せきね きょうこ 連載
新・東京ホテル物語<Vol.33>

New Tokyo Hotel Story “THE STRINGS by INTERCONTINENTAL TOKYO”
ホテルジャーナリスト、せきね きょうこが独自の視点でおすすめの東京ホテルを案内。連載第33回目は、都心の貴重な“隠れ家ホテル”「ストリングスホテル東京インターコンチネンタル」

BY KYOKO SEKINE

 東京・品川駅といえば、東京駅や新宿駅、池袋駅に継ぐ重要な拠点である。隣の大崎駅と品川駅のあいだに山の手線の新駅「高輪ゲートウェイ」ができれば、相乗効果で品川駅もまた人の流れが変わることだろう。

 思い起こせば1991年、バブル崩壊の1年ほど前に始められた品川駅港南口の大規模再開発は、その後10年余りで、あっという間に港南口付近の景色を大きく変貌させた。前身の「ザ・ストリングスホテル東京」は、2003年5月20日、その港南口から地上2階のスカイウェイで直結した、隠れ家的でありながら都心のビジネス拠点となるホテルとして開業した。

画像: 品川駅に直結する「品川イーストワンタワー」と、港南口から延びるスカイウォーク。ビルの26~32階が「ストリングスホテル東京インターコンチネンタル」

品川駅に直結する「品川イーストワンタワー」と、港南口から延びるスカイウォーク。ビルの26~32階が「ストリングスホテル東京インターコンチネンタル」

 そのホテルは、ビジネスビル「品川イーストワンタワー」の26~32階部分を占め、当時、東京でトップクラスの大型アトリウムロビー(高さ27m)を持つホテルとして話題を呼んだ。その後2007年5月20日、現在のホテル名である「ストリングスホテル東京インターコンチネンタル」として、国際的なチェーンホテル名を冠にリブランドされた。

 品川駅周辺は、ほぼすべてのホテルが高輪口に集中し、港南口は企業や工場、住宅などが目立つ地域だった。華々しい駅ビルや高層ビルが建つなど誰も想像がつかなかっただけに、一流企業の戦士やキャリアウーマンが闊歩するスカイウォークの光景や、駅に直結した高級ホテルの誕生を、私を含め、多くのホテルファンがどれほど待ち焦がれたことだろう。

画像: 夜のアトリウムロビー。高さ27mの吹き抜けの下、ガラスブリッジを挟んで「バブルズバー」と「ザ・ダイニング ルーム」がある

夜のアトリウムロビー。高さ27mの吹き抜けの下、ガラスブリッジを挟んで「バブルズバー」と「ザ・ダイニング ルーム」がある

 コンセプトには開業以来「Home away from Home」(第二のわが家)を掲げ、今も変わらず都会の隠れ家的なホテルとして存在している。インターナショナルブランドを冠に持って早くも16年目となる今、どうやらリニューアルの大きな計画もそろそろ始まろうとしている。

 開放感のある110mの高さに、7フロア分の吹き抜け天井には、自然光が入るよう採光口が大きく設けられ、晴れた日の朝は太陽光がラウンジに反射して爽快な朝食タイムとなる。ラウンジには水場と竹が配され、東京の中心にいることさえ忘れそうな、落ち着いた雰囲気をたたえている。多くのゲストはこうした空間に、「ホッと肩の力が抜けて、まるでわが家に帰ってきたような気がする」と口を揃える。東京にはさまざまなジャンルのホテルが存在するが、インターナショナルの名を掲げながらも、「ストリングスホテル東京インターコンチネンタル」はジャパン・メイドのブティックホテルらしい趣が個性的といえるだろう。

画像: クラシックタイプの客室<24㎡> 上質な木材の使われた部屋。ビジネス利用に人気が高く、くつろぎと使い勝手の良さが好評

クラシックタイプの客室<24㎡>
上質な木材の使われた部屋。ビジネス利用に人気が高く、くつろぎと使い勝手の良さが好評

画像: 二面に窓がとられた明るい「The Suite」は70㎡の贅沢な客室。 リビングと寝室が別になっており、ゆったりと過ごせる。バスルームにはジャグジー完備。最大の部屋は、最上32階「ザ・ピークスイート」<104㎡>

