発見、感動、思索……知的好奇心を刺激する、映画好きな大人のための今月の新作を厳選!

BY REIKO KUBO

吉沢亮と横浜流星が渾身の演技!宿命と芸が交錯する壮絶な一代記『国宝』

画像: 揺るぎない存在感で観客を圧倒する吉沢亮の演技から目が離せない ©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

揺るぎない存在感で観客を圧倒する吉沢亮の演技から目が離せない

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

 原作者の吉田修一が3年間、黒衣として歌舞伎の世界に身を置いた経験をもとに描き上げた小説を、『悪人』『怒り』で吉田と組んだ鬼才・李相日監督が映画化し、先のカンヌ国際映画祭を沸かせた映画『国宝』。その主人公は、任侠一家を張る父親を殺され、上方歌舞伎の名門の家に引き取られた喜久雄。彼の義兄弟となるのは、名跡を継ぐべく生まれてきた俊介。「喜久ぼん」「俊ぼん」と呼び合い、幼い頃から互いに切磋琢磨して芸を磨いてきた二人には、やがて芸の道ならではの残酷な別れが訪れて……。

画像: 今年はNHK大河ドラマの主演でも魅了し、演技の幅をますます広げる横浜流星 ©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

今年はNHK大河ドラマの主演でも魅了し、演技の幅をますます広げる横浜流星

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

 舞台化粧をする幼少期の喜久雄(『怪物』で数々の新人賞を受賞した黒川想矢)から、青年期の喜久雄に鏡の中で入れ替わり、観る者をゾクゾクさせ続ける吉沢亮。対照的に、御曹司に降りかかった挫折を痛切に表現する俊介役の横浜流星。喜久雄に才能を見出し引き取る名門当主に渡辺謙、人間国宝の女形を生きる田中泯、そのほか、寺島しのぶ、高畑充希、森七菜、見上愛、宮澤エマ、永瀬正敏ら豪華な俳優陣が揃い踏み。守ってくれる(歌舞伎の)血筋を持たないがゆえに技で勝負するしかない喜久雄は、日本一の役者になるためなら悪魔に魂を売ることも辞さない覚悟。そんな美しくも壮絶な一代記に目を奪われる175分だ。

 さらに表裏一体の関係にある喜久雄と俊介が魅せる「二人藤娘」や「二人道成寺」、徳兵衛・お初に二人の人生を重ねる「曽根崎心中」、そして圧巻の「鷺娘」など、猛稽古を積んで挑んだ吉沢と横浜が披露する歌舞伎演目も美しく切ない。お見事!

画像: 『国宝』本予告【6月6日(金)公開】|主題歌「Luminance」原摩利彦 feat. 井口 理 www.youtube.com

『国宝』本予告【6月6日(金)公開】|主題歌「Luminance」原摩利彦 feat. 井口 理

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『国宝』
6月6日(金)全国東宝系にて公開
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名声か死かーーハリウッドの闇で輝く女優魂!『MaXXXine マキシーン』

画像: 欲望と殺意が渦巻く夢の都で生き残りをかけるマキシーン(ミア・ゴス) ©︎2024 Starmaker Rights LLC. All Rights Reserved.

欲望と殺意が渦巻く夢の都で生き残りをかけるマキシーン(ミア・ゴス)

©︎2024 Starmaker Rights LLC. All Rights Reserved.

 シリーズ第1作『X エックス』では1979年、第2作『Pearl パール』では1918年と時代を遡りながら、映画館や撮影現場、オーディションを舞台に衝撃的な物語を展開してきた人気シリーズ三部作の完結編がついに登場。舞台は『X エックス』から6年後、映画や音楽の性的・暴力的内容が批判を浴び、連続殺人犯「ナイト・ストーカー」が市民を恐怖に陥れていた1985年のハリウッド。

 主人公は、恐怖の事件から唯一生き延び、ポルノ映画界の人気女優となったマキシーン(ミア・ゴス)。トレードマークのそばかすはそのままに、赤毛をブロンドに染めてハリウッド・スターを目指す。「ポルノ女優がなぜこのオーディションに?」という侮蔑的な質問にも動じず、“悪魔を見た者”ならではの会心の演技を披露し、女性監督(エリザベス・デビッキ)から大ヒットホラーの続編『ピューリタン2』の主役を射止める。ところがパーティに参加したマキシーンの同僚たちが惨殺され、怪しげな私立探偵(ケヴィン・ベーコン)が彼女の前に現れて……。

画像: 人気シリーズ『ザ・クラウン』でダイアナ妃を好演したエリザベス・デビッキが監督役で出演(右) ©︎2024 Starmaker Rights LLC. All Rights Reserved.

