TEXT & PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO
東山「鍵善良房 高台寺店」
享保年間創業、祇園で300年近く続く和菓子店「鍵善良房」。京都に行ったら毎回、こちらで、くずきりを食べるというファンも多い有名店ですが、高台寺店があるのはご存じだろうか。
高台寺店は、実は40年以上前からある。昨年は半年に渡る改装工事を行い、今年1月にリニューアルオープンした。
ひと昔前は、大人の街として知られていた祇園だが、今や日本人観光客と外国人ツーリストでごった返す一大観光スポットとなり、本店も混み合っていることが多く、高台寺店は穴場。しかも、リニューアルを機に設けられた半個室は電話予約ができるのがありがたい。
「鍵善良房」は花街・祇園という場所柄、茶人や僧侶はもとより、お茶屋や料亭に出入りする文人墨客や旦那衆、花街の女性たちにも広く愛されてきた和菓子店だ。店の代名詞であるくずきりも、元々は、食後のデザートやおやつとして、料理屋さんやお茶屋さん、芝居小屋に配達していたそう。くずきり用の二段重ねの蓋付き漆器も、配達することを考慮し、木工作家・黒田辰秋がこの仕様にしたという。
材料は、奈良吉野・大宇陀産の「吉野本葛」と水のみというシンプルの極み。葛粉を水で溶き、平鍋で流しこみ、湯煎に。葛が固まり、透明になると、冷水にさらし、包丁で5mmほどの幅に切っていく。
くずきりは、水をはった塗りの器に入っていて、目にも涼しい。キンキンに冷えているのに、驚くほどなめらかでコシもあり。黒糖蜜にくぐらせていただけば、こっくり甘く、それでいてみずみずしく、ひんやりとしたのど越しは暑い夏の日にもぴったりだ。
店内では、くずきりのほか、上生菓子をいただけ、夏の間は、青竹の筒に水ようかんを流し入れた「甘露竹」も楽しめる。
私は昔から雑味がないあっさりとした甘さの「甘露竹」が大好物で、幼い時は、竹筒から直接チュルンと吸い込み、わずか数秒で食べきってしまい、母に「もっと味わって食べなさい」と、怒られた記憶が・・・。お店ではもちろんお皿にのせて供され、菓子切りでいただきます。
高台寺店の内装は、「鍵善良房」の美術館「ZENBI」や「ZEN CAFE」を手がけた金澤富さん(IAT STUDIO/Architecs+)が担当。店内には所蔵の美術品も飾られ、本店とは趣が異なる瀟洒な空間も魅力だ。
半個室を電話予約しておけば、待たずにスムースに入れ、暑い夏の日も快適。時間をムダにせず、しかもゆったりくつろげ、京都旅に行く際は、是非とも覚えておいてほしい一軒だ。
「鍵善良房 高台寺店」
住所:京都市東山区下河原通高台寺表門前上ル
営業時間:10:00〜17:30LO ※混み具合によって閉店が早まる場合もあり
定休日:水曜(祝日の場合は翌日休)
TEL. 075-525-0011
公式サイトはこちら
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