BY TAKAKO KABASAWA, PHOTOGRAPHS BY YUKO CHIBA
市街地を囲むように高崎山、鎧ヶ岳、霊山、九六位山、樅木山が個性的な稜線を描き、市域の約半分を森林が占めるほど緑に恵まれた「大分市」。北に別府湾を臨み、渡たる風はどこまでも瑞々しい。この土地を見守り遥かなる時を刻んできた聖なる森へ、まずは挨拶に参じたい
《SEE》「柞原八幡宮(ゆすはらはちまんぐう)」
八幡様の森で、太古の神秘に抱かれる
森には不思議な吸引力がある。人間の手で荒らされることのない「入らずの森」なら、なおの事だ。柞原八幡宮は豊後で最大とされた神社で、1200年近い歴史を持つ神域。社を構える柞原の森は、「八幡様の森」と呼ばれ、数千年前からの森の姿を今に留めている。森に圧倒的な存在感を与えているのは、暖かい気候に適したイチイガシ、コジイ、シイノキ、そしてイスノキなど常緑広葉樹の高木だ。表参道の石段を上るとすぐに樹齢約450年のホルトノキがお出迎え。天を仰ぐほどの凛々しい姿に後ろ髪を引かれながらも、さらに奥へと歩を進めると原生林の鼓動が聞こえてくるようだ。
柞原八幡宮の起源は、天長4(827)年の平安時代にまで遡る。比叡山延暦寺の金亀(こんき)和尚が、八幡神社の総本宮である宇佐神宮に1000日間の宮籠りに入った際、お告げにより「八幡神の衣が空を飛び柞原の森の大楠にとまる」という験(しるし)に遭遇する。この出来事は朝廷に奏上され、仁明天皇の命によって大楠のある土地に社殿を創建。承和3(836)年に完成を迎え、柞原八幡宮の歴史の幕が開ける。神社の名称は、元来「由原八幡宮」と表記されてきたが、明治以降に「柞原」の文字が使われるように。「柞」はクヌギ類の総称であると同時に、樹高が20m以上にも達するイスノキ(別名ユスノキ)を意味。森を形成する樹々の恩恵に預かり、その名に当てたとされている。
社殿は本殿を中心に、申殿や拝殿、廻廊、楼門が続く典型的な八幡造りを成し、ほとんどが国の重要文化財に指定されている。その見所の一つがご神木の近くに佇む南大門だ。別名「日暮し門」と呼ばれ、銅板葺の入母屋造で前後に大きな唐破風の向拝が付けられ、どっしりとした趣がある。壁面には聖人や龍、花、鳥などが彫刻され、豊後国随一の入口を飾るに相応しい職人技が光る。また、この土地を訪れたい……そう思える自分だけの「宿り木」を見つけながら、神様の森を巡ってはいかがだろう。
住所:大分県大分市大字八幡987
電話:097-534-0065
公式サイトはこちら
《STAY》「JR九州ホテル ブラッサム大分」
絶景を眺める天空のスパで「ととのう」
旅の宿は、何に価値を求めるかが大切だ。ここ「JR九州ホテル ブラッサム大分」の魅力は、ホテルの19~21階に設えた『CITY SPA てんくう』の眺望にある。地上80m、最上階の天空露天風呂は、湯船に身を沈めると水面と別府湾の水平線が並行し、個性的なシルエットを描く山々がフレームのように連なる。「露天風呂は時間帯を変えて、ぜひ3つの顔を楽しんでください」と語るのは、支配人の木原誉さん。幻想的な夜明けのマジックアワー、山も海も珊瑚色に染まるトワイライトタイム、そして精緻な街明かりが美しい暮夜……。
露天風呂や内風呂に加え、多種多様のスパが堪能できるのも嬉しい限り。フィンランド産の香花石を使ったサウナは、優しい光とともに眼下に大分の街並みが広がる開放感。そのほか、柔らかなミストが身体の疲れをゆっくりと解きほぐすアロマスチームサウナや、岩塩壁から発せられる輻射熱が代謝を促すアロマソルトスパ、発汗後に自然と呼吸が深まるクールスパなど。巡るだけで精神まで研ぎ澄まされるよう。
このホテルのもう一つ特筆すべき点は、クルーズトレイン「ななつ星in九州」を手がけた水戸岡鋭治氏が手がけた内装にある。九州に由来する石や木をふんだんに用い、伝統工芸の組子細工がロビーラウンジに独創的な温もりを演出。さらに、客室の家具やインテリア照明に到るまで、まるで豪華列車の旅気分を体感することができる。大分駅直結という好立地に加え、滞在したゲストにしかわからない解放感がここに。
住所:大分県大分市要町1-14
電話:097-578-8719
公式サイトはこちら
▼関連記事