料理研究家の平野由希子さんが、厳選した日本ワインと季節の料理のペアリングを紹介する好評連載。今月は「齊藤ぶどう園 赤 2018」と「ステーキサンドイッチ」

BY JUNKO ASAKA, PHOTOGRAPHS BY MANA MIKI

 ちょっとエキゾチックな趣をたたえた、ユニークなエチケットが目を引く。今月平野さんが選んだワインは、千葉県にある「齊藤ぶどう園」の「赤 2018」だ。「以前お訪ねしたことがあるんですが、ブドウ畑でカモを放し飼いにしているような、とてものどかで素敵なところ。酸化防止剤を使わず、無濾過でナチュラルなワインをつくっているワイナリーです」と平野さん。

 齊藤ぶどう園の歴史は古く、1930年(昭和5年)に初代園主が最初のぶどうを定植。1938年から「ぶどう酒」づくりを始めた。第二次世界大戦中、ワイン作りの過程で生産される酒石酸(しゅせきさん)が海軍の音波防御レーダーやモールス信号などに必要とされてワインづくりが奨励されていたため、戦時下でも近隣のブドウ農家が齊藤ぶどう園にブドウを持ち寄り、ワインづくりを続けていたという。

<今月のワイン|齊藤ぶどう園「赤 2018」 >

画像: 千葉県山武郡の横芝光町にある「齊藤ぶどう園」。化学肥料を使わず減農薬でブドウを栽培、酸化防止剤無添加、無濾過でつくられたナチュラルなワインは多くのファンをもつ。スチューベンとヤマ・ソーヴィニヨンでつくられた2018年の赤ワインは爽やかな酸味と豊かな果実味、美しい赤色が印象的 齊藤ぶどう園 赤 2018<750ml>¥1,600 www.saito-winery.com ※ 齊藤ぶどう園ではワイナリーからの直接発送やインターネット販売はしていません

千葉県山武郡の横芝光町にある「齊藤ぶどう園」。化学肥料を使わず減農薬でブドウを栽培、酸化防止剤無添加、無濾過でつくられたナチュラルなワインは多くのファンをもつ。スチューベンとヤマ・ソーヴィニヨンでつくられた2018年の赤ワインは爽やかな酸味と豊かな果実味、美しい赤色が印象的
齊藤ぶどう園 赤 2018<750ml>¥1,600
www.saito-winery.com
※ 齊藤ぶどう園ではワイナリーからの直接発送やインターネット販売はしていません

「現在ワイナリーを引き継いでいるのは、二代目にあたる齊藤貞夫さんと孫の雅子さん。千葉県では唯一のワイナリーとして、化学肥料や除草剤に頼らない土づくりからワインづくりを手がけています。『しゃれたものとか、めったに食べないんです』というおふたりが、“自分たちが晩酌するためのワイン”を素朴に、ていねいに作っていらっしゃる様子に心温まります」。生産量がそれほど多くないこともあり、ワインはすぐに予約で完売してしまう人気ぶりだ。

 今回のワインのブドウ品種は、スチューベンとヤマソー。スチューベンは日本の正食用ぶどうで、フレッシュな味わいは日本の品種ならでは。一方のヤマソーは正式名称を「ヤマ・ソーヴィ二ヨン」といい、日本の在来種の山ブドウとカベルネ・ソーヴィニヨンを交配した赤ワイン用品種だ。

画像: 「このワインはちょっと冷やし気味でもおいしい。タンニンが豊富で酸味も強いヤマソーと糖度の高いスチューベンの組み合わせなので、いろんな食事に合わせられると思います」と平野さん。厳選ワインとのペアリングを楽しめる料理教室「cuisine et vin」も大人気 cuisine et vin公式サイト

「このワインはちょっと冷やし気味でもおいしい。タンニンが豊富で酸味も強いヤマソーと糖度の高いスチューベンの組み合わせなので、いろんな食事に合わせられると思います」と平野さん。厳選ワインとのペアリングを楽しめる料理教室「cuisine et vin」も大人気
cuisine et vin公式サイト

「お料理も、同じ産地の食材で合わせるといったステレオタイプなペアリングだけだとつまらないけれど、こういった日本とヨーロッパのよさを併せ持つワインは、いつもとひと味違ったペアリングに挑戦できて楽しいですね」と語る平野さんが選んだペアリングのフードは「ステーキサンド」。「最近は、日本酒もワインもアルコール度数低めのお酒のニーズが高まってきていますが、このワインはアルコール度数が9%と軽く、“クピクピ飲めちゃう”ワインなんです(笑)。気軽にワインを楽しみたいサンドイッチには、こういう軽やかでおいしいワインがぴったりですね」

 ワインの軽やかさに合わせて、「日本の昔ながらの喫茶店で、おじいさんが作っているようなレトロな味を目指しました」というステーキサンドは、炒め玉ねぎを合わせ、最後に醤油をたらしてほんのり和風に。「ステーキサンドだけでなく、このワインは日本のお惣菜も合いそう。筑前煮とかイワシの梅煮といった、“日本のふつうのごはん”と一緒に、ゆったりと楽しんでください」

画像: しょうゆの風味が香ばしいジューシーなステーキ肉、炒め玉ねぎとトーストのゴールデンコンビに、軽やかな赤ワインがベストマッチ。春の昼下がり、オープンエアでおいしい空気を一緒に味わいたい

しょうゆの風味が香ばしいジューシーなステーキ肉、炒め玉ねぎとトーストのゴールデンコンビに、軽やかな赤ワインがベストマッチ。春の昼下がり、オープンエアでおいしい空気を一緒に味わいたい

<今月のレシピ|ステーキサンドイッチ>
材料(2人分)
サンドイッチ用食パン(8枚切り)2枚、ステーキ肉(もも、ランプなど)150g1枚、玉ねぎ1/4個、牛脂(またはサラダ油)・しょうゆ・からし・バター・塩・黒こしょう 各適宜

1. 牛肉は室温に戻し、焼く直前に塩をふる。玉ねぎは薄切りにする。
2. フライパンに牛脂を入れて中弱火で溶かす。牛肉を入れて強火にし、焼き色がついたら返し、中火にして30秒を目安に焼く。しょうゆ少々をフライパンの鍋肌に加え、肉にからめたら、バットなどに肉を取り出し、使っていたコンロの上で休ませておく。黒こしょうを挽く。
3. 肉を焼いたフライパンに玉ねぎを入れ、塩をふってしんなりするまで炒める。
4. パンはこんがりと焼き色がつくようトーストし、バター、からしを塗る。
5. パンの上に肉を乗せ、その上に玉ねぎを乗せる。もう1枚のパンを重ねて、食べやすい大きさに切る。

平野由希子
素材を生かしたシンプルでおいしい料理に定評のある料理研究家。書籍や雑誌、広告で活躍するかたわら飲食店のプロデュースや商品開発も手がける。日本ソムリエ協会認定ソムリエで、ワインバー「8huit.」のオーナーでもある。最新刊『ソムリエ料理家の ワインを飲む日のレシピ帖』(KADOKAWA)が近日発売

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