「ひらまつ」の合宿

Retreat To Move Forward
8月、東京・広尾のフランス料理店「レストランひらまつ 広尾」は1カ月間休業する。スタッフが料理だけに向き合う夏の“合宿"に密着。ボーダーレス化する日本のフランス料理はどこへ向かうのか――?

BY MIKA KITAMURA, PHOTOGRAPHS BY MASAHIRO GODA

 大勢の人で混み合う夏の軽井沢。フランス料理店「レストランひらまつ 広尾」の料理長・平松大樹は(ひろき)は、研修所のある別荘地へ車を走らせていた。東証一部上場の高級レストラン企業「株式会社ひらまつ」の創業者である平松宏之の名前は、ご存じの方も多いだろう。現在、ひらまつは約660人の社員を抱え、35のレストランと4つのホテルを経営する。

その中核である「レストランひらまつ 広尾」を、2017年、大樹は平松宏之より二代目として引き継いだ。そして同年、人材育成のため、軽井沢に「ひらまつ総合研究所 セミナー ハウス」が創設された。その研修所で、初めての“合宿”が行われたのは昨年8月。この夏が2回目となる。大樹が率いる広尾本店が8月の1カ月間をまるまる休み、厨房スタッフがここで2週間の合宿を行うのだ。そこには、ひらまつの各レストランの料理長たちも国内外から、それぞれ可能な日程で集まってくる。

画像: 広い厨房で各自が料理に没頭する。緑のエプロンは広尾本店のスタッフ。茶色、白のエプロンは全国から集まった料理長たち

広い厨房で各自が料理に没頭する。緑のエプロンは広尾本店のスタッフ。茶色、白のエプロンは全国から集まった料理長たち

 風そよぐ森の中に、スタイリッシュな建物が佇んでいる。研修所の吹き抜けのエントランスには、大きなソファと本棚がある。大ぶりで高価な料理本、フランス料理の大家・エスコフィエの料理書などが並ぶ。建物の中心となるホールには、広尾本店と同仕様だという最新型の厨房がしつらえられていた。十数人の料理人がそれぞれ、ソースを作ったり肉を焼いたり。長いカウンターの一方では、数人が額を寄せ合って話し込んでいる。店の厨房のように殺気立った雰囲気はなく、真剣だが穏やかな空気が漂う。

画像: 今年37歳になった平松大樹 料理長

今年37歳になった平松大樹 料理長

「僕らはふだん、料理以外にもたくさんの用事を抱え、自分の料理について深く考える時間をとるのが難しい。だから、ここでは特にテーマを設けず、おのおのが自分のやりたいことをやっています。新作メニューの試作をしてもいいし、日本料理の料理長から、だしのとり方や魚の下処理を習うこともあります。フランス料理の基本調理法を復習し、共有するのも合宿の大きな目的です。また、料理長は店に相談相手がいない孤独な存在ですが、料理長同士、悩みごとの相談や情報の共有もできます。ここでは日常の雑務に追われず料理に没頭できる。料理に向き合い、自分自身と向き合うための合宿なんです」と大樹は言う。

 

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