空間に夢と物語を与えてくれる、トマス・アロンソがデザインしたエルメスの新作テーブルランプ「Coulisses(クリス)」。知られざるそのインスピレーションソースとは

BY NANCY HASS, PHOTOGRAPH BY FLORENT TANET, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI

 スペイン出身で45歳のインダストリアル・デザイナー、トマス・アロンソは、エルメスからテーブルランプの製作を依頼され、パリにあるこのメゾンのプライベートミュージアムを訪ねた。その名高いミュージアムは、フォーブル・サントノレ通りにあるエルメス本店の上階にあり、150年近くにわたって集められた2万点以上の品々を収蔵する。自社製品ではないそれらは、このメゾンの服や小物のインスピレーション源となってきたのである。

ロンドン・ハックニーにアトリエを構えるアロンソが、モンゴル帝国時代のアンティークの馬具の中から見つけたのは、折り目をつけて立体感を出すヴィクトリア朝のペーパージオラマのセットと、電灯が普及し始めた頃に作られた折り畳み式ランプだった。「コンパクトにして持ち運べること、少なくとも持ち運べそうに見えることは、エルメスの核となる概念だと気づいたのです」と彼は言う。「それはつまり『美しいものと一緒に世界中を旅することができる』ということです」。

画像: テーブルランプ<クリス>スクリーンT型¥701,000

テーブルランプ<クリス>スクリーンT型¥701,000

 彼の構想したコレクションは、実際には折り畳み式のものではない。それでもそのランプは、凧(たこ)のように軽やかで、繊細でありながら頑丈そうでもある。この一連のランプは手漉(す)きの和紙と竹でできており、3色の配色部分はT字型だったり1枚のパネルだったりと、それぞれ異なる形状をしている。このコレクションは「Coulisses(書き割り)」――舞台の背景として場面を演出する、絵の描かれたパネル状の大道具――と名づけられた。周囲をぐるりと囲む銅メッキ仕上げの輪が、幾何学的な複合体を生み出し、そこにLEDライトが点灯する。内側から燃えるような輝きを放つ、ミニマルなアートオブジェのような照明器具だ。

問い合わせ先
エルメスジャポン
TEL.03(3569)3300

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