BY KYOKO SEKINE
2001年5月の開業以来、「セルリアンタワー東急ホテル」が一貫していることとして、渋谷カルチャーの発信はもちろん、さまざまに進展を遂げる“東急ホテル文化”の発信拠点でありたいという願いが挙げられる。たとえば「“食の東急”として、食事や食文化の発信にはことに力を注いできました」と、ホテル関係者は胸を張る。星の数ほどある渋谷のレストランの中にあって、このホテル内には美食の都市・東京らしい話題のレストランが揃っているのだ。
その食についていえば、副総支配人でもあり総料理長を務める福田順彦(のぶひこ)氏の存在も大きい。開業以来、つねに総料理長としてホテル内の全料飲部門を牽引してきた責任者である。妥協を許さず、食材にこだわるレストラン&バーがそれぞれ人気を保持し続けているのも、福田氏率いるチームの力が功を奏しているからであろう。旬の食材が活かされるプロヴァンス料理店「クーカーニョ」、オーナーシェフ陳建一氏の個性豊かな中国料理店「szechwan restaurant陳」、大正時代から続く老舗日本料理店「金田中」(店舗と料亭の2カ所)、女性に大人気のイタリア料理店「オリ」など、バリエーションと活力に満ち、今年の年末も華やかな趣向が予定されている。
忘れもしない開業時のこと。「渋谷地区には、以前も今も、デラックスホテルと言われるホテルらしいホテルがない」と言われ続けた中で、このホテルのドア・オープンには大きな期待が寄せられた。つまり、「セルリアンタワー東急ホテル」の開業は、ホテル愛好家にとっても喜びはひとしおだったのだ。こうして待ち望まれた渋谷地区のラグジュアリーホテルは、流行に敏感な渋谷の若者からビジネスマン、感度の高い渋谷マダムまで、幅広い客層を魅了してきた。
そして17年が過ぎた今、ホテルはリニューアルを徐々に重ねながら、シンプル&モダンな空間をよりいっそう快適な空間へと創り上げている。エグゼクティブフロアの改装も2019年には全フロア完了見込みと、未来のホテルへと向かう新たなエネルギーがみなぎっている。
「シンプル&モダン」をコンセプトとする客室は19階以上、37階までの高層階にあり、エグゼクティブ フロアが32階以上を占める。とがり過ぎないデザインには落ち着きがあり、静かな滞在を望むゲストにとっては「都会にいるのを忘れるほど」との声が多くあり、肩の力を抜いてくつろげる空間である。シングルルームも28.4㎡からと余裕があり、使い勝手もいい。
個人的には、ジュニアスイート「富士‐FUJI‐」のベッドヘッドを飾る柔らかな富士のたたずまいがたまらない魅力だ。好天の日には、本物の勇壮な富士山が窓から望める部屋もある。さらに、エグゼクティブフロアの客室を選べば、モーニングブッフェ、アフタヌーンティ、カクテルなど、「エグゼクティブ ラウンジ」(2018年3月リニューアルオープン)を自由に楽しめる特典が用意されている。
特筆すべき点がもうひとつ。このホテルは、国際的規定に則ったコンシェルジュの会「レ・クレドール」(パリ本部)の正式メンバーでもある。さまざまな質問や、困ったときの解決法、道案内、店舗の予約まで、熟練のコンシェルジュが可能な限り応えてくれる。ロビーフロアでも、頼りがいのあるホテルサービスの要がコンシェルジュデスクに構え、きめの濃やかなサービスを提供している。私自身、世界中を旅しながら、各国でこの“黄金の鍵”バッヂをつけたコンシェルジュにどれほど助けられたことだろう。
セルリアンタワー東急ホテル(Cerulean Tower Tokyu Hotel)
住所:東京都渋谷区桜丘町26-1
電話: 03(3476)3000
客室:全408室
料金:¥57,024~(1泊1室2名の室料。消費税・宿泊税込)
公式サイト
せきね きょうこ
ホテルジャーナリスト。フランスで19世紀教会建築美術史を専攻した後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。在職中に住居として4ツ星ホテル生活を経験。以来、ホテルの表裏一体の面白さに魅了され、フリー仏語通訳を経て、94年からジャーナリズムの世界へ。「ホテルマン、環境問題、スパ」の3テーマを中心に、世界各国でホテル、リゾート、旅館、および関係者へのインタビューや取材にあたり、ホテル、スパなどの世界会議にも数多く招かれている。雑誌や新聞などで多数連載を持つかたわら、近年はビジネスホテルのプロデュースや旅館のアドバイザー、ホテルのコンサルタントなどにも活動の場を広げている
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