発見、感動、思索……知的好奇心を刺激する、映画好きな大人のための今月の新作を厳選!

BY REIKO KUBO

ディカプリオが爆笑と熱狂を巻き起こす父娘アクション超大作『ワン・バトル・アフター・アナザー』

画像1: © 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED. IMAX® is a registered trademark of IMAX Corporation. Dolby Cinema® is a registered trademark of Dolby Laboratories

© 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
IMAX® is a registered trademark of IMAX Corporation.
Dolby Cinema® is a registered trademark of Dolby Laboratories

 みんな大好きポール・トーマス・アンダーソンの最新作は、トマス・ピンチョンの小説「ヴァインランド」を原案に20年越しに構想を結実させた念願の1本。主演は、この人気監督の出世作『ブギーナイツ』の主演オファーを断ったことを約30年間悔いてきたレオナルド・ディカプリオ。彼が演じるのは、冒頭でカリフォルニアの移民収容所所長ロックジョーを出し抜き、施設を爆破する革命組織「フレンチ75」の一員パット。やがてカリスマ革命家との間に娘が生まれ、パットは革命から身を引こうとするが、彼女はパットと娘を置き去りにして革命活動を再開してしまう。それから16年、パットはボブと名を変え、娘ウィラを守りながら身を潜めて暮らしていたが、娘が誘拐されたことから、タイトル通り次から次へと戦いが繰り広げられることになる。

画像2: © 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED. IMAX® is a registered trademark of IMAX Corporation. Dolby Cinema® is a registered trademark of Dolby Laboratories

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 肝心な場面で「フレンチ75」の残党に救いを求める暗号を忘れたり、逃走中にビルから落っこちたりするボブのポンコツぶりと、美しく賢い娘ウィラを演じる新星チェイス・インフィニティの鮮烈な輝き。『チェ』で革命家チェ・ゲバラを演じたベニチオ・デル・トロが空手の師匠 “センセイ”となって大活躍。対する宿敵ロックジョーを演じるショーン・ペンの笑えるほどのキレっぷりも見どころだ。シンプルながら手に汗握るカーアクションや、監督の盟友ジョニー・グリーンウッドによるシビれるサウンド。そして、どこかに潜む謎めいた組織「クリスマスの冒険者クラブ」の陰謀をにおわせる仕掛け……。どこをとっても可笑しくスリリング、そしてハートフルに展開する本作は、年明けのアカデミー賞Ⓡを席巻するに違いない。

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『ワン・バトル・アフター・アナザー』
10月3日(金)全国公開 IMAX®/Dolby Cinema®同時公開
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江戸文化爛熟の時代を舞台に、長澤まさみが挑む北斎の娘の物語『おーい、応為』

画像1: ©︎2025「おーい、応為」製作委員会

©︎2025「おーい、応為」製作委員会

 父・葛飾北斎から「あご」と呼ばれ、用があると「おーい、おーい」と連呼するものだから応為という画号を授かったといわれる娘・お栄。絵師に嫁ぐも出戻り、北斎の画業を手伝いながら自らも絵筆を執った女絵師だ。北斎に「美人画にかけては応為に敵わない」と言わしめ、東京・原宿の太田美術館所蔵の《吉原格子先之図》など、西洋絵画を思わせる光と影を操る画期的な作品を残した。生没年は不詳で、女性が芸で身を立てることが難しかった時代に北斎の代筆をしていたと言われ、応為の名で現存する作品は十数点にとどまる。

画像2: ©︎2025「おーい、応為」製作委員会

©︎2025「おーい、応為」製作委員会

 この謎めいた応為を、江戸文化爛熟の時代に鮮やかに蘇らせたのが、漫画家・作家・時代考証家として知られる杉浦日向子の傑作漫画『百日紅』。後にアニメーション映画『百日紅 Miss HOKUSAI』やテレビドラマとしても映像化された北斎と応為の物語に、新たに挑むのは『日々是好日』『星の子』の大森立嗣監督だ。ヒロイン応為を演じるのは、大森作品『MOTHER マザー』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した長澤まさみ。引っ詰めた着物から長い手足をのぞかせた長澤が、応為の気っ風のよさと胸の奥に封じた切なさをちらり滲ませて魅了する。そして父の北斎には永瀬正敏。ハマり役のふたりが、互いの才能を認めながらも憎まれ口を叩き合い、ゴミ屋敷のような家で一心不乱に筆を執る天才絵師親子の孤高の姿に肉薄する。

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『おーい、応為』
10月17日(金)公開
公式サイトはこちら

アイスランドをジェンダー平等1位の国へ導いた起点を映す感動作『女性の休日』

画像1: © 2024 Other Noises and Krumma Films.

© 2024 Other Noises and Krumma Films.

 男女間の格差を数値化したジェンダーギャップ指数で、日本は2025年、148カ国中118位。対して16年連続で1位に輝くのがアイスランド。映画『女性の休日』は、カラフルなアニメーションを交えながらアーカイブ映像や証言で綴られるドキュメンタリー。北欧の中ではジェンダー平等後発国だったアイスランドが立ち上がった、1975年10月24日の1日を描き出す。

「船長になりたい」「弁護士になりたい」「農場主になりたい」――そんな思いを、「女性だから無理だよ」といなされた少女たちが「なぜ」を抱えて成長し、1970年代に行動を起こす。先陣を切って男女の不平等を訴えたのは、赤いファッションに身を包み、クリスマスの家事労働や美人コンテストにユーモラスな抵抗を見せた「レッドストッキング」の女性たち。そして国際婦人(女性)年である1975年の10月24日、アイスランドの女性90%が仕事や家事を休む大規模ストライキが敢行された。タイピストや電話交換手、水産工場で魚をさばいたり、農場で下働きをする女性たち、そして家庭の主婦や学生もが歌を口ずさみながら行進した光景は、「まるで流れる溶岩のようだった」と当事者たちは振り返る。

画像2: © 2024 Other Noises and Krumma Films.

© 2024 Other Noises and Krumma Films.

 そして、この日は女性たちの連帯のゴールではなく「はじまり」だった。男性たちに敵対するのではなく、目指すのは誰もが生きやすい社会。船長になりたかった少女は、1980年に民選による世界で初めての女性大統領に、弁護士になりたかった少女は女性初の最高裁判所長官になった。16年間不動のジェンダーギャップ指数1位が、国民ひとりひとりが目覚め、前進する不断の努力を重ねた証とわかる本作は、立ち止まった心と体に軽やかに刺激を送るエンパワーメントなドキュメンタリーだ。

画像: 映画『女性の休日』予告編(2025年10月25日より劇場公開) www.youtube.com

映画『女性の休日』予告編(2025年10月25日より劇場公開)

www.youtube.com

『女性の休日』
10月25日(土)より、シアター・イメージフォーラム他全国順次ロードショー
公式サイトはこちら

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