本サイトの人気連載「新・東京ホテル物語」を執筆中のホテルジャーナリスト、せきねきょうこ氏が、進化しつづける星野リゾートの人気の秘密を語る

BY T JAPAN

 日本を代表するホテルジャーナリスト、せきねきょうこ氏が、このたび『麗し日本旅、再発見! 星野リゾート10の物語』を上梓した。コロナ禍の影響で旅行業界にとって非常に厳しい状況が続く中でも人気が衰えることなく、その経営手腕やポリシーに注目が集まる「星野リゾート」。長年にわたるホテル・旅行業界への取材経験に裏打ちされた視点を持つせきね氏に、いま改めてその魅力を聞いた。

画像: 静謐な森と、千曲川水系の水を湛える池に囲まれた「星のや軽井沢」

静謐な森と、千曲川水系の水を湛える池に囲まれた「星のや軽井沢」

―― 創業の地・軽井沢における各施設での“ゼロエミッション達成”などをはじめ、環境活動に早くから取り組んできたことが、星野リゾートの魅力の一つだと思われます。他社の取り組みと差別化できるのは、どのような点でしょうか?

「最近は社会的責任という志のもと、有名ホテルや国際チェーンホテルでも、見えないところでエコ活動やSDGsの目標達成に向けた多大な努力をされています。ただ、星野リゾートが他と異なると思われる点は、100年以上も前の家族経営旅館『星野温泉旅館』から始まった小さな集合体の結束であり、大きな組織となった今もなお、代表もスタッフも、“自分たちで大切に、その土地の宿を作り上げていく家族経営旅館のようなアイデンティティ”を持ち合わせているところにあると感じています。特に星野リゾートのフラッグシップとも言える『星のや軽井沢』ではその点が顕著に現れ、自然を大切にし、自然と共存できる宿として始まり、自然の恵みに感謝する…… など、ゲストと共有するすべての空間が、環境活動の促進に繋がっているのです」

画像: 「星のや軽井沢」の施設内の池に照明器具をひとつひとつ設営するスタッフ

「星のや軽井沢」の施設内の池に照明器具をひとつひとつ設営するスタッフ

画像: 「星のや軽井沢」、「軽井沢ブレストンコート」では、すでに2011年から廃棄物再資源化率100%を達成。写真は軽井沢ブレストンコートの資源ステーション。ごみの分別の細かさが目を引く

「星のや軽井沢」、「軽井沢ブレストンコート」では、すでに2011年から廃棄物再資源化率100%を達成。写真は軽井沢ブレストンコートの資源ステーション。ごみの分別の細かさが目を引く

――「星のや竹富島」など、地元と共に生き、その土地の伝統や文化を継承し、訪れる宿泊客や若い世代につないでいくという理念にも目を見張るものがあります。せきねさんにとって印象深いエピソードがあればお聞かせください。

「いくつもあります。竹富島を代表するキーパーソンにインタビューをした時のことです。『星野さんはこの竹富島に最初から歓迎されたわけじゃない』との言葉を聞きました。そうした厳しい環境に代表は立ち向かい、訪れるたびに島の人(島人・しまんちゅ)と集まり、宴を設け、夜中まで話をし、関係を築きながら“うつぐみの心”が互いに生まれてきたと語っていました。いつもブレない代表の意志は、何年も通いながら島の人々の心を動かし、自然を壊すことなく本来の竹富島の集落のようなリゾートが生まれました」

画像: 「星のや竹富島」では、島の集落に暮らすような、ゆったりとした滞在を提案している

「星のや竹富島」では、島の集落に暮らすような、ゆったりとした滞在を提案している

「もうひとつ、念願だった竹富島の重要な祭りである“種子取祭(タナドゥイ)”に参加したときに島人に言われたこと。『最近、星野の若いリーダーたちが島の若者のように祭りを積極的に手伝ってくれる、本当の島人のように』と。一方で、伝統の祭りに食べる粟の餅を作る人は、島でもほとんどいないとも言われるなか、リゾート内では種子取祭に欠かせないお供え物として、もち米・粟・小豆で作られる“イイヤチ”を伝統の手法でつくり、デモンストレーションとともにゲストに振舞っています。今では、星野リゾートが島の住人に代わって伝統を継承しているとも言えるのです」

