京都生まれ、京都育ちの食いしん坊、京都でおいしいものに出合いたければ、この人に聞けばハズレなし!そんなアマジュンこと天野準子の絶品満腹口福アドレス。今月は京都旅の途中にひと息つきたい茶房やカフェの新アドレスを紹介。第2弾は「鍵善良房 高台寺店」!

TEXT & PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO

東山「鍵善良房 高台寺店」

画像: 「鍵善良房」の夏の代表菓子「甘露竹」¥500(〜9月中旬)

「鍵善良房」の夏の代表菓子「甘露竹」¥500(〜9月中旬)

 享保年間創業、祇園で300年近く続く和菓子店「鍵善良房」。京都に行ったら毎回、こちらで、くずきりを食べるというファンも多い有名店ですが、高台寺店があるのはご存じだろうか。

画像: 高台寺や円山公園にほど近い、下河原通に面した一軒家

高台寺や円山公園にほど近い、下河原通に面した一軒家

 高台寺店は、実は40年以上前からある。昨年は半年に渡る改装工事を行い、今年1月にリニューアルオープンした。
 ひと昔前は、大人の街として知られていた祇園だが、今や日本人観光客と外国人ツーリストでごった返す一大観光スポットとなり、本店も混み合っていることが多く、高台寺店は穴場。しかも、リニューアルを機に設けられた半個室は電話予約ができるのがありがたい。

画像: 手入れの行き届いた庭を望むガラス張りの半個室。電話予約可。卓料1時間¥2,000

手入れの行き届いた庭を望むガラス張りの半個室。電話予約可。卓料1時間¥2,000

「鍵善良房」は花街・祇園という場所柄、茶人や僧侶はもとより、お茶屋や料亭に出入りする文人墨客や旦那衆、花街の女性たちにも広く愛されてきた和菓子店だ。店の代名詞であるくずきりも、元々は、食後のデザートやおやつとして、料理屋さんやお茶屋さん、芝居小屋に配達していたそう。くずきり用の二段重ねの蓋付き漆器も、配達することを考慮し、木工作家・黒田辰秋がこの仕様にしたという。

画像: くずきりは、鍵の文様が描かれた信玄弁当風の漆器で運ばれてくる

くずきりは、鍵の文様が描かれた信玄弁当風の漆器で運ばれてくる

 材料は、奈良吉野・大宇陀産の「吉野本葛」と水のみというシンプルの極み。葛粉を水で溶き、平鍋で流しこみ、湯煎に。葛が固まり、透明になると、冷水にさらし、包丁で5mmほどの幅に切っていく。

画像: 箸ですくうと、大きな氷がカランと涼しい音を立てる。つるんとしたのど越しの「くずきり」¥1,400

箸ですくうと、大きな氷がカランと涼しい音を立てる。つるんとしたのど越しの「くずきり」¥1,400

 くずきりは、水をはった塗りの器に入っていて、目にも涼しい。キンキンに冷えているのに、驚くほどなめらかでコシもあり。黒糖蜜にくぐらせていただけば、こっくり甘く、それでいてみずみずしく、ひんやりとしたのど越しは暑い夏の日にもぴったりだ。

画像: くずきりを注文すると、まずはほうじ茶と共に菊寿糖が出される

くずきりを注文すると、まずはほうじ茶と共に菊寿糖が出される

画像: 上生菓子は3種類から選べる

上生菓子は3種類から選べる

 店内では、くずきりのほか、上生菓子をいただけ、夏の間は、青竹の筒に水ようかんを流し入れた「甘露竹」も楽しめる。
 私は昔から雑味がないあっさりとした甘さの「甘露竹」が大好物で、幼い時は、竹筒から直接チュルンと吸い込み、わずか数秒で食べきってしまい、母に「もっと味わって食べなさい」と、怒られた記憶が・・・。お店ではもちろんお皿にのせて供され、菓子切りでいただきます。

画像: 木材や土壁を多用した店内。化粧室までの通路も美しい

木材や土壁を多用した店内。化粧室までの通路も美しい

 高台寺店の内装は、「鍵善良房」の美術館「ZENBI」や「ZEN CAFE」を手がけた金澤富さん(IAT STUDIO/Architecs+)が担当。店内には所蔵の美術品も飾られ、本店とは趣が異なる瀟洒な空間も魅力だ。

 半個室を電話予約しておけば、待たずにスムースに入れ、暑い夏の日も快適。時間をムダにせず、しかもゆったりくつろげ、京都旅に行く際は、是非とも覚えておいてほしい一軒だ。

画像: 物販コーナーは、本店で販売している商品から点数をしぼってラインアップ

物販コーナーは、本店で販売している商品から点数をしぼってラインアップ

画像: 阿波和三盆糖で作ったなめらかな口溶けの干菓子、菊寿糖

阿波和三盆糖で作ったなめらかな口溶けの干菓子、菊寿糖

画像: 本店と定休日が異なり、本店が休みの月曜もくずきりを食べられる

本店と定休日が異なり、本店が休みの月曜もくずきりを食べられる

「鍵善良房 高台寺店」
住所:京都市東山区下河原通高台寺表門前上ル
営業時間:10:00〜17:30LO ※混み具合によって閉店が早まる場合もあり
定休日:水曜(祝日の場合は翌日休)
TEL. 075-525-0011
公式サイトはこちら

画像: 天野準子 生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント

天野準子
生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント

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