サスティナビリティと豊かな暮らしは共存するのか。 環境保護と経済発展を両立させるカギはあるのか。そもそも人の求める幸福とは何か? パロ、ティンプー、プナカ、3つの谷を巡りながら幸せのありかについて考える

BY TOSHIE TANAKA, PHOTOGRAPHS BY TAISHI HIROKAWA

 旅も終盤となったが、ブータンでの道程はほとんどが山道。それはヒマラヤ山脈の麓にありながら、国内にトンネルがないことに起因する。チベット仏教の信仰国である一方で、自然信仰も持ち合わせており、山は神聖な存在だ。「山を傷つけるぐらいなら、数時間よけいにかかってもトンネルがない道を選ぶ」というのだ。旅人は、針葉樹から亜熱帯の植物まで、標高によって異なる実に豊かで多様な景色で目を楽しませながら、旅路を進むことになる。

画像: かつて「冬の都」であったプナカ。ふたつの川が合流する中州に立つのはブータンで最も美しい建築物ともいわれるプナカ・ゾン。2011年にはここで現国王のロイヤル・ウェディングも行われた ※ゾンは城塞でもあり、行政機関、僧院としての役割も果たす場

かつて「冬の都」であったプナカ。ふたつの川が合流する中州に立つのはブータンで最も美しい建築物ともいわれるプナカ・ゾン。2011年にはここで現国王のロイヤル・ウェディングも行われた
※ゾンは城塞でもあり、行政機関、僧院としての役割も果たす場

 最後の目的地プナカは、標高2,000メートルを超えるパロやティンプーとはちがって、1,300メートルほど。冬でも温暖な避寒地で、かつては冬の間、ティンプーに代わり都が置かれた古都である。ブータンでは今でも政治と宗教が近くにあり、各県に建つゾンという国独特の機能をもつ城塞内に、役所と僧院が共存している。川の合流地点に建つ「プナカ・ゾン」はそんなゾンの中でも最高峰ともいわれ、国の紙幣ニュルタムにもその姿が描かれている。

画像: シックスセンシズ ブータンの中でも最も温暖な場所にあるプナカ・ロッジには、ブータン国内で数少ない温水のアウトドアプールも。広さも国内最大

シックスセンシズ ブータンの中でも最も温暖な場所にあるプナカ・ロッジには、ブータン国内で数少ない温水のアウトドアプールも。広さも国内最大

画像: プナカ・ロッジのプールの上に浮かんでいるように建つリビングルーム&ラウンジ。両サイドの眼下に見事な棚田が広がる

プナカ・ロッジのプールの上に浮かんでいるように建つリビングルーム&ラウンジ。両サイドの眼下に見事な棚田が広がる

 仏を信じ、自然を尊び、王を敬うブータンの人々。「LOVE YOUR LIFE」と言われて以来、この国を繰り返し訪れ気づいたのは、彼らが自分の人生の価値を知り、“足る”を知り、自己がおかれている状況を肯定しているということだ。便利な道路やトンネルより自然のままの姿の山々を選ぶ。民族衣装でトレンドを楽しむ。手のひらにある宝を慈しみ、感謝し、その宝を未来へつなげようとする姿勢は、滞在したシックスセンシズ ブータンで垣間見ることができたものとも通じる。あるがままを肯定して感謝し、次世代のことを思いやる姿。これが人生を愛することと“幸せ”につながっているのではないだろうか。他と比較したり足りない事柄に焦点を当て開発を進めるのではなく、“足る”を知る価値観をもつ。競争ではなく共存を重視する。ブータンの人たちの人生観に、持続可能な社会へのカギが隠されているように思えてならない。

画像: かつては“一家にひとりは僧侶”といわれていたほど、ブータンでは仏教が暮らしに根づいている。寄宿舎併設の国立の僧侶学校もあり、地方の子どもや両親を失った子どもたちにも、仏教を礎にした学びの場がある

かつては“一家にひとりは僧侶”といわれていたほど、ブータンでは仏教が暮らしに根づいている。寄宿舎併設の国立の僧侶学校もあり、地方の子どもや両親を失った子どもたちにも、仏教を礎にした学びの場がある

 いつしか車窓に青々とした棚田の景色が広がっていた。いまだに、ほとんどが手植え手刈りで米作りが行われている。車を止めて、田んぼで作業をする女性たちに近づき、話しかけた。挨拶をかわしてから、いつしかブータンの旅での恒例となっている質問をしてみた。
「ガ・トト、キ・トトですか?」

画像: プナカの美しい棚田の風景の中で稲作に励む女性たち。笑いながら「ガ・トト、キ・トト」と答えてくれた

プナカの美しい棚田の風景の中で稲作に励む女性たち。笑いながら「ガ・トト、キ・トト」と答えてくれた

 実は、“幸せの国”ブータンの公用語、ゾンカ語に、“幸せ”に対応する言葉はないのである。最も近い意味をもつとされる言葉が、“ガ・トト、キ・トト”で、心身が心地よい状態を意味する。「ガ・トト、キ・トトですよー!」
 問いに手を止めて、声を張り上げて答えてくれる。どうしてですか? と聞くと、「だって、するべき仕事があるんだから、ありがたくてガ・トト、キ・トト」と言う。それから続けて「でも、仕事がなかったら、もっと、ガ・トト、キ・トトだね」と言ってから、大きな声で笑った。

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フリーダイヤル:0120-921-324
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