サスティナビリティと豊かな暮らしは共存するのか。 環境保護と経済発展を両立させるカギはあるのか。そもそも人の求める幸福とは何か? パロ、ティンプー、プナカ、3つの谷を巡りながら幸せのありかについて考える

BY TOSHIE TANAKA, PHOTOGRAPHS BY TAISHI HIROKAWA

 ブータンの主要産業のひとつは水力発電である。ヒマラヤの麓という地形を生かし、高低差のある河川を利用して電気を起こし、インドにも販売している。それはクリーンエネルギー発電でもあるため、CO2排出量取引制度(※あらかじめ国などの排出主体間で排出する権利を決めて割り振り、権利を超過して排出する主体と下回る主体との間で、権利の売買をすることで、全体の排出量を抑制しようとする制度)を用いて、外貨の獲得もしている。地の利や自然の恵みを最大限に生かしながら、環境にダメージの少ない、まさにサスティナブルな開発を推進しているのだ。

 シックスセンシズは1995年に誕生して以来、自然環境そして地域社会との共生を理念に掲げ、企業の社会的責任を果たすよう努めながら、リゾートホテルを開発してきた。環境保全を念頭においた仕組みを構築し、経済的発展の道も探る点はブータンとも通じるところがある。

画像: シックスセンシズ ブータンではペットボトルのゴミを出さないように飲料水を購入せず、各ロッジに設けられた浄水システムで濾過された水を使用

シックスセンシズ ブータンではペットボトルのゴミを出さないように飲料水を購入せず、各ロッジに設けられた浄水システムで濾過された水を使用

画像: ボトルに詰められ客室に設置するほか、ゲストには水筒が配られ、旅のあいだの相棒となる。この水筒は、リゾートのスタッフも使用している

ボトルに詰められ客室に設置するほか、ゲストには水筒が配られ、旅のあいだの相棒となる。この水筒は、リゾートのスタッフも使用している

 シックスセンシズ ブータンでも、プラスチックをはじめゴミをいかに出さないかという点に最大限の努力をはらっている。リゾートの各ロッジには、大型浄水器が完備されていて、その水を再利用可能な瓶に詰め、客室やレストランなどで使用している。ゲストが飲んだワインの空きボトルは植木鉢などにアップサイクルされる。環境問題に取り組むNGOの指導を受けながらコンポストにより生ゴミを肥料に変えて、敷地内にあるオーガニックガーデンで使用するなど、環境に配慮した再生システムを構築している。「サスティナビリティを掲げるシックスセンシズと、環境保護を4つの柱のひとつに据えるGNHには相通じる理念が少なくないのです」とシックスセンシズ ブータンのサスティナビリティ・コーディネーター、イェシ・チョデンさんは言う。彼女は大学でもサスティナビリティを学び、シックスセンシズの理念と母国のGNHに共通点を感じ、現在の仕事に就いたそうだ。

「サスティナビリティに関する取り組みは、リゾートの外でも行っています。“プランキング”、プラスチックとハイキングを組み合わせた造語ですが、ハイキングをしながらゴミを拾う活動を、毎月すべてのロッジのスタッフがしています。リサイクル施設が完備されていないブータンでは、ゴミ処理は大きな問題です。拾ったゴミを5つに分別したあと、ネパールやインドで再生させることで、不用品を極力なくす努力をしています」。スパで扱う日焼け止めは、海がない国であるにもかかわらず、サンゴにダメージを与えないためのコーラルフリーを採択。定期的に植樹も行っており、希望者は誰でも参加できるという。

「活動は、今の自分たちに直接関係のあることばかりではありません。でも、未来の社会にはとても大切なことだと思います。そんな社会貢献を続けていけば、次世代に対してよい影響を与えられるのではないでしょうか」

画像: 空が水面に映し出されるさまが見事なシックスセンシズ ブータンのティンプー・ロッジは「Palace in the Sky(空中宮廷)」と名付けられている。ダイナミックなランドスケープデザインにより、刻々と変わる空の風景が楽しめる

空が水面に映し出されるさまが見事なシックスセンシズ ブータンのティンプー・ロッジは「Palace in the Sky(空中宮廷)」と名付けられている。ダイナミックなランドスケープデザインにより、刻々と変わる空の風景が楽しめる

画像: 客室からはティンプーの谷を一望できる。天気がよければ、対面には全長約50メートルの大仏が

客室からはティンプーの谷を一望できる。天気がよければ、対面には全長約50メートルの大仏が

 積極的に環境問題に寄与しようとするシックスセンシズであるが、ビジネスである以上、利益という観点を無視することはできないはずだ。昨今、生産性という言葉が日本で大きく取り上げられることが多いが、コストパフォーマンスや合理性を鑑みると、シックスセンシズの歩む道は、時間と手間がかかり非効率的ということになる。しかし、それをあえて行うことが、ラグジュアリーリゾート界で大きな評価を得る理由にもなっている。多くの富裕層がシックスセンシズの理念に共感し、訪れる。その結果として、新しいシックスセンシズの誕生が今後も世界各地に予定されている。

 イェシさんに、ビジネス的視点では取り入れにくいシステムを導入することについて、どう思うかと尋ねてみた。「サスティナビリティが将来にいかに重要であるか。それを理解するためには教育も大切だと思います。ブータンの大学では、国王が毎年、卒業式でスピーチをしてくださいます。次世代のリーダーとして、私たちの真の価値とは何かを考える機会を与えてくれるのです。今さえよければいい、自分さえよければいいのではなく、未来の社会のために個人として何をすべきか。陛下が道を照らしてくださるのです」

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