TEL:0120-927-320 靴¥44,000/ルック ブティック事業部(レペット)

竹籠のディテールを取り入れたドレス。ループからスカートに至るまで、すべてがひと続きのパターンで作られている。

ドレス¥180,400/マメ クロゴウチオンラインストア(マメ クロゴウチ)TEL:0120-927-320 靴¥44,000/ルック ブティック事業部(レペット)

 黒河内真衣子が手がける「Mame Kurogouchi」は、日常の中の情景や自身の感覚をテーマに深く掘り下げ、繊細かつ時に大胆なデザインに落とし込む。また、国内の産地と共同できわめて凝った素材を開発。パリ・コレでも新進の注目株が目指すのは「クローゼットに残る服。誰かの記憶に残る服」だ。そんな自身の作風や仕事の仕方について「知らないうちにずっと一生さんの後を追っていたのだと思う」と話す。

 自然にあふれた長野県に育つ。中学生だった1998年、地元紙でイッセイ ミヤケがパリ・コレでAPOCを発表したときの写真を見て衝撃を受けた。大勢のモデルが真っ赤なニットでつながって歩く写真。「なんと美しい。洋服の概念を超えて、人間の身体が布に入ったときにその人を輝かせる服」と感じた。

 入社してみると、三宅の所作や紳士的な態度、美的感覚などから「存在自体が憧れ。姿が発光しているように見えたほど」と振り返る。A-POCやイッセイ ミヤケ、「21_21DESIGN SIGHT」などに携わり、年齢が離れているせいか、三宅は孫のように接してくれたという。三宅の「君は宝物みたいな服を作るね」との言葉が逆に黒河内の大事な宝物だ。

 最も影響を受けたのは、ものづくりのやり方。デザイナーがデザイン画だけでなく、生地を作る機械のプログラミングから完成まですべてに関わる。工場の現場の職人に敬意を払い、みなを巻き込んで、時間をかけながらぎりぎりまで妥協しないで作る。その過程における「整ったバランス感覚」は今も黒河内の仕事の根っこになっている。「一生さんのひとつひとつの言葉が常に自分に戻ってくる。美の追求を諦めない人。その姿勢を自分も継承して、次の世にパスしていくことが私の使命だと思う」

黒河内真衣子
1985年長野県生まれ。文化服装学院卒業後、三宅デザイン事務所入社。A-POCやISSEY MIYAKEに携わる。2010年黒河内デザイン事務所を設立。ブランド「mame」(’ 18年「Mame Kurogouchi」に変更)を立ち上げる。’23年1 月、青山に初の旗艦店をオープンした

三宅一生(みやけ いっせい)
1938年広島県生まれ。多摩美術大学を卒業後、’65年に渡仏し、パリの洋裁組合の学校を経てジバンシィなどで働く。’70年に帰国。’73年からパリ・コレに参加。「一枚の布」という考え方をもとに、日本のハイテク技術とデザインを融合した服づくりを貫く。代表作は「PLEATSPLEASE ISSEY MIYAKE」や「A-POC」など。2022年8月に肝細胞がんのため逝去。

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