TEXT&PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO
最近は京都の店が府外に支店や期間限定店を出すことも多く、さらにネットショッピングも普及し、京都に行かずしても買えるモノが増えてきました。とは言え、店に行かないと味わえないモノもまだまだあり。今月はそんな支店を持たず、賞味期限も短い餅菓子に注目。第2弾は、「まるに抱き柏」をご案内します。
西院「まるに抱き柏」
人口あたりの和菓子店の数が日本一多い京都。昔は、茶席で最上のもてなしとして出される”上生菓子”と、大福や団子、餅菓子、おまん(饅頭)といった”日常のおやつ”を作る店は明確に分かれていたのが、最近では、ジャンルレス化が進行中。今回紹介する「まるに抱き柏」も上生菓子と日常のおやつが仲良く並んでいる。
西森敬祐さんは、製菓専門学校を卒業後、「老松」や「亀屋良長」といった老舗の菓子司修行後、豆大福でお馴染みの「出町ふたば」の門をたたいた。
「修行先の菓子司では、上生菓子作りの技や四季のうつろいの表現、美意識などを学ばせていただきましたが、上生菓子は茶席をはじめ、特別なおもてなしの時にいただく菓子の印象がまだまだ強くて。将来、ご近所さんが普段使いしてくれる和菓子店を開きたいと思っていたので、大福やだんごなどを得意とする出町ふたばさんで修行させてもらいました」。
2021年に構えた自身の店では、大福やおまん、団子を中心に、姿や銘から四季折々の風雅を伝える上生菓子も手がけている。
代表銘菓は「黒豆大福」。餅米の粉に砂糖や水飴を加えて練り上げた求肥で包む大福もあるが、こちらでは、毎朝、餅米を蒸し、きめ細かい食感になるまでついた餅を使用。餅はかたくなるのが早く、賞味期限が当日中の朝生菓子になっている。「求肥よりも日持ちはしませんが、つきたての餅は、コシがあるのにもっちり柔らかく、食感が格別です」と、西森さん。
甘みをおさえた餅生地は、餅米の風味がしっかり感じられ、雑味のないなめらかなこしあんともよく合い、ペロリといけるあっさり感。餅に練り込んだ密漬けの黒豆もホックリおいしいアクセントを添えている。
秋冬は丹波栗を使った栗餅をはじめ、ぎんなんやくるみ、柚子を使った大福も登場予定。そちらも楽しみだ。
まるに抱き柏
住所:京都市右京区西院平町21
営業時間:9:00~18:00
定休日:火曜、他不定休あり
TEL. 075-748-9650
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