イタリアの有名レストランで研鑽を積み、2015年に「イル・リストランテ ブルガリ東京」のペストリーシェフに就任。2019年3月に発表された「アジアのベストレストラン50」にて、ベストペストリーシェフに輝いたファブリツィオ・フィオラーニ。その類まれなクリエーションはどこからくるのか?

BY YUMIKO TAKAYAMA

 1986年、イタリア・ローマ生まれのファブリツィオ・フィオラーニは、今や押しも押されもせぬ、世界のトップペストリーシェフの一人だ。

 スイーツの世界に入るきっかけは、学生時代の夏休みのアルバイトだったという。「家のそばのジェラテリアでバイトした時に、生クリームや卵、チョコレートなど、シンプルな原料から、ものすごくおいしいジェラートができるのを見て驚いた。実際に厨房で作らせてもらったんだけど、夢中になったんだ」

 イタリア国内のさまざまな星付きのレストランで修行をした後、ローマの名店として名高い、「ラ・ペルゴラ」にてペストリースーシェフに大抜擢。そして、東京の高級イタリアン「ハインツ・ベック」のオープニングメンバーとして来日。2015年に「イル・リストランテ ブルガリ東京」と大阪店、バリの「ブルガリ・リゾート」のペストリーシェフとして、グループ全体のデザートやペストリー、チョコレートを担当した。

画像: お茶目な一面も持つ、トップパティシエのファブリツィオ・フィオラーニ

お茶目な一面も持つ、トップパティシエのファブリツィオ・フィオラーニ

「『ラ・ペルゴラ』では伝統的な菓子のテクニックを学び、フィレンツェのエノティカ・ピンキオーリからは、新しいデザートを作るには創造性と直感と同じぐらい、規律が必要だと教えられた。チームがパズルのピースのようにピッタリと合わさった状態で、完璧なデザートをお客さまの前に持っていかなくてはならないんだ。『ブルガリ イル・レストランテ』のルカ・ファンティンとの出会いは、私の中にあるお菓子のアイディアを成熟させるためには不可欠なステップだったと思う。尊敬する先駆者たちと仕事できたことはラッキーだったし、好きな仕事だから、どんなにハードでもつらいと思ったことはなかった」とファブリツィオはいう。

 ペストリーシェフであることは彼の天職ともいえるが、彼の作るお菓子のすごさはその独創性にある。食べるまでどんな味か想像がつかないし、想像したとしてもその通りの味とはまったく異なるのだ。今回の来日では、ドイツの家電ブランド・Miele(ミーレ)のために来日。ミーレのオーブンや冷蔵庫を使って4つのデザートを製作。どれも今まで見たことのないビジュアル、体感したことのない味わいばかりだ。

画像: 「シューティラミス」 ミーレのインスタグラムへ飛ぶQRコードが、ホワイトチョコレートに印刷されている

「シューティラミス」
ミーレのインスタグラムへ飛ぶQRコードが、ホワイトチョコレートに印刷されている

「シューティラミス」は、コーヒー風味のクラックラン(クッキー生地)をのせたシューをオーブンで焼き、バニラの香りがするマスカルポーネクリームとコーヒークリームを挟んだもの。ホワイトチョコレートのQRコードにアクセスすると、ミーレの公式インスタグラムが開くというイマドキな仕掛け。一口で食べるとまさに、洗練されたティラミス!

「レモンジェリードライフルーツのヘーゼルナッツケーキ」は、レモンの爽やかな酸味とヘーゼルナッツのナッティーなコクが大人っぽいデザート。砂糖漬けレモンジェリーが入ったヘーゼルナッツのパウンドケーキを、ドライフルーツグレーズに浸して全体をコーティング。砂糖漬けの柑橘類と銀箔でエレガントにデコレーションしている。

画像: 「レモンジェリードライフルーツのヘーゼルナッツケーキ」 尊敬する「エーグルドゥース」の寺井則彦シェフへのオマージュのケーキだそう

「レモンジェリードライフルーツのヘーゼルナッツケーキ」
尊敬する「エーグルドゥース」の寺井則彦シェフへのオマージュのケーキだそう

画像: 「逆さまアップルパイ」 グラスの底にあるのがキャラメルババロア。ゲストの目の前でファブリツィオがグラスをひっくり返すのも演出のひとつ

「逆さまアップルパイ」
グラスの底にあるのがキャラメルババロア。ゲストの目の前でファブリツィオがグラスをひっくり返すのも演出のひとつ

 ファブリツィオ自らが各ゲストの前でグラスをひっくり返してサーブしたのは、「逆さまアップルパイ」。バターとカラメルをまとった食感の楽しい「タタン・アップル」と、バニラジェラート、サクサクのパイ生地、クルミ、キャラメルババロア、カルバドスソースと口のなかでさまざまな味わいが一体となる。

画像: 「チョコレートスフレ」 写真は、粉砂糖をふりかけて仕上げているところ。口に入れるとフワフワで、シュッと溶ける PHOTOGRAPHS: COURTESY OF MIELE

「チョコレートスフレ」
写真は、粉砂糖をふりかけて仕上げているところ。口に入れるとフワフワで、シュッと溶ける
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF MIELE

 ヴァローナ社のパールショコラをたっぷりと使い、リコッタチーズに卵、砂糖、カカオ、オレンジの皮といったシンプルな素材でデモンストレーションを行なったのは、「チョコレートスフレ」。粗塩をほんの少しだけ加えており、味に深みを加えている。

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