人気シリーズ『ザ・クラウン』でダイアナ妃を好演したエリザベス・デビッキが監督役で出演(右)

©︎2024 Starmaker Rights LLC. All Rights Reserved.

 5月公開のボディ・ホラー『サブスタンス』でのデミ・ムーアの演技が話題を集めているが、これまでの“絶叫クイーン”から脱皮したヒロイン像を生み出した本作のミア・ゴスにも注目してほしい。自分の身は自分で守り、自分らしくない人生は受け入れないマキシーン。エンディングの「ベティ・デイヴィスの瞳」を聴きながら、”田舎探偵ごときを撃退するのは朝飯前”のマキシーンはこれで見納めかと思うと寂しさが募る。

画像: 映画 『MaXXXine マキシーン』6.6(金)公開/予告編 www.youtube.com

映画 『MaXXXine マキシーン』6.6(金)公開/予告編

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『MaXXXine マキシーン』
6月6日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
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再びカンヌを魅了、早川千絵監督が刻む少女のまなざしと家族の肖像ーー『ルノワール』

画像: 主演の鈴木唯は撮影当時若干11歳で繊細な演技を披露し、鮮烈な印象を残す © 2025「RENOIR」製作委員会 / International Partners

主演の鈴木唯は撮影当時若干11歳で繊細な演技を披露し、鮮烈な印象を残す

© 2025「RENOIR」製作委員会 / International Partners

 高齢化が進んだ近未来を舞台にした初長編『PLAN 75』で第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門のカメラドール(新人賞)特別表彰を受けた早川千絵監督。その待望の新作『ルノワール』は、監督第2作にして同映画祭のコンペティション部門に選出され、喝采を浴びた珠玉の一作だ。

 舞台は、1980年代バブル期の郊外の街。ドキリとさせる夢物語を綴って大人たちを慌てさせる感受性豊かな11歳の少女フキは、末期癌を患い入退院を繰り返す父(リリー・フランキー)に寄り添いながら、闘病が長引いてギクシャクする両親を黙って見つめている。超能力番組に夢中になり、新しい友達と出会い、ルノワールの絵画や西洋の音楽と出会って心躍らせる一方で、フキは大人たちを通して哀しみや危険、醜悪さに触れながら成長してゆく。

画像: いまや若手を代表する実力派となった河合優実 © 2025「RENOIR」製作委員会 / International Partners

いまや若手を代表する実力派となった河合優実

© 2025「RENOIR」製作委員会 / International Partners

 あまり感情を表に出すことなく静かに大人たちを観察しているフキを演じて観客の心を掴む新鋭・鈴木唯。そんな娘との絆を抑えた芝居で醸し出すリリー・フランキー。生活に疲れた母を演じながら、持ち前のチャーミングさで観る者を癒す石田ひかり。そして『PLAN 75』に続き、登場した瞬間から空気を揺るがす河合優実や、大人の狡さを絶妙に漂わせる中島歩。早川監督が巧みなキャスティングを操って編み上げる夏の光と影の物語からは、携帯電話やSNSのない、子どもが独りきりで孤独を楽しめた時代への郷愁と、死とともにある生の讃歌が溢れ出す。

画像: カンヌ国際映画祭コンペ部門出品!早川千絵監督最新作『ルノワール』予告編/6月20日全国公開 www.youtube.com

カンヌ国際映画祭コンペ部門出品!早川千絵監督最新作『ルノワール』予告編/6月20日全国公開

www.youtube.com

『ルノワール』
6月20日(金)新宿ピカデリー他全国ロードショー
公式サイトはこちら

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