せきね きょうこ 連載
新・東京ホテル物語<Vol.38>

New Tokyo Hotel Story “ANA INTERCONTINENTAL TOKYO”
ホテルジャーナリスト、せきね きょうこが独自の視点でおすすめの東京ホテルを案内。連載第38回目は、都心の変遷を見つめながら進化を重ねる「ANAインターコンチネンタルホテル東京」

BY KYOKO SEKINE

 東京の中心地、赤坂と六本木を結ぶインテリジェント・シティ「アークヒルズ」にひときわ高くそびえ立つ「ANAインターコンチネンタルホテル東京」は、2007年3月末まで「東京全日空ホテル」として冠を掲げていた。オープンは1986年6月7日、まさに日本がバブル期に入った頃である。

画像: 赤坂の華やかなインテリジェント・シティ「ARK HILLS」内にそびえるホテル外観

赤坂の華やかなインテリジェント・シティ「ARK HILLS」内にそびえるホテル外観

 若い年代の人々には、バブルと言ったところでピンとこないかもしれない。昭和のはるか昔の時代と思うだろうが、今考えると、あの51カ月はまるで日本中が狂騒曲のような様相を呈し、とりわけ赤坂・六本木地区は夜の街として熱狂の渦といった様子でにぎわっていた。「東京全日空ホテル」はそんな華やかな時代を経たのち、2007年4月1日、世界的なホテルグループ、インターコンチネンタルとの契約により「ANAインターコンチネンタルホテル東京」としてホテル名を刷新。以来、「それぞれのブランドの強みを融合」(ホテルスタッフ談)させた共同ブランドのフラッグシップホテルとして生まれ変わったのである。

 地上37階建て、客室数844室。特徴的なアトリウムロビーは2,100㎡もの広さを誇る。ホテル周辺には各国大使館や外資系企業、テレビ局、一流企業の入るビルが並び、利用者の華やかな雰囲気も加わり、活気あふれるロビーラウンジには人が途絶えることがない。大きなホテルを苦手とする私はこうした空間では落ちつかないことが多いのだが、不思議なことに、このホテルでは開業以来、その種の緊張感や苦手意識を感じたことがない。まさに“ザッツ・ホテル”といったゆとりある雰囲気は、30年以上の歴史を刻んできたホテルが醸し出す余裕であろう。

画像: キングサイズのベッドと広々としたリビングを備えた「クラブインターコンチネンタル ジュニアスイート 月」<52㎡>。クラブインターコンチネンタルルームは32階から35階に位置する

キングサイズのベッドと広々としたリビングを備えた「クラブインターコンチネンタル ジュニアスイート 月」<52㎡>。クラブインターコンチネンタルルームは32階から35階に位置する

 さて、今回改めて館内をくまなく拝見し見えてきたのは、長く知っているつもりのホテルでも、進化を続けるホテルには知らないことが山ほどあるということだ。今回、初めて訪れた「クラブインターコンチネンタルラウンジ」(2019年6月初旬にリニューアル完成予定)のゴージャスな雰囲気には息を呑み、またその大きさにも驚かされた。客室階の最上35階に位置し、広さは600㎡を占める。クラブインターコンチネンタルルーム&スイートに滞在するゲスト専用の贅沢なラウンジだ。

