サスティナビリティと豊かな暮らしは共存するのか。 環境保護と経済発展を両立させるカギはあるのか。そもそも人の求める幸福とは何か? パロ、ティンプー、プナカ、3つの谷を巡りながら幸せのありかについて考える

BY TOSHIE TANAKA, PHOTOGRAPHS BY TAISHI HIROKAWA

 パロから車に揺られること1時間半。政治と経済の中心である首都ティンプーに到着した。経済の中心というと、大企業の高層ビルが建ち並ぶ光景が思い浮かぶが、ここでは伝統建築の意匠に準じた建物が並んでいる。通りを行き交う人たちも民族衣装姿だ。公の場では民族衣装の着用が定められていて、学校の制服、企業や役所の就業服、ツアーガイドたちも男性は「ゴ」、女性は「キラ」という装束に身を包んでいる。世界中で均一化しがちな現代都市の姿とは異なる、ブータン独特の情緒ある風景を目抜き通りで眺めることができる。

 ティンプーには国王の執務室や住まいもあるが、ブータンを“幸せの国”として発展させるために国王の果たした役割は大きい。2011年、新婚の現国王夫妻が来日し、話題を呼んだことは記憶に新しいが、現国王の祖父にあたる第3代国王は国連への加盟を実現するなど改革を進め、ブータン近代化の父と呼ばれている。死後、名君を記念し建てられたメモリアル・チョルテンという仏塔には、今もひっきりなしに参拝者が訪れる。

画像: 木枠に飾り絵で装飾を施したブースは、ブータンで唯一の信号。信号機はない

木枠に飾り絵で装飾を施したブースは、ブータンで唯一の信号。信号機はない

画像: (写真左)民族衣装にもトレンドがあり、女性の「キラ」は伝統的なものは横縞の織りが多いが、今はさまざまなテキスタイルが用いられている (写真右)メモリアル・チョルテンは首都の一等地に立つ。今も多くの人が参拝する

(写真左)民族衣装にもトレンドがあり、女性の「キラ」は伝統的なものは横縞の織りが多いが、今はさまざまなテキスタイルが用いられている
(写真右)メモリアル・チョルテンは首都の一等地に立つ。今も多くの人が参拝する

 ブータンでは首都に限らず、あちこちに国王や夫妻の写真が飾られていて、人々に敬われているのがよくわかる。国王は、ナショナルデーや誕生日の式典など、折にふれて国民へ力強いメッセージを発信。2008年に行われた戴冠式で「私が在位している間、国王として、あなた方を統治することは決してありません。親としてあなた方を守り、兄弟のようにあなた方の世話をし、息子としてあなた方に仕えるつもりです」と演説し、今でも人々の心に強く刻み込まれている。現国王にはこのような名言が多いといわれるが、父である第4代国王ゆずりでもある。ブータン国王はスピーチライターを据えず、自分の言葉で人々に語りかける。そんな王を誇りに思う人はとても多いのだ。

画像: (写真左)いたるところに国王夫妻や先代国王の写真が飾られており国民との距離の近さがうかがえる (写真右)ティンプーの目抜き通りを行く人々。男性は「ゴ」という民族衣装を着用。ビジネススーツのようなシックな色味が若い層には好まれている

(写真左)いたるところに国王夫妻や先代国王の写真が飾られており国民との距離の近さがうかがえる
(写真右)ティンプーの目抜き通りを行く人々。男性は「ゴ」という民族衣装を着用。ビジネススーツのようなシックな色味が若い層には好まれている

 国王と王妃はまた、サスティナビリティの実現に力を注ぎ、熱心に活動している。ブータンではゼロ・ウェイストアワー(廃棄ゼロの時間)や歩行者の日(自家用車などの使用を控え石油の消費を抑える日)を提案し、国民の環境問題への意識と理解を高める施策を講じるが、国王も自転車でティンプーの町を走ったり、王妃がゴミ拾いを行ったりと、自ら環境問題に取り組む姿を見せている。2011年のふたりの結婚の儀のあとのパレードも徒歩で行われた。プナカからティンプーまでの長い道のり、ふたりは手に手をとって山道を歩き、沿道の人々と心から触れ合い、祝福されながら進んでいったのだそうだ。

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