BY YUKIKO HIRANO
晩秋が食べ頃のにんじん。一年を通じて食卓に並び、春と秋冬に旬を迎えるが、甘味が強くなるのはこれからの季節だ。「にんじんは甘い野菜ですが、調理の仕方によっては単調で魅力に欠ける味になってしまうこともあります。じっくり蒸してから揚げると、にんじんの凝縮した甘みとカリッとした衣で、ごちそう感のある料理になります。それに、沖縄の家庭料理“にんじんしりしり”を。甘味を足さないシンプルな味付けにして、ワインのおつまみになるように仕上げました」(平野さん)。カレーや肉じゃがのにんじんに食指が動かないという人は意外に多い。このレシピと、にんじんのために選んだワインを合わせれば、にんじんのこれまでのイメージが一変するかもしれない。
レシピ1:にんじんのフリット
とろりと甘く柔らかいにんじんにカリッとした衣。クミンやカレー粉をかけてマスカットベリーAを合わせたら、最強の組み合わせ。
<材料 2~3人分>
にんじん2本、片栗粉、揚げ油、塩、クミンシード、カレー粉各適量
<作り方>
1 にんじんは皮つきのまま4つ割にする。蒸し器で30分蒸す。この状態で保存しておいて、揚げるのは翌日以降でもよい。
2 片栗粉を全体にまぶす。
3 揚げ油を180度に熱し、衣が色づく程度まで揚げる。
4 塩、クミンシード、カレー粉などを添える。
レシピ2:アンチョビ風味のにんじんシリシリ
おなじみのキャロットラペよりも新鮮な味わい。シンプルな味つけでにんじんの味が引き立つ!
<材料 2人分>
にんじん1本(150g)、卵1個、アンチョビ2枚、にんにく1かけ、オリーブオイル大さじ1、塩、こしょう
<作り方>
1 にんじんはスライサーでおろす。アンチョビは粗みじん切りにする。にんにくは半分に切ってつぶす。卵を溶きほぐし、塩少々を加え混ぜる。
2 フライパンにオリーブオイル、にんにくを入れて熱し、香りが出てきたら、アンチョビを加えて炒める。
3 にんじんを加えて塩、こしょうをして炒める。1〜2分炒めたら溶き卵を加え、卵に火が入るまで炒める。
【今月のお酒セレクト:アグリ・クール 2023 Muscat Bailey A 】
2022年創業のワイナリー。山形県上山市産のマスカットベリーAを、元ソムリエの片寄広明氏が宮城のワイナリー「ファットリア アル フィオーレ」を間借りして醸造。ラベルは市川ともか。「にんじんには赤ワインを合わせたいのですが、柔らかく甘味のある赤がいい。マスカットベリーAの風味、酸味を合わせたらしっくりきました。アグリ・クールのワインは亜硫酸無添加の日本ぶどうによる味わい。日本の地域や文化のことを思わずにはいられない。そんなワインです」(平野さん)
ずっと身近に置きたい一冊──平野由希子さんの新著が発売!
平野さんが、これまでの書籍では伝えきれなかった料理の原点をまとめた新著『ma cuisine おいしさの引き出し方』が好評発売中。「春夏秋冬野菜のことを思い続けている」「肉料理はつくれば作るほど、上手くなる」といった心に響く言葉とともに、野菜料理、肉料理、揚げ物、魚料理など約70品がずらり。家庭のキッチンでとびきりおいしく作るコツ、さらに調理のしやすさも追求した極上のレシピは、時代の流行に左右されない一生もの。まるで食材とお料理へのラブレターのような、ずっと身近に置いておきたい一冊だ。
平野由希子
素材を生かしたシンプルでおいしい料理に定評のある料理家。書籍や雑誌、広告で活躍するかたわら飲食店のプロデュースや商品開発も手がける。日本ソムリエ協会認定ソムリエで、ワインと料理のペアリングが楽しめる料理教室も主宰。
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