知られざる遺跡、優れた職人による伝統工芸品、革新的な食文化。南米ぺルーの「聖なる谷」には、マチュピチュを超える感動がある

BY GISELA WILLIAMS, PHOTOGRAPHS BY BEN SKLAR, TRANSLATED BY FUJIKO OKAMOTO

 ペルー南東の都市クスコ郊外の、雪を頂くアンデス山脈のふもとに「聖なる谷(Peru’s Sacred Valley)」がある。東西約97kmにわたるこの肥沃な地域には、考古学的価値の高い遺跡が数多く存在する。東端のピサック遺跡にはピンク色の花崗岩を積み上げた古代太陽神を祀る神殿があり、西端には"天空の要塞"として名高い15世紀のインカ帝国の遺跡、マチュピチュがある。

 今から千年以上も前、「聖なる谷」の斜面に段々畑を開墾し、自然の灌漑システムを利用してトウモロコシやジャガイモを栽培したのは、インカ以前に存在したワリ族だ。13世紀にこの階段状の土地を領有したインカ族は、膨大なインフラや約4万kmにもおよぶ道路網を整備し、数千もの建造物を造り、広大な帝国を築きあげた。だが、そのインカ帝国も1532年にスペインに征服されて滅亡した。

画像: ラマイ地区からピサック村に通じる草深い山道は、ハイキングに最適

ラマイ地区からピサック村に通じる草深い山道は、ハイキングに最適

 今日、最も人気の高い観光スポットは何といってもマチュピチュだが、「聖なる谷」の魅力はマチュピチュだけにとどまらない。ここ数年、いくつかのNGOが地元の伝統織物のワークショップを開催するなど、地域の開発プロジェクトの基盤づくりを支援している。同時に、リマからやってきたクリエイティブな起業家たちが、クスコ市街やウルバンバ、ピサックといった周辺の趣ある古風な村で、地元の食材(この地域だけで、ジャガイモはなんと約4,000種類もある)を提供するレストランや、色鮮やかなアンデスの織物を扱うショップを続々とオープンさせた。地ビール醸造所「セルヴェチェリア・デル・ヴァジェ・サグラド」では、アンデスのドラマティックな山並みを眺めながらホップのきいた地ビールを楽しめる。翌朝、再び登山道を歩きつつ、石の神秘に思いをはせるのも一興だ。

<STAY>

「パラシオ・マンコ・カパック」
クスコのサン・クリストバルの丘の急な斜面を登ると、鬱蒼とした森の中に、忽然と19世紀の邸宅を改装したエレガントなホテルが現れる。12の客室にはコロニアル調のアンティーク家具(金色のヘッドボード、彫刻を施したキャビネット)が置かれ、モダンな内装の朝食用の部屋は、床から天井まである大きな窓からクスコ市街の歴史的地区が一望できる。活気のあるアルマス広場には、16世紀にインカ皇帝の宮殿跡に建てられた大聖堂がどっしりとそびえ、その近くには、サクサイワマンと呼ばれる城塞と寺院を兼ねた堂々たる建造物の遺跡がある。ここは、1536年にインカの戦士たちがスペイン軍に最後の抵抗を挑んだ場所だ。
ananay-hotels.com

「ベルモンド・ホテル・リオ・サグラド」
広大な地域に緑をもたらすアマゾン川の源流ウルバンバ川。「聖なる谷」に沿って力強く流れるこの川のほとりにある数軒のホテルのなかでも、居心地抜群の宿だ。テラコッタタイルを使った8棟の低層の建物が、柳の木や「天使のトランペット」と呼ばれるキダチチョウセンアサガオに覆われた丘に溶け込むように建っている。トウモロコシとキヌアのタマーレ(乾燥したトウモロコシの粉とラードを練った生地をトウモロコシの皮に包んで蒸したもの)が絶品のレストランでは、前の芝生でラマが草を食んでいるのも見られる。1月から4月には、豪華列車「ベルモンド・ハイラム・ビンガム」号がクスコから運行。1920年代風の車両には木製の装飾が施され、フォーマルな雰囲気の食堂車も備えたこの列車は、途中何カ所か停車しながらマチュピチュへと向かう。
belmond.com

画像: (左)日がな一日、草を食んで過ごすラマは、「ベルモンド・ホテル・リオ・サグラド」の宿泊客にもかわいがられている (右)沿道に花が植えられた、「ベルモンド・ホテル・リオ・サグラド」の客室に通じる小道

(左)日がな一日、草を食んで過ごすラマは、「ベルモンド・ホテル・リオ・サグラド」の宿泊客にもかわいがられている
(右)沿道に花が植えられた、「ベルモンド・ホテル・リオ・サグラド」の客室に通じる小道

「エクスプローラ・ヴァジェ・サグラド」
エクスプローラ・グループとしてはチリ国外初となる50室のホテルは、2016年の完成までに14年の歳月を費やした。ウルキージョス村に近い緑豊かなくぼ地に、木をふんだんに使った横長の5棟の建物が、横板を脚柱で支えた通路でつながっている。植民地時代の建物を復元した1棟には、フレスコ画の装飾を施したスパもある。ホテルの建設にあたって、職人たちは半壊したインカ時代の段々畑を掘り起こし、さらに2年をかけて復元した。宿泊客にはベテランのガイドが付き添ってくれるので、あまり知られていないプルママルカの遺跡や、先住民が暮らす標高3,800mのパタカンチャなど遠く離れた村へのトレッキングツアーにも安心して参加することができる。
www.explora.com

画像: 「エクスプローラ・ヴァジェ・サグラド」のスパのウェイティングエリア

「エクスプローラ・ヴァジェ・サグラド」のスパのウェイティングエリア

画像: 日干しレンガの壁で囲まれた「エクスプローラ・ヴァジェ・サグラド」のプール

日干しレンガの壁で囲まれた「エクスプローラ・ヴァジェ・サグラド」のプール

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