BY CHIAKI YUMIOKA
“ナイロン”はプラダの伝統に欠かせない要素のひとつだ。既成概念に挑み、実用的な素材をファッションに昇華させることで、ラグジュアリーの新たな形と先進性を世に示してきた。そんなブランドの象徴ともいえる素材を刷新する、大胆な取り組みが注目を集めている。
この度スタートするのは、先駆的な新プロジェクト「Re-Nylon」。2021年末までにプラダ製品に使用するすべてのバージンナイロンを、再生ナイロン繊維 ECONYL® に転換することを最終目標とする取り組みだ。いわば、完全なるサステナビリティの実現に向けたアプローチ。そこには、社会への価値還元という考え方を日常に取り入れ、持続可能なバランスを目指す企業文化を育もうという同社の姿勢が反映されている。
ECONYL®はイタリアの繊維メーカー、アクアフィル社とのパートナーシップにより採用された新素材で、海から集められたプラスチック廃棄物、漁網、繊維廃棄物などを再利用して作られる。特殊なプロセスにより、糸は品質を損なうことなく、なんと無限にリサイクル可能。この新素材を1万トン製造するたびに7万バーレルの石油を節約し、二酸化炭素の環境排出量57,100トンの削減を実現する。さらに、石油を燃料とするナイロン製造が地球温暖化にもたらす影響を、ECONYL®を選択することにより80%も削減できる見込みだという。
プロジェクトの第一歩として、ブランドのアイコニックなバッグをECONYL®で再現したサステナブルなシリーズ、「プラダ Re-Nylon コレクション」が発売された。メンズとレディスを合わせ、ベルトバッグ、ショルダーバッグ、トートバッグ、ダッフルバッグ、2型のバックパックというクラシックな6型で構成。このコレクションのために独自に再解釈されたプラダのトライアングルロゴは、従来の直線的なサプライチェーンから循環的なサプライチェーンへの移行を表し、“再生”を強く印象づけるデザインだ。
水やエネルギーを使うのと同じように、ファッションを楽しむという行為もまた、地球にかかる負担に影響を及ぼし得るということを、私たちは忘れてしまいがちだ。プラダの本気の取り組みは、私たち消費者にとっても、自然に配慮した責任ある選択をおこない、これまでの価値基準を見直す良い機会をもたらすのではないだろうか。
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