「ドン ペリニヨン」の新ヴィンテージ、2013年がリリースされた。それに伴い、醸造最高責任者のヴァンサン・シャプロン氏が来日。時が生み出した美しいシャンパーニュの魅力を語ってくれた。

BY KIMIKO ANZAI

画像: ドン・ピエール・ペリニヨン修道士が在籍していたオーヴィレール大修道院。まわりにはブドウ畑が広がる。オーヴィレール村のブドウは、「ドン ペリニヨン」に使用されることもある COURTESY OF DOM PÉRIGNON

ドン・ピエール・ペリニヨン修道士が在籍していたオーヴィレール大修道院。まわりにはブドウ畑が広がる。オーヴィレール村のブドウは、「ドン ペリニヨン」に使用されることもある
COURTESY OF DOM PÉRIGNON

 シャンパーニュの中でも、ブドウが収穫された年の特徴が表現されるのが”ヴィンテージ”だ。暑い年だったのか、寒かったのか。ブドウはどんな気候で育ったのか。そして醸造家は、それをどのように仕立てたのか。ボトルには、ブドウとメゾンの“その年の物語”が隠されている。2013年ヴィンテージについて、醸造最高責任者のヴァンサン・シャプロン氏はこう語ってくれた。
「2013年は2つの特徴を持った年でした。前年が冷涼であったためブドウの発芽が2週間遅れ、そのため、例年より遅い10月の収穫となりました。この時期、シャンパーニュ地方は一気に冷涼になりますが、そんな中でもブドウはゆっくりと成熟し、フレッシュな酸と豊かなアロマが保たれました。一方で、夏は非常に乾燥して暑く、ブドウの凝縮感がアップしました」。
 シャプロン氏によれば、2013年は昔のシャンパーニュを思い出す年だったという。ここ数年、地球温暖化は全世界的に進み、冷涼なシャンパーニュ地方でも8月末や9月にはブドウが完熟することも多かった。だが、2013年は収穫が10月になったことで、シャプロン氏はあることに気付いたという。
「私が気候変動を肌で感じたのが2003年のこと。ですから、収穫が10月というのは昔に戻ったようで、私に2003年以前のシャンパーニュを思い起こさせました。これをアドバンテージとするために、アサンブラージュ(ブレンディング)では、暑い夏ゆえの力強さと遅摘みの冷涼な空気がもたらすエレガントさ、このふたつの要素をバランスよくまとめたいと考えました」。結果、でき上がったのは冷静と情熱、知性とセンシュアリティという「ドン ペリニヨン」ならではのパラドックスに満ちた美しいシャンパーニュだった。特に果実の凝縮感がエレガントに表現され、“2013年らしさ”を物語っている。

画像: 醸造最高責任者 ヴァンサン・シャプロン氏。1976年、ボルドーのワイン醸造家の一家に育つ。2005年に「ドン ペリニヨン」チームに参加、醸造家補佐に就任。2019年1月より現職 COURTESY OF DOM PÉRIGNON

醸造最高責任者 ヴァンサン・シャプロン氏。1976年、ボルドーのワイン醸造家の一家に育つ。2005年に「ドン ペリニヨン」チームに参加、醸造家補佐に就任。2019年1月より現職
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 特筆すべきは「ドン ペリニヨン ヴィンテージ 2013」は、他のメゾンよりも遅れてリリースされたということだろう。昨年、いくつかのメゾンが2013年ヴィンテージの最上級キュヴェをリリースしたが、「ドン ペリニヨン」は、あえて1年遅れで世に出すことを決断した。なぜなのか。
「シャンパーニュ造りにおいて、アサンブラージュ同様に大切なのが熟成です。『ドン ペリニヨン』は熟成に時間をかけていますが、これによってシャンパーニュに複雑さとハーモニーが生まれます。シャンパーニュが長い眠りから覚め、その“声”が聞こえた時が、皆様にお届けすべき時だと考えています」。

画像: 「ドン ペリニヨン ヴィンテージ 2013」。シャルドネとピノ・ノワールをブレンド。レシピはなく、”繊細で謎めいたバランス”に仕立てられる。黄桃やアプリコット、バラの香り。ハチミツやカルダモンなど、甘いスパイスのニュアンスも。ピュアな酸味と美しい熟成感が印象的。750ml¥37,400(ボックス付き) COURTESY OF DOM PÉRIGNON

「ドン ペリニヨン ヴィンテージ 2013」。シャルドネとピノ・ノワールをブレンド。レシピはなく、”繊細で謎めいたバランス”に仕立てられる。黄桃やアプリコット、バラの香り。ハチミツやカルダモンなど、甘いスパイスのニュアンスも。ピュアな酸味と美しい熟成感が印象的。750ml¥37,400(ボックス付き)
COURTESY OF DOM PÉRIGNON

 最後に、シャプロン氏にこのコロナ禍の3年間、どんなことを考えていたのかと質問をしてみた。日々、自然を相手にする醸造家が、ここ数年の事象とどう向き合ってきたのかを聞いてみたかったのだ。シャプロン氏は穏やかな笑顔でこう語った。
「人間の力だけではどうにもならないことがあると痛感しました。また、時間ができたことによって、今までは人間の都合で、あまりにも早いサイクルで動いていたことにも気づいた。今、世界は困難を経て、スピードや効率だけを求めるサイクルを見直す時期に来ているように思います。そして何より、人間は自然の一部なのだと、あらためて気づきました。自然の中で、人間の居場所はどこにあるのかを考えなくてはいけないと、今、思い始めています。私たちはシャンパーニュ・メーカーです。人と大地、そして人と文化を繋ぎ合わせるという役割を持っている。今、世界は危うさやもろさを感じさせつつも繋がっていて、その中には確実に幸福な時間がある。『ドン ペリニヨン ヴィンテージ 2013』はそんな“時”に寄り添うものでありたいと願っています」。

問:MHD モエ へネシー ディアジオ
TEL:03-5217-9732

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