世界のトップシェフ、マッシモ・ボットゥーラとグッチがタッグを組んだレストラン、「グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ」が銀座に誕生し、話題を呼んでいる。魅惑的な空間のなかで供されるのは、イタリアと日本が呼応し、融合する料理。この味は、どこから生まれるのか。インスピレーション・ソースはなにか。ヘッドシェフ、アントニオ・イアコヴィエッロに話を聞いた

BY MIKA KITAMURA

「グッチ」の創設100年目となる2021年秋。東京・銀座の並木通りのフラッグシップショップ「グッチ並木」の最上階に、イタリアンレストラン「グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ」がグランドオープンした。本店はイタリア・フィレンツェ。米国・ロサンゼルスのビバリーヒルズ店に続き、3店目となった。

画像: 「Room of Mirrors」と名付けられた美しいプライベートダイニングルーム。グッチ デコール コレクションのウォールペーパーで装飾された壁に、ヨーロッパのアンティークミラーが輝きを放つ PHOTOGRAPH BY HIROKI KOBAYASHI

「Room of Mirrors」と名付けられた美しいプライベートダイニングルーム。グッチ デコール コレクションのウォールペーパーで装飾された壁に、ヨーロッパのアンティークミラーが輝きを放つ
PHOTOGRAPH BY HIROKI KOBAYASHI

 店名を見て、すぐにおわかりの方もおられるだろう。イタリアが誇るミシュラン三ツ星、モデナの「オステリア フランチェスカーナ」のシェフ、マッシモ・ボットゥーラとグッチとのコラボレーションだ。 強力な助っ人を得て、「グッチ オステリア」のひとつ傘の下、同じ価値観と理念を大切にしつつ、世界の選ばれた都市で多様性とアイデンティティを表現した独創性あふれる料理を追究し、それぞれに進化を遂げている。東京店のヘッドシェフには、フィレンツェ本店からアントニオ・イアコヴィエッロを迎えた。

 並木通りに面したエントランスのファサードを飾るのは、日本人アーティスト・ヒグチユウコのアートワーク。エントランスに辿り着く前から、ワクワク感が高まる。店内はコンテンポラリーでありながら、イタリアのルネッサンス期を彷彿とさせる装飾美に彩られている。廻り縁に施された金色の文字は、15世紀にロレンツォ・デ・メディチが書いた「Canzona de' sette pianeti(7つの惑星の歌)」という詩の一節で、フィレンツェの本店にも同じ詩句が掲げられているという。プライベートダイニングルームは、ヨーロッパのアンティークミラー、美しい光沢を放つ木製ボアズリー、グッチ デコール コレクションのウォールペーパーで装飾され、どっしりとしたアンティークテーブルが迎えてくれる。モダンで開放的なルーフトップテラスでは、天気のよい日の16時から18時まではアペリティーヴォを、その後はバーとして気軽にグッチ オステリアを楽しめる。銀座の中心にありながら、この場にはさまざまな時空と文化が共存し、訪れる人はそれらを自在に行き来する高揚感に満たされる。

画像: ANTONIO IACOVIELLO(アントニオ・イアコヴィエッロ) 南イタリア・カンパニア州生まれ。ローマにある祖母のトラットリアで食材の扱い方を学び、16歳から本格的に料理の道に。フランス・サントロペのアラン・デュカスのレストラン「ビブロス」をはじめ、デンマーク「ノーマ」、イタリア「ドン・アルフォンソ 1890」などで研鑽を積み、イタリア・モデナ「オステリア フランチェスカーナ」、フィレンツェ「グッチ オステリア」を経て、2021年10月、「グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ 」のヘッドシェフに就任 PHOTOGRAPH BY HIROKI KOBAYASHI

ANTONIO IACOVIELLO(アントニオ・イアコヴィエッロ)
南イタリア・カンパニア州生まれ。ローマにある祖母のトラットリアで食材の扱い方を学び、16歳から本格的に料理の道に。フランス・サントロペのアラン・デュカスのレストラン「ビブロス」をはじめ、デンマーク「ノーマ」、イタリア「ドン・アルフォンソ 1890」などで研鑽を積み、イタリア・モデナ「オステリア フランチェスカーナ」、フィレンツェ「グッチ オステリア」を経て、2021年10月、「グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ 」のヘッドシェフに就任
PHOTOGRAPH BY HIROKI KOBAYASHI

 料理は、マッシモ・ボットゥーラ、カリメ・ロペス(フィレンツェ本店のヘッドシェフ。2020年に一ツ星獲得)、東京店のヘッドシェフを務めるアントニオ・イアコヴィエッロがアイディアを出し合った。“日本の食文化や食材を取り入れたコンテンポラリーなイタリア料理を表現する”のが同店のモットー。例えば、「ラーメンになりたいパルミジャーナ」では、トマトソースとチーズをナスに重ねて焼いたイタリアの定番「パルミジャーナ」からインスピレーションを得て、ナスをベースとしたブロード(出汁)を、ローストしたナスとパスタに添えて、ラーメン風に仕立てた。まさかのラーメン文化の登場だが、日本のストリートフードにイタリアの食文化を重ね、上質な一皿にまとめ上げている。

画像: 「ラーメンになりたいパルミジャーナ」 ローストしたナスにスパゲッティを合わせ、ナスのブロード(出汁)の下にトマトベースのソースが添えられたひと皿。イタリア的な組み合わせなのに、スパゲッティを出汁に浸すというスタイルの転換で、ラーメン風に PHOTOGRAPH BY GABRIELE STABILE

