世界的評価の高い“スーパー・タスカン”「ルーチェ」の醸造責任者アレッサンドロ・マリーニ氏が初来日。新ヴィンテージ「ルーチェ 2022」の魅力と、1993年の初リリース以来、長く愛される ”美しき味” の秘密を語ってくれた

BY KIMIKO ANZAI, PORTRAIT BY KIKUKO USUYAMA

画像: 「テヌータ・ルーチェ」の顔ともいえるワイン。(左)18世紀終わりから続くモンタルチーノの伝統に敬意を表した「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」。(中)フラッグシップワインである「ルーチェ」。今回の記事では新ヴィンテージ「ルーチェ 2020」を掘り下げて紹介する。(右)より親しみやすくモンタルチーノのテロワールを表現した、テヌータ・ルーチェの導入ワインである「ルチェンテ」 PHOTOGRAPH BY KIKUKO USUYAMA

「テヌータ・ルーチェ」の顔ともいえるワイン。(左)18世紀終わりから続くモンタルチーノの伝統に敬意を表した「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」。(中)フラッグシップワインである「ルーチェ」。今回の記事では新ヴィンテージ「ルーチェ 2020」を掘り下げて紹介する。(右)より親しみやすくモンタルチーノのテロワールを表現した、テヌータ・ルーチェの導入ワインである「ルチェンテ」

PHOTOGRAPH BY KIKUKO USUYAMA

 世界的評価の高い ”スーパー・タスカン” の中で、異彩を放つ存在が「ルーチェ」だ。その芳醇でエレガントな味わいは、多くのワイン愛好家を魅了してきた。“スーパー・タスカン” とは、70年代、イタリア・トスカーナ地方で続々と誕生したボルドースタイルの高級ワインのことで、「ボルドーの格付けワインに比肩する味」と評され、瞬く間に表舞台へと躍り出た。その多くはカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロなどの国際品種で造られるが、「ルーチェ」はひと味違っている。国際品種のメルロと在来品種のサンジョヴェーゼをブレンドしているのだ。ワイナリーが位置するモンタルチーノは銘醸ワイン「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」が生まれる土地で、使用されるサンジョヴェーゼはこの地の誇りでもある。”モンタルチーノらしさ” が反映されていることが、「ルーチェ」のアイデンティティなのだ。

画像: 2018年にお披露目された「テヌータ・ルーチェ」の新ワイナリー。醸造設備を地下に配置し、周りの自然に溶け込むような建築デザインを施している。二酸化炭素排出料理削減など、省エネ対策も実施。醸造所の屋根には地中海風ガーデンが広がる COURTESY OF TENUTA LUCE

2018年にお披露目された「テヌータ・ルーチェ」の新ワイナリー。醸造設備を地下に配置し、周りの自然に溶け込むような建築デザインを施している。二酸化炭素排出料理削減など、省エネ対策も実施。醸造所の屋根には地中海風ガーデンが広がる

COURTESY OF TENUTA LUCE

 このワインを誕生させたのが、700年の歴史を持つ名門フレスコバルディ家のヴィットリオ・フレスコバルディ侯爵と ”カリフォルニアワインの父” ロバート・モンダヴィ氏だ。ワインの巨星同士が「モンタルチーノの地で前例のないワインを造る」という思いのもとタッグを組み、「テヌータ・ルーチェ」を1995年に創設した。初ヴィンテージ「ルーチェ1993」はリリースされるやいなや、新たな ”スーパー・タスカン” として多くのワイン愛好家を魅了した。現在はフレスコバルディ家が単独でワイナリーを所有、高品質の味を守り続けている。

 ワインの世界においてはハリウッドスター的存在ともいえる「テヌータ・ルーチェ」。その陣頭指揮を執るのが醸造責任者のアレッサンドロ・マリーニ氏だ。カリフォルニアのワイナリーやボルドーの有名シャトーで長く研鑽を積み、世界のワインに精通する実力派だ。醸造責任者として指名を受けた時の驚きをこう振り返る。

画像: アレッサンドロ・マリーニ氏。「テヌータ・ルーチェ」ワインメーカー。イタリア・マルケ州出身。大学で栽培と醸造の学位を取得後、カリフォルニアでインターンシップを取る。その後ボルドーへ。「シャトー・フィジャック」を始め、名門シャトーで研鑽を積み、同時期、ボルドー大学にてフランス国家認定ワイン醸造氏の資格を取得。2019年より現職 PHOTOGRAPH BY KIKUKO USUYAMA

