BY KYOKO SEKINE
“シャングリ・ラ(Shangri-la)”と言う名を聞いて、“桃源郷”や“理想郷”を思い起こす人はどれほどいるだろう。
ここで挙げる“シャングリ・ラ”は、「シャングリ・ラ ホテル 東京」のことを述べているが、もともとこのホテル名は、1933年に出版されたジェームズ・ヒルトン著の伝奇小説『失われた地平線』の舞台となった中国の奥地にある伝説の地“シャングリ・ラ”を由来とし、その名は、‘永遠の平穏と温かいもてなし’を持って世界中に知られている、と説明がある。
シャングリ・ラ ホテル 東京が誕生したのは、2009年3月2日。「シャングリ・ラ ホテルズ&リゾーツ」としては日本で初となるホテルであり、ロケーションの素晴らしさは開業当時から話題となった。東京駅に隣接する「丸の内トラストタワー本館」の31階から37階までを客室に使用し、その客室総数は200室。スタンダードでも50㎡、プレジデンシャルスイートとなると、269㎡もの広さがある。
館内にレストランは2カ所。極上のイタリアンとワインセレクションが充実した「ピャチェーレ」、1830年創業の根強い人気を誇る老舗日本料理店「なだ万」が入っている。そして28階には、エレガントな空間「ザ・ロビーラウンジ」があり、ホテル自慢のアフタヌーンティーを始め、嬉しいことに、シャングリ・ラならではのラクサやチキンライスなどのアジア料理も揃う。都心のパノラマを眺めながら、ゆったりと大人のカクテルタイムを楽しむのもお薦めだ。
東京駅から最短のロケーションの良さが圧倒的な支持を受けているが、2019年に10周年を迎えたシャングリ・ラ ホテル 東京の自慢は、オープン以来、変わらぬアジアンホスピタリティにある。また「濃やかで温かなもてなし、謙虚で感謝の心を忘れず、努力を傾注する」という、シャングリ・ラのコアバリューであるもてなしの極意に溢れている。実際にホテルを訪れ、スタッフとのやりとりをしていても、確かに誰もが丁寧できめの細かい配慮が行き届いている。そしてゲストとスタッフの距離感にも快適さを感じた。近すぎず、遠すぎず…… ホテルのスタッフには頭の下がる思いがする。
シャングリ・ラには世界のグループホテルで人気のスパ「CHI SPA(氣スパ)」がある。私自身、世界4カ国で試した経験があるが、地元の東京では未経験。「アジアのヒーリング哲学″氣”の流れを促し自然治癒力を高める」を基本に、数々のトリートメントを提供しており、毎回、シャングリ・ラを訪れる楽しみの一つともなっている。
それと同時に、いや、それ以上に印象的なのは、なんといってもシャングリ・ラと言うブランドならではの、キラキラと輝く巨大なシャンデリアである。ロビーラウンジには890もの銀杏の葉の形をしたクリスタルからなるシャンデリアが輝き、また吹き抜けの螺旋階段に沿い、29階から27階までの3フロア分にわたり下げられているのは、降り注ぐ雨粒を表現した1,070個のクリスタルを含む48万個のパーツが繋がれたアイコニックなシャンデリアだ。驚きは、大小さまざまなシャンデリアは、館内すべてを数えると50種にもなるという。やはり「‘桃源郷’なので…」とホテルの広報担当者は微笑みながら語った。
シャングリ・ラ ホテル 東京(SHANGRI-LA HOTEL, TOKYO)
住所:東京都千代田区丸の内1-8-3 丸の内トラストタワー本館
電話:03(6739)7888
客室数:全200室
料金:¥65,000~(1泊1室2名の室料。消費税・サービス料別)
公式サイト
せきね きょうこ
ホテルジャーナリスト。フランスで19世紀教会建築美術史を専攻した後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。在職中に住居として4ツ星ホテル生活を経験。以来、ホテルの表裏一体の面白さに魅了され、フリー仏語通訳を経て、94年からジャーナリズムの世界へ。「ホテルマン、環境問題、スパ」の3テーマを中心に、世界各国でホテル、リゾート、旅館、および関係者へのインタビューや取材にあたり、ホテル、スパなどの世界会議にも数多く招かれている。雑誌や新聞などで多数連載を持つかたわら、近年はビジネスホテルのプロデュースや旅館のアドバイザー、ホテルのコンサルタントなどにも活動の場を広げている
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