OGATA Paris
ーー パリの空間に映る
日本の食とデザインの粋

The Best of Japanese Dining and Design, Under One Parisian Roof
パリという“場”を敬いながら、真の日本の心を届ける「OGATA Paris」。そこは茶房や和菓子ブティックなどで構成された、複合的な空間だ

BY THOMAS CHATTERTON WILLIAMS,PHOTOGRAPHS BY JOANN PAI, TRANSLATED BY KANAE HASEGAWA

 緒方慎一郎は、第二次世界大戦が終わってしばらくあとに(彼は年齢を明かすことに積極的ではない)、活火山の多い九州の西岸に位置する長崎県で育った。幼い頃に見た、かつて原爆が投下された故郷の風景を、緒方は驚くほど牧歌的な言葉で表現する。「自宅は大自然に囲まれていました」そして、「野菜も含めてすべての食べ物がとても新鮮でした」と語る。両親のおかげで緒方は自然への深い尊敬の念を育むことになった。その一方で、両親と長崎の土地は、緒方に世界からのインスピレーションも与えてくれた。「港があり、そこにオランダ人とポルトガル人が来航したんです」と、16世紀半ば、日本が正式に西洋に門戸を開く約300年前にやってきた商人たちに言及する。「長崎は西洋の文化が急速に広まり、さまざまな土地の影響や食文化が共存する場所でした」

画像: ウェンジ、ヒバ、チーク材を使用したメインのダイニングエリア。椅子はオーク材を編み上げた特注品

ウェンジ、ヒバ、チーク材を使用したメインのダイニングエリア。椅子はオーク材を編み上げた特注品

 1988年、緒方はインテリアデザインを学んでその分野で仕事をするために東京に移り住む。インスピレーションを求めた彼は、大都市の象徴として崇めてきたニューヨークへ毎年渡るようになった。しかし、駆り立てられるように故郷を飛び出し、外の世界をひとたび満喫すると、思いもよらない事実が明らかになった。「大切なことに気づいたのです。自分のアイデンティティは日本人であるということに」と緒方は言う。まさにその気づきが、その後の緒方の美意識から生まれるあらゆるものに反映されていく。

 1998年に東京の目黒区にオープンした和食の店「HIGASHI-YAMA Tokyo」は、降り注ぐ光とモノクロームの空間とともに四季折々の伝統的かつ現代的な料理が評判となった。同時に、自身のデザインスタジオSIMPLICITYを立ち上げると、以来引きも切らないクリエイティブな仕事を実現してきた。その中には2004年に手がけた、大分県の湯布院にある旅館、山荘無量塔のインテリアデザインもある。最近では、幅広い分野にわたる海外パートナーの日本における店舗の設計を手がけている。その中にはオーストラリアのスキンケアブランド、イソップの店舗やフランス料理のシェフ、アラン・デュカスのレストランの一つで、今は閉店してしまった大阪の店もある。さらに自身の美に対する哲学を著した本を3冊刊行し、東京大学総合研究博物館の特任准教授に就任していた。

画像: 地下の茶房。炭化木材のバーカウンターで、柄杓でお湯を注ぐ茶の専門家

地下の茶房。炭化木材のバーカウンターで、柄杓でお湯を注ぐ茶の専門家

画像: 粒餡を餅で包んだ「豆大福」、粟を使った「粟餅」、そして黒糖を加えたこし餡を本蕨粉の生地で包み、きな粉をまぶした「本蕨」など、さまざまな和菓子を取りそろえる

粒餡を餅で包んだ「豆大福」、粟を使った「粟餅」、そして黒糖を加えたこし餡を本蕨粉の生地で包み、きな粉をまぶした「本蕨」など、さまざまな和菓子を取りそろえる

 筆者と会ったときは、マンハッタンのWest 20th Streetで進めている14席の懐石料理店odoの最終調整を終えてパリに戻ったところだった。別の海外展開の一面だ。「現代のパリにはさほど影響を受けていません」と緒方は言う。「しかし、フランスには大いに敬意を抱いています。なぜなら文化を保持し、その価値を世界に送り出してきた国だからです」。

 フランス人は19世紀日本の絵画や装飾芸術に魅了され、ジャポニズムという言葉を生み出した国民であり、食、ファッションそしてデザインにおいて、両国はキャッチボールするように互いに関心をもち、交流を深めてきた。それは今でも続いている。結局のところ、この二つの国では、暮らしの中で様式というものが欠かせないとされているのだ。去り際に、コートの下に緒方が着ていた日本のものらしき服の美しさを褒めた。すると彼は笑って、日本製どころかベルギーのデザイナー、ドリス・ヴァン・ノッテンのものだと教えてくれた。「生活様式はどこのものでも分かち合えるということですね」と、緒方は言う。「大切なのは線引きをしないことです」

OGATA Paris
住所:16 rue Debelleyme 75003 Paris
営業時間:[レストラン]12:30〜14:30(ランチ)、19:30〜22:30(ディナー)
[茶房、ブティック、アトリエ]12:00〜19:00
※営業時間は変更になる可能性があります。公式サイトをご確認ください
定休日:月・火曜
公式サイト

 

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