アレッサンドロ・マリーニ氏。「テヌータ・ルーチェ」ワインメーカー。イタリア・マルケ州出身。大学で栽培と醸造の学位を取得後、カリフォルニアでインターンシップを取る。その後ボルドーへ。「シャトー・フィジャック」を始め、名門シャトーで研鑽を積み、同時期、ボルドー大学にてフランス国家認定ワイン醸造氏の資格を取得。2019年より現職

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「イタリア人にとっては ”あのルーチェ” ですから、当初は興奮しました。でも、そのあとで、すぐにプレッシャーに襲われました(笑)。ここで自分がすべきことは何かを熟考し、醸造過程をより丁寧に、緻密に行うことから始めました。同時に、気候変動に対処できる栽培方法を考え、すべての仕事においてレベルアップを図りました」

 また、長く海外で過ごしたマリーニ氏は、この地のテロワールと在来品種のサンジョヴェーゼとも、あらためて向き合ったという。「『ルーチェ』はメルロとサンジョヴェーゼが奏でるハーモニーが美しいワインです。サンジョヴェーゼは ”モンタルチーノの魂” とも言える品種で、やわらかな果実味とフレッシュな酸味が特徴。これをどう生かすかを考えました」

画像: 249ヘクタールの農園のうち、ブドウ畑は92ヘクタール。まわりは自然に囲まれ、昆虫や鳥など、多くの生物が生息する。化学肥料は不使用、ブドウはすべて有機栽培で、すべての畑が「スオロ・エ・サルート」(有機生産の管理認証機関)の認証を取得している COURTESY OF TENUTA LUCE

249ヘクタールの農園のうち、ブドウ畑は92ヘクタール。まわりは自然に囲まれ、昆虫や鳥など、多くの生物が生息する。化学肥料は不使用、ブドウはすべて有機栽培で、すべての畑が「スオロ・エ・サルート」(有機生産の管理認証機関)の認証を取得している

COURTESY OF TENUTA LUCE

 結果、新ヴィンテージの「ルーチェ 2020」は、芳醇で美しいワインに仕上がった。ブラックベリー、桑の実、カカオなどの香りがふわりと漂い、とてもアロマティック。タンニンはシルキーで心地よく、味わいは ”極めて” 優雅。「2020年の特徴をひと言で言い表すなら ”バランスとハーモニー” でしょうか。タンニンがなめらかで、若いうちから飲めるのが特徴です。同時に、長期熟成も可能な力強さも持ち併せています」

 マリーニ氏によれば、2020年という年は、春は温かく、5月に雨が多く降ったことから、ブドウは例年より早く開花したという。夏は暑かったが、ほどよい降雨や寒暖差に恵まれ、理想的なブドウが収穫でき、香り豊かで深みのあるワインに仕上がったという。「素晴らしいワインに仕上がり、ほっとしています」と晴れやかな笑顔を見せる。

画像: 「ルーチェ 2020」。メルロ、サンジョヴェーゼ各50パーセント。ブラックベリーやカシス、カカオや甘いスパイスの香り。美しい酸味とシルキーなタンニン。余韻も長く続く。すき焼きなど肉料理全般のほか、鰻の蒲焼にも。750ml ¥24,200(2023年5月中旬頃より順次発売) COURTESY OF TENUTA LUCE

「ルーチェ 2020」。メルロ、サンジョヴェーゼ各50パーセント。ブラックベリーやカシス、カカオや甘いスパイスの香り。美しい酸味とシルキーなタンニン。余韻も長く続く。すき焼きなど肉料理全般のほか、鰻の蒲焼にも。750ml ¥24,200(2023年5月中旬頃より順次発売)

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 最後に、初来日というマリーニ氏に日本に対する印象を聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「日本の皆さんのワインの知識が深いことに驚きました。『ルーチェ』をご存知の方が多かったのもうれしかった。また、私の発見は、『ルーチェ』は日本料理によく合うということでした。今回、尾崎牛のカルパッチョを合わせたのですが、素晴らしかった。鰻ともよく合うと思います」

「ルーチェ2020」を味わっていると、芳醇な果実味と美しい酸味の奥に、トスカーナの太陽のような温かみのあるニュアンスが隠れていることに気づく。ボトルには太陽を思わせるアイコンが描かれているが、この意匠はフィレンツェのサント・スピリト教会の大祭壇の紋章にインスピレーションを受けたもので、”神の光” を表すという。”光” は 自然や人間に豊かさをもたらす。「ルーチェ」は、大切な人々と過ごす時間を優しく包む幸福の光でもある。

問い合わせ先
日本リカー株式会社 
TEL. 03-5643-9770

画像1: 時代を先取りしつつ自然に寄り添う
唯一無二のワイン「ルーチェ」の
美しき新ヴィンテージ

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