効率よりも品質重視。目の届くなかで手塩にかけてよいものを――。東京の地で、周囲と手を携え、日々の糧を生み出す農業生産者たち。後編では様々な“つながり”を築く練馬の2軒を訪ねた

BY MIKA KITAMURA, PHOTOGRAPHS BY YUKO CHIBA

地元を巻き込んだワイン造りで
練馬の野菜に合う練馬のワイン「東京ワイナリー」

 同じ練馬区の大泉学園に、東京初のワイナリーがある。オーナーの越後屋美和がこの「東京ワイナリー」を立ち上げたきっかけは、練馬産の野菜との出合いだ。大学の農学部を卒業後、大田市場に勤めた。「私は横浜育ちで、東京で野菜が生産されていることさえ知りませんでした。初めて食べた練馬産キャベツのおいしさたるや。住宅街の狭い土地で育てるため、生産量が少ないぶん、手をかけて丁寧に育てられているから、味の濃さが格別でした」。東京の野菜のおいしさをもっと伝えたいと願い、思いついたのがワイン造り。果実酒醸造免許をとり、2014年にワイナリーを立ち上げた。ワインは料理との組み合わせでさらに味の世界が広がる。だから、コンセプトは“野菜に合うワイン造り”。ワインとともに、練馬の野菜の魅力も伝えられると考えたのだ。

画像: 醸造所近くの自家ぶどう畑

醸造所近くの自家ぶどう畑

 国産ぶどうを使い、現在年間1万本を製造する。「私のワイン造りは、ぶどうの味を引き出してあげるだけ」と笑う。ここのワインはすべて辛口の「にごりワイン」だ。濾過せず仕上げるので、ぶどうの風味が丸ごと残る。うま味はもちろん、苦味なども残すので、複雑な味わいが野菜の土くささに合う。「練馬産ぶどうのワインを増やすのが夢」と言う。現在、区内に7カ所、計2,000平米の畑で、彼女のワイナリーのためのぶどうが育っている。ぶどうの世話とワイン造りは地元のサポーターが手伝ってくれる。近所の子どもたちが参加することも。「いろいろな人が入って楽しくつくるほうがこのワイナリーらしくていいかな」

画像: 多種類を小さなタンクで醸す。2カ月ほどで店頭に並ぶワインの種類が変わるのが、ここのスタイル

多種類を小さなタンクで醸す。2カ月ほどで店頭に並ぶワインの種類が変わるのが、ここのスタイル

画像: 商品化を目指す練馬ワイン。エチケットの絵は公募にて

商品化を目指す練馬ワイン。エチケットの絵は公募にて

 周囲とつながることで活動に理解も協力も得られる。「小さな試みではありますが、自分にできることを少しずつ積み重ねて、微力ながら、地域に貢献していきたい」

画像: オーナーの越後屋美和。「うちのワインは一期一会なんです」と話す

オーナーの越後屋美和。「うちのワインは一期一会なんです」と話す

東京ワイナリー
東京都練馬区大泉学園町2-8-7
TEL.03(3867)5525
公式サイト

 白石農園の白石好孝は「農業は自然を慈しみ、人々の生きる糧を生み出す仕事」と言う。東京で地に足を着け農を営む5人の姿勢に、今、時代の岐路に立つ私たちの進むべき道しるべが見える気がする。

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