「ラーメンになりたいパルミジャーナ」
ローストしたナスにスパゲッティを合わせ、ナスのブロード(出汁)の下にトマトベースのソースが添えられたひと皿。イタリア的な組み合わせなのに、スパゲッティを出汁に浸すというスタイルの転換で、ラーメン風に
PHOTOGRAPH BY GABRIELE STABILE

 清々しいグリーンが映える「プロント ールイーザ…_ビッザへのオマージュ」には、このレストランの成り立ちの物語が描かれている。グッチの社長兼CEOであるマルコ・ビッザーリとマッシモ・ボットゥーラ は同郷の幼馴染みで、今も深い親交がある。ルイーザは、ボットゥーラの母の名前である。ふたりの少年は放課後に遊んではボットゥーラ家に寄り、ルイーザの得意料理、グリーンピースのリゾットを一緒に食べたという。その思い出からイアコヴィエッロがイメージして創作したもので、「グッチ オステリア」の奥深さが感じられるひと皿だ。ここ東京では、山形県産のカルナローリ米を使い、枝豆のクリームと、カラメリゼした味噌を組み合わせている。

画像: 「プロント ールイーザ…_ビッザへのオマージュ」 この皿の名は「ルイーザ、ごはんまだ?」という少年たちの問いかけの言葉から。マッシモ・ボットゥーラの幼馴染、マルコ・ビッザーリへの友情が込められた、イアコヴィエッロによる一品。東京店ならではのひねりを効かせて。香り高い味噌の風味が、日本人の郷愁を誘う PHOTOGRAPH BY HIROKI KOBAYASHI

「プロント ールイーザ…_ビッザへのオマージュ」
この皿の名は「ルイーザ、ごはんまだ?」という少年たちの問いかけの言葉から。マッシモ・ボットゥーラの幼馴染、マルコ・ビッザーリへの友情が込められた、イアコヴィエッロによる一品。東京店ならではのひねりを効かせて。香り高い味噌の風味が、日本人の郷愁を誘う
PHOTOGRAPH BY HIROKI KOBAYASHI

「自分を取り巻く環境や思い出も、料理のインスピレーションになります。私は食材からスタートして、記憶を辿りながら、料理のアイディアを練ります」と語るのは、イアコヴィエッロ。その料理に対する姿勢は、ボットゥーラから学んだと言う。来日後の現在は、日々目にしたもの、体験したことから料理のインスピレーションを得ている。「日常生活の中で目にした魚や野菜からアイディアが湧いてくることも多いです。私が経験したことをゲストにも感じ取っていただけたら」。カルボナーラには、黒胡椒の代わりに山椒を挽きかけ、北海道産のうにを忍ばせるのが、今の彼の“トウキョウ仕立て”だ。

 デザートにもサプライズが待っていた。帆立のデザートは、筆者の人生初。「既成概念にとらわれない新しい料理を2品は出しなさい、とボットゥーラシェフに言われて考えました。サプライズと、少しばかりのショックをゲストに感じていただける一品になったのではと思います」。かぼちゃのカラメルとオレンジのアイスクリームが帆立の甘みを包み込む。ヘルシーで、遊び心たっぷり。ハッピーな気分で食事を締める。

画像: 「ホタテ マントヴァ風トルテッロ」 アーモンドのリキュール「アマレット」を加え、かぼちゃを詰めたトルテッロ(ラヴィオリの一種)は北イタリア・マントヴァに伝わる伝統料理。生の帆立とこの伝統料理を融合させた、サプライズデザート。メニュー「Come to italy with me」(全7品)¥15,000(サービス料別)<2021年12月現在>※ メニューは季節ごとに変わります PHOTOGRAPH BY HIROKI KOBAYASHI

「ホタテ マントヴァ風トルテッロ」
アーモンドのリキュール「アマレット」を加え、かぼちゃを詰めたトルテッロ(ラヴィオリの一種)は北イタリア・マントヴァに伝わる伝統料理。生の帆立とこの伝統料理を融合させた、サプライズデザート。メニュー「Come to italy with me」(全7品)¥15,000(サービス料別)<2021年12月現在>※ メニューは季節ごとに変わります
PHOTOGRAPH BY HIROKI KOBAYASHI

 イアコヴィエッロは南イタリア出身で、グッチ オステリアの前もさまざまな名店で研鑚を積んだ。そのひとつ、デンマーク「ノーマ」の発酵研究所で芽生えた発酵への関心が、日本の発酵食品へも向けられているようだ。地中海地方の食材の持ち味を引き出す料理法や独特の色彩感覚を武器に、 グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウでは、 彼はこれから日本の食材をどのように昇華させていくのか。ラグジュアリーな空間とエレガントなサービス、深い食文化に裏打ちされた冒険心溢れる料理に、今後の期待は高まるばかりだ。

グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ
Gucci Osteriada Massimo Bottura Tokyo
住所:東京都中央区銀座6-6-12 グッチ並木 4階
営業時間:
[ランチ]月曜~土曜日 11:30~14:30/日曜日 11:30~15:30 、
[ディナー]月曜~土曜日 18:00~23:00
[アペリティーヴォ]月曜 - 土曜日 16:00-18:00/[バー]月曜- 土曜日 18:00-23:00 ※テラス席のみ、季節・天候によってクローズ
電話:03(6264)6606
公式サイト

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