さまざまな分野で活躍する“おやじ”たち。彼らがひと息つき、渋い顔を思わずほころばせる……そんな「おやつ」とはどんなもの? 偏愛する“ごほうびおやつ”と“ふだんのおやつ”からうかがい知る、男たちのおやつ事情と知られざるB面とは。連載第15回はイラストレーターの師岡とおるさん

BY YUKINO HIROSAWA, PHOTOGRAPHS BY TAKASHI EHARA

 少年・少女マンガ、劇画調からアメコミ、ほのぼのとしたキャタクターまで、どんなタッチも描きこなす。加えて、巨匠らのタッチを引用しながらあらゆる人やモノと掛け合わせることで、見たことがあるようで見たこともない新世界を創る。イラストレーターの師岡とおるさんの画力は、凄まじい。
「小学校低学年のとき、クラスメイトが描いたガンダムを、みんなが『すごくうまい』と絶賛したんだけど、内心、『そうかなぁ』って。実際の映像が脳内に鮮明に残っているから答え合わせができるし、それを思い出しながら描くと、本物そっくりに描けた。一方、文字は全く頭に入ってきませんでしたが(笑)」。

 天賦の才は両親から受け継いだようで、「自営業を営んでいた父は黙々と仕事する働き者で、絵が上手。母は想像力豊かな人。よく寝かしつけで子供に絵本を読むじゃないですか。母は絵本を持たずに想像にまかせてしゃべり、翌日、『続きが聞きたい』と言えば勝手につなげてその先を語り出す。ある時は、おやつ箱のことを突然、“グリーンボックス”と命名したり(笑)。子供ながらに『この人、発想がすごいな』と思っていました」。

画像: 昭和8年生まれの吉田昭八郎さんが一人で切り盛り。豚肉やキャベツ、長芋、天かすなどが入ったワンハンドで食べられるしょっぱいおやつ。当時は、このシンプル・ポーズだけだったが、現在は全8種に。写真のイラストは師岡さんが描き下ろしてくれた 「シンプル・ポーズ」1個¥110(税込) なにわや TEL.042(344)1962

昭和8年生まれの吉田昭八郎さんが一人で切り盛り。豚肉やキャベツ、長芋、天かすなどが入ったワンハンドで食べられるしょっぱいおやつ。当時は、このシンプル・ポーズだけだったが、現在は全8種に。写真のイラストは師岡さんが描き下ろしてくれた

「シンプル・ポーズ」1個¥110(税込)
なにわや
TEL.042(344)1962

 工夫するのが好き。外遊びよりも家で『少年ジャンプ』を読みふけり、一番のヒーローだった「キン肉マン」などのキャラクターをひたすら模写するのが大好きだった師岡少年は、のちに通うことになる武蔵野美術大学やタツノコプロが近くにある商店街で育った。和菓子屋では大福やすあま、部活の帰りに親友と焼き鳥を、夏期講習の帰りに友人たちとお好み焼きのような「ポーズやき」をよく買い食いした。妙に渋い。「駄菓子やケーキも食べてはいたけど、僕にとっての“おいしい”は、そっちじゃなかった」。

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