TEXT AND PHOTOGRAPHS BY YUKARI KOMAKI
ショブバザールという名の市場に着く。ここは、サマルカンドの台所。さまざまな食材が豊富に並び、活気にあふれている。特にナッツやフルーツ、そしてハーブの売り場の豊かさ、充実ぶりには目を奪われる。フルーツはザクロにレモン、メロン、スイカ、リンゴなどがうず高く積まれている。メロンをはじめ、食べてみるとじつに味が濃くてみずみずしく、ジューシーだ。ハーブは種類も量も豊富だ。ウズベキスタンはシルクロードのほぼ真ん中に位置しており、その食文化にはロシア、モンゴル、トルコ、中国などの影響が見られる。ロシア料理のボルシチ、モンゴルにもあるマンティ(日本なら餃子)、トルコ料理のシャシュリク(肉の串焼き)、中国の麺料理……。イスラム圏なので豚は食べないが、ラムや牛、チキンなどは多種多様なメニューに使われている。

バザール(市場)では、色鮮やかなフルーツが目を楽しませてくれる。この地ではザクロをサラダなどにしてよく食す

レモンも豊富で、ディスプレイもなかなかのもの
昼食はタシケント通り沿いのビビハニムモスクの隣りのチャイハナ(カフェ、喫茶店)でスープをいただく。サマルカンドの気候は一年の中で寒暖の差が大きく、冬の時期は非常に寒い。だからなのか、スープの種類が豊富だ。滋味深く消化によく、身体が温まる。旅の途中、胃が疲れたときなど、食事は軽くすませたい場合もある。そんなときにスープとパン、それにお茶だけでもOKのチャイハナの存在はありがたい。朝食もとることができるので、ひとり旅の強い味方だ。

「ショールヴァ」という、肉や野菜がたくさん入った具だくさんスープ。パン、スープ、お茶をいただいて、約300円くらい。サマルカンド特有のスザニ(刺繍を施した布)をテーブルクロスやデコレーションに使用していて、食器も素朴で愛らしい
ウズベキスタン人は日本人と同じく、よくお茶を飲む。イスラム系の人たちはアルコールを飲まないので、毎日お茶の時間を楽しんでいる。お茶には主にグリーンティー(コク・チャイ)とブラックティー(カラ・チャイ)の2種類がある。日本の緑茶や紅茶とは少々風味が異なり、ほうじ茶のようなマイルドな味わい。ポット(チョイナク)一杯に入ったお茶を、ピヨレというカップに注いで戻すという動作を3回繰り返してから、いただく。台湾のお茶のいただき方を思い出したが、こちらでは茶芸などといったものではなく、どんな食堂でもこのやり方。お茶をおいしく飲むための気軽なプロセスのようなものらしい。
はるか昔、シルクロードは東洋と西洋を結ぶ交易の道だった。そのシルクロードの中間地点にあるオアシスとして発展したウズベキスタン。見事なイスラム文化の美に目をみはりつつ、さまざまな時代のさまざまな国の文化が融合しながら息づいているのを垣間見るのもおもしろい。ときに脳内タイムスリップしながら、ウズベキスタンの旅は続く――。