2018年10月、フランス・プロヴァンス地方のアルルに完成した「ホテル・アルラタン」。現代アーティストのホルヘ・パルドがデザインしたこのホテルには、2万個近くのモザイクタイルが使われている

BY GISELA WILLIAMS, PHOTOGRAPHS BY CÉLINE CLANET, TRANSLATED BY IZUMI SAITO

 キューバ生まれの現代アーティスト、ホルヘ・パルドの作品は、従来の“ホワイト・キューブ”(美術作品の展示空間)という境界を超えて存在するだけでなく、その作品において、空間や住環境、私たちの居場所といった観念について問いかけてくる。1998年に完成した彼の代表作のひとつに、ロサンゼルス現代美術館の展示のために建てられた家がある。

 パルドは美術館から離れたサイプレスパークの近くに平屋を設計し、室内を自身が制作したオブジェで埋め尽くした。そして展示のあと、その家で暮らし始めた。「僕は基本的に、自分が住むつもりで建築物をつくるんだ」と言う彼は、今はメキシコ・メリダ市にある別の建物に移り住んでいる。アートとも機能的な住居ともとれるその作品「ジャングルの鳥かご」は、手描きの壁画と卵形のペンダントライトで彩られている。

 2018年10月に、フランス・プロヴァンス地方のアルルにオープンした「ホテル・アルラタン」では、宿泊客はパルドと同じように、彼のデザインした空間に住むことができる。アルルといえば、かつてフィンセント・ファン・ゴッホの制作にインスピレーションを与えた地だ(最近では、グッチの2019リゾート・コレクションの会場にもなった)。

ホテルのオーナー、スイス人起業家で芸術家のパトロンでもあるマヤ・ホフマンは、アルル郊外のカマルグで育ち、アルルの再生計画にも携わっている。これまでにも、フランク・ゲーリーのデザインで2018年に完成した8万平方メートルの文化施設「ルマ・アルル」や、インディア・マダヴィを起用して修道院を改修した19室の「ホテル・ドゥ・ク ロワトル」を手がけてきた。

画像: パルドの絵が描かれたドア。ランゲン美術館にある日本の絵巻物がイメージソースだ

パルドの絵が描かれたドア。ランゲン美術館にある日本の絵巻物がイメージソースだ

新作となるこのホテルは15世紀の大邸宅の中にあり、ローヌ川は目と鼻の先だ。当初からホフマンは、この仕事にはパルドが必要だと考えていた。パルドとは以前一緒に仕事をしたことがあり、この暗く寂れたホテルの客室を、彼女が求める“光と喜び”で満たすことができるのは、彼しかいないと。

 このプロジェクトのため、パルドはメリダにある自身の仕事場を3割ほど拡張し(マットレスとロビーのいくつかの家具を除き、ほぼすべてのホテルの内装品がここで製作・保管された)、ユカタンタイル(メキシコのユカタンスタイルの建築に特徴的なモザイクタイル)の工場も再稼働させた。古代ローマの石柱や陽の降り注ぐ中庭のあるこのホテルをなにより際立たせているのは、無数の光り輝くユカタンタイルだろう。

画像: プライベートガーデンにあるタイル貼りのプールはベルギーのランドスケープデザイナー、バス・スメッツによるデザイン

プライベートガーデンにあるタイル貼りのプールはベルギーのランドスケープデザイナー、バス・スメッツによるデザイン

パルドは4階建てのこのホテルに、2万個近くのタイルを使った。タンジェリンやサンフラワーイエロー、アークティックブルーといった鮮やかな18色のタイルを織り交ぜた抽象的なモザイク柄で、床と壁をすべて覆ったのだ。ロビー階の光沢あるタイルは、むき出しの石と並んでコントラストを生み、天井からつりさげられた、クラゲのような形にレーザーカットされたプラスチックの照明がそれをさらに強調している。

 しかしホテル内に100枚以上あるドアだけは、タイルを貼る代わりにすべてパルドの絵が描かれている。彼は、日本に影響を受けたファン・ゴッホの作品や、「自分のiPhoneにあった写真を無作為に」 参照してこれらの絵を描いたという。まずデジタルでランダムに加工された画像をプロジェクターでドアに映し出し、その上に即興で装飾を加えながらドローイングを完成させていった。パルドは言う。「コンピュータで絵を描くのも嫌いじゃない。自分が作品を制御できる限りはね。イメージを編集するのは、あくまで僕なんだ」

Hotel d' Arlatan(ホテル・アルラタン)

住所:20, rue du Sauvage 13200 Arles, France
電話:+33-(0)4-9093-5666
公式サイト

 

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