画像: 35階に位置する国内最大級の宿泊客専用ラウンジ「クラブインターコンチネンタルラウンジ」。2つのレセプションデスクで専任のスタッフが出迎える

35階に位置する国内最大級の宿泊客専用ラウンジ「クラブインターコンチネンタルラウンジ」。2つのレセプションデスクで専任のスタッフが出迎える

画像: ビルの2階に位置するメインエントランスを入ると、高さ14mの活気あふれるアトリウムラウンジが広がる

ビルの2階に位置するメインエントランスを入ると、高さ14mの活気あふれるアトリウムラウンジが広がる

 ここには専任スタッフが常駐し、朝食はブッフェではなくオーダーテイク。午後のアフタヌーンティー、夕方のカクテル、ナイトキャップまで自由に過ごせる優雅なスペースである。さらに、この広いラウンジはライブラリーやダイニング、ミーティングなどいくつかのゾーンに分かれ、それぞれが快適に過ごせるような配慮がなされている。ほかのフロア滞在のゲストでも、ラウンジの一日使用料(宿泊料+16,000円~ ※ 変動あり)を払えば利用できるというのがうれしい。きっと、この料金を支払っても余りある快適な利用ができるはずだ。

画像: アトリウムラウンジで提供される季節のアフタヌーンティーは大人気。写真は抹茶シリーズ

アトリウムラウンジで提供される季節のアフタヌーンティーは大人気。写真は抹茶シリーズ

画像: ちょうど今の時期は、大人気で人が絶えないイチゴ満載の「初恋のストロベリー・アフタヌーンティー」も開催中(3月31日(日)まで)

ちょうど今の時期は、大人気で人が絶えないイチゴ満載の「初恋のストロベリー・アフタヌーンティー」も開催中(3月31日(日)まで)

 もう一つの驚きは、館内にある12カ所ものレストランだ。今回は、伝統の和食日本料理「雲海」で食事を謳歌した。季節感を先取りする濃やかな配慮など、和食の正統をしっかり守る吉安料理長は、「会席の真髄を壊したくないのです」と語る。四季の移ろいを感じる日本庭園を観ながら食す、美しくおいしい伝統料理に、日本人として誇らしささえ感じずにはいられない。

画像: 日本料理「雲海」で提供される春の料理(イメージ)

日本料理「雲海」で提供される春の料理(イメージ)

 また、フレンチの巨匠ピエール・ガニェールがプロデュースする「ピエール・ガニェール」も高い評価を受けているほか、広東料理で人気の「花梨」や、毎日行列のできるランチブッフェ「カスケイド カフェ」など、食に関して妥協のないレストランが肩を並べ、選択に困るほどの勢いがある。

画像: クラブラウンジでのみ味わえる、洗練されたピエール・ガニェールの朝食は数量限定で提供される PHOTOGRAPHS: COURTESY OF ANA INTERCONTINENTAL TOKYO

クラブラウンジでのみ味わえる、洗練されたピエール・ガニェールの朝食は数量限定で提供される
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF ANA INTERCONTINENTAL TOKYO

 大型ホテルならではの充実した施設や客室、ラウンジなど、開業以来すでに33年が経とうとするこのホテルが、そのクオリティを着実に充実させてきたことに感服する。コンセプトに「エッセンス・オブ・東京」を掲げ、東京の変遷を見つめてきた「ANAインターコンチネンタルホテル東京」には、都会型ホテルとしてすでに老舗の領域に入らんとする安心感が漂っている。

ANAインターコンチネンタルホテル東京(ANA INTERCONTINENTAL TOKYO)
住所:東京都港区赤坂1-12-33 
電話: 03(3505)1111 
客室数:844室
料金:¥33,000~(1泊1室2名の室料。消費税・サービス料込)
公式サイト

せきね きょうこ
ホテルジャーナリスト。フランスで19世紀教会建築美術史を専攻した後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。在職中に住居として4ツ星ホテル生活を経験。以来、ホテルの表裏一体の面白さに魅了され、フリー仏語通訳を経て、94年からジャーナリズムの世界へ。「ホテルマン、環境問題、スパ」の3テーマを中心に、世界各国でホテル、リゾート、旅館、および関係者へのインタビューや取材にあたり、ホテル、スパなどの世界会議にも数多く招かれている。雑誌や新聞などで多数連載を持つかたわら、近年はビジネスホテルのプロデュースや旅館のアドバイザー、ホテルのコンサルタントなどにも活動の場を広げている
www.kyokosekine.com

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