アイルランド人デザイナー、ロシャの心に強く響いたのは、ブルジョワが不眠症に悩まされていたという点。そこで彼女は、ドレスのようで羽毛布団のような、ふんわりとしたコクーン型の服を考案した。「夜遅くまで仕事をするときに、そっと守ってくれて、気持ちをなごませてくれるような何かを作れたらと思って。羽毛布団の下にもぐりこんだような気持ちになれる服をね」とロシャ。セックスから潜在意識に至るまであらゆる題材をもとに、ブルジョワが手がけた多くのさまざまな作品に、ロシャは自分との深いつながりを感じるという。確かに、「生物の形態を思わせるブルジョワの作品」と、ロシャのゆがんだシルエットのドレスには不思議な類似点がある。ニューヨークのウースター通りにあるロシャのブティックの壁は、ブルジョワの《Lullaby》(子守歌の意味、2006年制作)という、生物のようなモチーフを楽譜に描いた24枚のスクリーン印刷が飾ってあるそうだ。《Lullaby》は今回のウェアだけでなく、ロシャの2015-’16年秋冬コレクションの着想源でもあり、これをもとに彼女は当時、赤い刺しゅうを施したスキンカラーのチュールドレスをデザインしている
PHOTOGRAPH BY KATJA MAYER
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