「ラデュレ」を皮切りに「オテル・ル・ムーリス」ほか、ミッシェル・トロワグロ率いる「オテル・ランカスター」と三つ星レストラン「ピエール・ガニェール」ではシェフパティシエを歴任。世界のグランシェフたちの信頼を得てガストロノミー界の檜舞台に登場し、現在はパリを拠点に、世界各地で活躍中の長江桂子さん。その精確で明瞭なレシピにはプロの間でも定評あり。家庭で楽しむお菓子においては、誰もがつくりやすく、砂糖やバターの量をギリギリまで減らし、味わい深く食べ心地は軽やかなレシピを提案している。基本のレシピをマスターしたら、風味や形を変えてさまざまに楽しめるアイデアも。これさえ覚えておけば、お菓子づくりには一生困らない。とっておきのレシピを丁寧にお伝えします。お菓子の時間の幸せを、あなたもどうぞ

RECIPE BY KEIKO NAGAE, PHOTOGRAPHS BY MANA LAURENT, TEXT BY MIKA KITAMURA

画像: 桃のコンポートを盛り、ヨーグルトのソルベvol.15のいちごのソルベを参照をスプーンでクネル形に整えて乗せる。桃のジュレとグラニテを添え、あれば穂じそを散らし、バーベナの葉や花を飾る

桃のコンポートを盛り、ヨーグルトのソルベvol.15のいちごのソルベを参照をスプーンでクネル形に整えて乗せる。桃のジュレとグラニテを添え、あれば穂じそを散らし、バーベナの葉や花を飾る

「コンポート(compote)」は、フランス語で「煮る」という意味。お菓子の世界では、コンポートとは果物のシロップ煮のことを指す。形を崩さず、フルーツの風味をしっかり残して仕上げる。
「日本のフルーツは甘くておいしいものが多いので、桃が持つ自然の糖度(甘み)を凝縮するように火を入れていきます」。
 鍋で煮ていく方法が一般的だが、長江さんは低温のオーブンでゆっくりと均一に火を入れ、濃縮していく。オーブンシートを上にのせることで、水分が蒸発しにくく、熱が均一に入るため、フルーツにじわじわと味が染み込むのだそう。桃以外のコンポートも全てこの方法でOK。
「今日の桃は甘くて香りがあるので、砂糖を少なめにして、130℃の低温で1時間、オーブンで加熱しました。様子を見ると、まだかためだったのでさらに30分、同じ温度で火を入れました。かたいフルーツ、例えば、皮ごとの柑橘類などは特に低温・長時間の火入れがおすすめです」

 レストランで作る桃のデザートにはレモンバーベナを加えることが多い、と長江さん。「桃とレモンバーベナは黄金の組み合わせ。レモンバーベナの爽やかであり華やかでもある香りが、桃の甘い風味を際立たせてくれます。他に、好みのハーブやスパイス、使い終わったバニラのさやなどを加えてもいいですね。ハーブならレモングラス、大葉、スパイスならカルダモンやクローヴなどと相性がよいでしょう」。

 桃は必ず皮ごと蒸し焼きに。皮の色と香りがシロップに溶け込んで、美しい色合いと豊かな香りが楽しめる。シロップはジュレやグラニテにしてコンポートに添えても、炭酸で割って楽しんでも。今回はジュレとグラニテ、ソルベを合わせた大人のデザートもご紹介する。

材料(作りやすい分量)

画像1: 材料(作りやすい分量)

桃 2〜3個(1個300gほど)
水 1ℓ
グラニュー糖 120g
レモン汁 10g
バーベナの葉 10~20g

■作り方

画像2: 材料(作りやすい分量)

1 桃は水でよく洗い、皮ごとナイフで半分に切り、両手でくるっと回しながら実を種からはずす。

画像3: 材料(作りやすい分量)

2 桃を櫛形に切り、耐熱容器に並べる。種も入れておく。

画像4: 材料(作りやすい分量)

3 バーベナを桃にのせる。水、グラニュー糖、レモン汁を鍋に入れて火にかけて沸かして、桃とバーベナに注ぐ。

画像5: 材料(作りやすい分量)

4 ベーキングシートをピッタリとおおうように上からかぶせ、120〜140℃のオーブンで1〜1時間半加熱する。

画像6: 材料(作りやすい分量)

5 仕上がりの目安は、桃がやわらかくなり、火がきちんと通っている状態。1時間ほど経ったら、一度オーブンから出して様子を見るとよい。オーブンから取り出したら、ラップをしてそのまま常温になるまで冷ます。こうすることで、香りを逃がさずにゆっくりと常温まで冷めていく。

画像7: 材料(作りやすい分量)

6 常温まで冷めたら冷蔵庫で最低一晩寝かせる。その際、桃とバーベナの風味をシロップに余さず移すため、皮と葉の水分をスプーンに押し当てて絞る。シロップごと保存容器に入れ、そのまま2週間ほど保存可能。皮、タネは、いただく際にとり除けばOK。

コンポートのシロップをアレンジ

【桃のジュレ】

材料(作りやすい分量)

画像1: コンポートのシロップをアレンジ

桃のシロップ 200g(今回、使用したものはルバーブの皮を加えて赤く仕上げたシロップ。桃だけの場合は薄いピンク色に)
板ゼラチン 3g

■作り方

1 板ゼラチンは水適量で戻し、水分を絞ったら、桃のシロップ適量を加えて、電子レンジ(600wで約30秒)にかけて溶かす。

画像2: コンポートのシロップをアレンジ

2 桃のシロップに1を加えてよく混ぜ、容器に入れて冷蔵庫で冷やす。

画像3: コンポートのシロップをアレンジ

3 冷やし固めた2に切れ目を入れる。

画像4: コンポートのシロップをアレンジ

4 スプーンで細かくする。

【桃のグラニテ】

材料(作りやすい分量)

桃のシロップ 適量(今回、使用したものはルバーブを加えて赤く仕上げたシロップ。実際はもっと薄いピンク色)

■作り方

画像5: コンポートのシロップをアレンジ

1 桃のシロップをザルなどで濾して、冷凍可能な容器に入れて冷凍庫で固める。

画像6: コンポートのシロップをアレンジ

2 固まったら、フォークでかき混ぜる。数回行うとよい。

長江桂子(ながえ・けいこ)
学習院大学を卒業後、ソルボンヌ大学に留学。ル・コルドン・ブルーでディプロマを取得。「ラデュレ」を経て、ロンドン「スケッチ」のオープニングスタッフに。2003年ヤニック・アレノ率いる「オテル・ムーリス」、2004年「オテル・ランカスター」シェフパティシエ、2008年パリ「ピエール・ガニェール」シェフパティシエを歴任。2012年、ガストロノミー界のコンサルティング会社「AROME」をフランスで設立。パリを拠点に、世界各地にて菓子ブランドや店舗の立ち上げ、商品開発、技術指導、監修などを手がける

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