ここ数年、世界は持続可能な社会へ向けて動き始めているが、東京では何が起きているのだろうか。5人の人物と活動に焦点をあて、人や社会、環境に配慮したエシカルシーンの潮流を追う連載。第一回は、土、緑、光。大地のような空間で食の循環を目指す「GYRE. FOOD(ジャイルフード)」

BY CHIZURU ATSUTA, PHOTOGRAPHS BY MIE MORIMOTO, EDITED BY JUN ISHIDA

 2020年1月、東京・表参道のランドマーク的存在のビル、ジャイル内の4階に、“食の循環”をテーマにしたフロア「GYRE. FOOD(ジャイルフード)」が誕生した。ワンフロア、ワンコンセプトを軸に、レストラン、ダイニング、バー、グロサリーショップなどがゆるやかにつながりながら展開する。1,000㎡という巨大なワンフロアに高い天井へと続く土壁、植物園のように鬱蒼と茂ったグリーン、ガラス張りの壁面から差し込む自然光といった開放的な空間は、表参道の真ん中において、土、緑、光を感じさせる、さながら大地のような場所を実現している。

画像: 有機的な空間は建築家、田根 剛によるもの。階段状に並ぶ四角い無垢材は、使い手次第で椅子にもテーブルにもなる

有機的な空間は建築家、田根 剛によるもの。階段状に並ぶ四角い無垢材は、使い手次第で椅子にもテーブルにもなる

「これまでにない食の発信地とコミュニティをつくりたかった」と語るのは、レストラン「イートリップ」をはじめ、食について多岐にわたって活動する料理人、野村友里。彼女はこの場所のコンセプトづくりに参加した一人だ。どのような場所にするか、近年、このエリアはインバウンド客であふれるが、観光客の顔色をうかがいながら空間づくりをするのではなく、あくまでも自分たちから発信する場所として、食の循環を目指し、意志をもってやっていきたいと語る。

画像: ビルのテラスの菜園で野菜を育てる野村友里。ここからは渋谷駅の高層タワー群までくまなく見渡せる。右手の木箱がコンポストボックスになっていて、ゴミの一部を堆肥にしている

ビルのテラスの菜園で野菜を育てる野村友里。ここからは渋谷駅の高層タワー群までくまなく見渡せる。右手の木箱がコンポストボックスになっていて、ゴミの一部を堆肥にしている

「日々食に関わる時間が多い私たちにとって、フードロスの問題や環境問題への関心は高くありました。ここでは、人、食材、そして哲学を共有するために、空間の真ん中をセントラルキッチンにしました。レストランから出る生ゴミをコンポストして、このビルの畑の土に生まれ変わらせたり、野菜くずをメニューの一品にしたり。食べてもらうだけでなく、考えも持ち帰ってもらえるようにワークショップを行い、すべてが循環に結びつくよう機能させています」

画像: 菜園で採った野菜を乾燥させて

菜園で採った野菜を乾燥させて

 この空間をつくる重要なエレメントの一つに土がある。グロサリーショップ「イートリップ・ソイル」からつながるテラスにある菜園では、野菜や花を育て、木箱でつくったコンポストボックスでフロアから廃棄される日々の食材や生ゴミを堆肥化している。「食材の質が高いものであれば、それはゴミとなってもいい栄養分が出るもの。ここで育てた野菜を提供し、料理で出た生ゴミはゴミ処理をせずコンポストし、このビルの畑の土へと循環させます。今は土づくりを行い、その土を販売していますが、今後は郊外に畑を借りて、ここで採れた種を植えて野菜や植物を育てることや、陶芸家に器をつくってもらうことなども視野に入れています。土にフォーカスしたことでこれからの構想がどんどん広がっています」

画像: 「ユーリカ」のランチセット¥2,450(デザート付) 残り野菜を使ったスープと牛ハラミのグリル

「ユーリカ」のランチセット¥2,450(デザート付)
残り野菜を使ったスープと牛ハラミのグリル

 空間を可視化することで、人や食材がどのように有機的につながっているのかもよくわかる。「当初は、都会のビルでは難しいかなと思いましたが、逆にここでやることに意義がある。正解を求めているというより、考えていることを一歩踏み出してやってみる。東京のど真ん中で動くことで見えてくるものがあるのではないかと期待しています」

※ 新型コロナウイルス感染症の感染予防・拡散防止のため、4月8日(水)より当面の間、臨時休業中(一部店舗を除く)。営業再開に関しては、公式サイトをご確認ください。

「GYRE. FOOD」
“SHOP & THINK”という哲学を掲げる「GYRE(ジャイル)」。地上4 階のワンフロア「GYRE.FOOD」は、フレンチメゾン「élan(エラン)」、カジュアルダイニング「EUREKA(ユーリカ)」、バー「fünklein(フュンクライン)」、グロサリーショップ「eatrip soil(イートリップ・ソイル)」の4つのセクションに分かれる。垣根なく自由に楽しめるのもうれしい。
住所:東京都渋谷区神宮前5 -10-1 4階
公式サイト

「ユーリカ」
営業時間:11:00〜21:00 LO(日曜:~20:30LO)
無休
電話:03(6803)8699

「イートリップ・ソイル」
営業時間:11:00〜20:00
定休日:月曜
電話:03(6803)8620 

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