画像: 2012年に開業した「星のや竹富島」。それまで島内にある宿泊施設は民宿だけだったという

2012年に開業した「星のや竹富島」。それまで島内にある宿泊施設は民宿だけだったという

―― コロナ禍でも人気が衰えることなく滞在客が訪れている星野リゾートですが、その理由はどこにあるのでしょうか?

「“星野リゾートを選べば、きっと安心安全が確保されているだろう”という信頼感を築きあげ、広報活動が有効に機能して、今の状況でも楽しくのんびりと贅沢な滞在できる、純粋に“旅の楽しさ”が味わえるということを、多くの人に共有できていることが大きい。同時に口コミも、宿泊客の獲得に大きく寄与していると思います。次にロケーションの良さ、さらにその地方ならではの魅力を発信する独自の参加型アクティビティなどの飽きさせない宿づくりが、他の宿泊施設とは圧倒的に異なる魅力を放ち、滞在者の心を掴んで離さないのです」

「また、施設内で徹底した感染症対策が施されていることは、一度でも現地に行って滞在すればよく分かります。どこよりも早く“ビュッフェ”が再開できたのも、厳しい感染症対策によってゲストが安心できるように、『そこまでやるの!?』と思わせるほどの企業努力を肌で感じることができました。どの宿に泊まっても、スタッフ全員がゲストのために細やかに動いている様子、一生懸命さが伝わってきます」

画像: 戦国時代の豪商、角倉了以が別邸・書庫として使用していた私邸のあった場所に建つ「星のや京都」では嵐山の四季を堪能できる

戦国時代の豪商、角倉了以が別邸・書庫として使用していた私邸のあった場所に建つ「星のや京都」では嵐山の四季を堪能できる

画像: 本格的なグランピングを日本でいち早く提案して2015年に開業した「星のや富士」 PHOTOGRAPHS BY MIKIRO TAMAI

本格的なグランピングを日本でいち早く提案して2015年に開業した「星のや富士」
PHOTOGRAPHS BY MIKIRO TAMAI

 リゾートというと“快適なひとときを過ごせる場所”というイメージを持つが、星野リゾートは滞在する心地よさや食事の充実など、ユーザーファーストの姿勢を追及するのはもちろんのこと、社会的責任を負うという覚悟を持って運営していることが本書を読むと手に取るように伝わってくる。単に行く、泊まるではなく「体験する」という言葉がぴったりの場所なのである。全国に数ある星野リゾートの施設から厳選された20の宿を紹介する本書は、読み終わると、束の間の非日常を楽しんで帰ってきたかのような、旅のあとと同じ気分に浸ることができる。今の状況が落ち着いたらどこへ行こうか、心おどる計画を立てるのにも役立ちそうだ。

画像: 『麗し日本旅、再発見! 星野リゾート10の物語』 せきねきょうこ著 ¥1,980/講談社 COURTESY OF KODANSHA

『麗し日本旅、再発見! 星野リゾート10の物語』
せきねきょうこ著
¥1,980/講談社
COURTESY OF KODANSHA

せきねきょうこ
ホテルジャーナリスト。フランスで19世紀教会建築美術史を専攻した後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。在職中に住居として4ツ星ホテル生活を経験。以来、ホテルの表裏一体の面白さに魅了され、フリー仏語通訳を経て、94年からジャーナリズムの世界へ。「ホテルマン、環境問題、スパ」の3テーマを中心に、世界各国でホテル、リゾート、旅館、および関係者へのインタビューや取材にあたり、ホテル、スパなどの世界会議にも数多く招かれている。雑誌や新聞などで多数連載を持つかたわら、近年はビジネスホテルのプロデュースや旅館のアドバイザー、ホテルのコンサルタントなどにも活動の場を広げている
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