料理研究家の平野由希子さんが、厳選した日本ワインと季節の料理のペアリングを紹介する連載。今月はドメーヌ・テッタの「シャルドネ サンスフル」と「ぶどうとセロリのピクルス、シェーブルチーズを添えて」

BY JUNKO ASAKA, PHOTOGRAPHS BY MANA MIKI

 いよいよ梅雨明け、そして熱暑の夏がやってくる。この季節に平野さんが選んだのは、シャルドネの極微発泡ワイン。栓を開けると軽く気泡が立ち、飲むとほのかな泡がシュワシュワと心地いい。

「ラベルが、なんとパンダ。ルックスもとてもいいワインですよね。岡山県新見市哲多町にあるドメーヌ・テッタは2016年からワイン製造を始めた比較的新しいつくり手。もともとは、この地域に増えていた耕作放棄地をなんとかしたい、と代表の高橋竜太さんがブドウ畑を引き継いだのが始まりです。調べてみたら、石灰採掘地でもあったこのあたりは土壌が石灰質で、ワイン用ブドウの栽培にとても向いていたということもあってワイナリーを起こしたそうです」と平野さん。

<今月のワイン|ドメーヌ・テッタ 2018 シャルドネ サン スフル>

画像: ワイナリーは岡山県新見市哲多町にあり、もと石灰採掘場であった場所に広がるブドウ畑は、ワイン用のブドウ栽培に適した水はけのよい石灰岩質。「ピュアなブドウの味わいそのままを届けたい」というワイナリーの思いそのままに、亜硫酸塩などの添加物を使用せず、シャルドネ100%でつくられたワイン。軽い発泡性で、青りんごや洋ナシなどの香りがなんともフレッシュ ドメーヌ・テッタ 2018 シャルドネ サン スフル<750ml>¥3,500 tetta.jp

ワイナリーは岡山県新見市哲多町にあり、もと石灰採掘場であった場所に広がるブドウ畑は、ワイン用のブドウ栽培に適した水はけのよい石灰岩質。「ピュアなブドウの味わいそのままを届けたい」というワイナリーの思いそのままに、亜硫酸塩などの添加物を使用せず、シャルドネ100%でつくられたワイン。軽い発泡性で、青りんごや洋ナシなどの香りがなんともフレッシュ

ドメーヌ・テッタ 2018 シャルドネ サン スフル<750ml>¥3,500
tetta.jp

「当初は自社で栽培したブドウを他県のワイナリーで委託醸造されていましたが、ワイナリー設立後は醸造から熟成、瓶詰まですべて自分たちで行なうドメーヌスタイルに。今回ご紹介する『2018 シャルドネ サン スフル』のように、亜硫酸無添加(※サン スフルは亜硫酸なしを意味するフランス語)に取り組むなど、今まさに進化を続けているワイナリーですね」

 なんともチャーミングなパンダのエチケットは、著名な女性グラフィック・デザイナー平林奈緒美さんによるもの。また、2016年に完成したワイナリーは、岡山出身の世界的インテリア・デザイナー、Wonderwallの片山正通氏が手がけたという。こうしたワイナリーの“ブランディング力”にも、平野さんは注目している。

「ワイナリーにカフェを併設していたり、雑貨もつくったり、ブランディングがとても上手ですよね。それはとてもいいことだと思う。日本のものづくりって、こぢんまりと家族だけで手作りで……というのが評価される風潮がありますが、こうしてブランディングすることによって、また新しいワイナリーの未来につながるのではないかと思うんです。もちろん、それだけでなく、ミネラル感あふれる味わいのワインがドメーヌ・テッタの魅力です」

画像: 旅好きの平野さん、6月に訪れたパリでは、気になるワインバーをいくつかめぐってきたそう。「自然派のワインを扱うところを中心に何軒か。日本でもフランスでも、好きなつくり手のワインを飲むのは同じですね(笑)」。9月には、かねて訪れたかったジョージアへの旅も予定しているという

旅好きの平野さん、6月に訪れたパリでは、気になるワインバーをいくつかめぐってきたそう。「自然派のワインを扱うところを中心に何軒か。日本でもフランスでも、好きなつくり手のワインを飲むのは同じですね(笑)」。9月には、かねて訪れたかったジョージアへの旅も予定しているという

 今回、「2018 シャルドネ サン スフル」に合わせて平野さんが提案してくれたのは、ブドウとセロリのピクルス。「微発泡性のシャルドネなので、いろんなタイプの料理と軽やかに合わせやすいワイン。ステンレスタンクでつくられているので重々しくなりすぎず、フレッシュな料理と相性がいいと思います。和食はもちろん、野菜たっぷりのサラダや、ビストロでいただくようなお料理にもぴったり。今回は、岡山県産のブドウを爽やかなピクルスにして、シェーブルチーズを合わせてみました」

 ちなみに、最近の平野さんの関心事のひとつが日本のブドウ農家のこと。「今、輸入ブドウがすごく入ってきて、どれもとても安価ですよね。それに押されて、日本のフルーツ農家が今後どうなるのかとても心配しています。安く手に入る外国産のブドウも魅力ですが、手をかけた日本のフルーツはやっぱりおいしいですし、農家さんあっての食物なので、食べることが応援になるという意識をもっていたいなと思っています」

画像: ブドウとセロリのピクルスは、漬けて2~3日おくのがおすすめだが、1日目からでも食べられる

ブドウとセロリのピクルスは、漬けて2~3日おくのがおすすめだが、1日目からでも食べられる

 軽やかな泡を感じるシャルドネは、これからの季節ににうってつけ。爽やかな酸味とすっきりとしたのどごしが、ブドウのぷちっとした食感、セロリのシャリシャリした歯ごたえとベストマッチ。さらに、コクのあるシェーブルチーズがそこにエレガントなうまみを添えてくれる。「お天気のいい日の昼間に、こんなみずみずしい果物とワインを合わせるのも楽しいのではないでしょうか」

<今月のレシピ|ブドウとセロリのピクルス シェーブルチーズを添えて>

材料(作りやすい分量)
ピクルス液[白ワインビネガー1カップ、水2カップ、砂糖大匙4、塩小さじ2]
ブドウ(シャインマスカット、ピオーネなど)適量、セロリ2本、シェーブルチーズ(サントモール)

1.ピクルス液の材料を鍋に入れて一度煮立て、冷ます。
2.ブドウは竹串で1粒につき5〜6カ所程度、突いておく。セロリは筋を取り、容器の長さに合わせて切る。
3.保存容器にブドウ、セロリを入れて、冷ました1を注ぎ、漬ける。翌日以降から食べられる。シェーブルチーズと盛り合わせて。

平野由希子
素材を生かしたシンプルでおいしい料理に定評のある料理研究家。書籍や雑誌、広告で活躍するかたわら飲食店のプロデュースや商品開発も手がける。日本ソムリエ協会認定ソムリエで、ワインバー「8huit.」のオーナーでもある。ワインと料理のペアリングが楽しめる料理教室も大人気。最新刊『ソムリエ料理家の ワインを飲む日のレシピ帖』(KADOKAWA)は、5分でできる簡単おつまみから本格的な煮物まで、ワインに合うレシピ118点を掲載
公式サイト

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