二面に窓がとられた明るい「The Suite」は70㎡の贅沢な客室。
リビングと寝室が別になっており、ゆったりと過ごせる。バスルームにはジャグジー完備。最大の部屋は、最上32階「ザ・ピークスイート」<104㎡>

 部屋数は現在、全206室。室内は木の温もりある造りから、落ち着いた印象が感じられる。何よりユニークなのは、品川駅側の部屋の窓からは真下に駅のプラットホームが見え、忙しそうに行き来する人の姿も見えること。巨大な品川駅には、当然、新幹線の頻繁な往来風景を目にすることができる。騒音のない室内にいながらにして、「確かにここは東京の真ん中なのだ」と思う瞬間である。

画像: グローバルキュイジーヌを提供する「ザ・ダイニング ルーム」。 フレンチ出身のシェフが創りだすのは、農薬不使用の葉物野菜や産地直送の食材を使ってヘルシーに仕上げた料理。特に人気の「とうきょうサラダ」ランチコースでは、東西線高架下のクリーンルームで育てた安心安全な葉物野菜をふんだんに提供

グローバルキュイジーヌを提供する「ザ・ダイニング ルーム」。
フレンチ出身のシェフが創りだすのは、農薬不使用の葉物野菜や産地直送の食材を使ってヘルシーに仕上げた料理。特に人気の「とうきょうサラダ」ランチコースでは、東西線高架下のクリーンルームで育てた安心安全な葉物野菜をふんだんに提供

画像: 「ザ・ダイニング ルーム」の一部。右側は透明ガラスで、キッチンの料理人たちの様子が見える PHOTOGRAPHS: COURTESY OF THE STRINGS BY INTERCONTINENTAL TOKYO

「ザ・ダイニング ルーム」の一部。右側は透明ガラスで、キッチンの料理人たちの様子が見える
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF THE STRINGS BY INTERCONTINENTAL TOKYO

 レストランはロビー階に揃っている。開業以来、おいしいと評判の「チャイナシャドー」は、窓から外が見渡せる四川料理のレストラン。ほかに、水場と竹に囲まれ、26mものガラスブリッジを渡って入るダイニング&バー「ザ・ダイニングルーム」がある。ここで提供されるのは、フレンチベースのタパス料理だ。フレンチ出身のシェフが創りだすタパス料理やグローバルな料理は、斬新でバラエティに富み、目でも舌でも楽しめる。

 滞在した翌朝、朝食を摂りにガラスブリッジを歩いていると、「おはようございます」「グッドモーニング!」と、スタッフの元気な声がアトリウムに響いていた。来年にはリニューアルが施されるというが、都心の貴重な“隠れ家ホテル”の趣は消さないで欲しいと、勝手ながら祈っている。

ストリングスホテル東京インターコンチネンタル
(THE STRINGS by INTERCONTINENTAL TOKYO)

住所:東京都港区港南2ー16ー1 品川イーストワンタワー 26F~32F
電話: 03(5783)1111 
客室:全206室
料金:¥35,000~(1泊1室2名の室料。消費税・サービス料別)
公式サイト

せきね きょうこ
ホテルジャーナリスト。フランスで19世紀教会建築美術史を専攻した後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。在職中に住居として4ツ星ホテル生活を経験。以来、ホテルの表裏一体の面白さに魅了され、フリー仏語通訳を経て、94年からジャーナリズムの世界へ。「ホテルマン、環境問題、スパ」の3テーマを中心に、世界各国でホテル、リゾート、旅館、および関係者へのインタビューや取材にあたり、ホテル、スパなどの世界会議にも数多く招かれている。雑誌や新聞などで多数連載を持つかたわら、近年はビジネスホテルのプロデュースや旅館のアドバイザー、ホテルのコンサルタントなどにも活動の場を広げている
www.kyokosekine.com

T JAPAN LINE@友だち募集中!
おすすめ情報をお届け

友だち追加
 

LATEST

This article is a sponsored article by
''.