BY ITOI KURIYAMA
アートイベント「EASTEAST_TOKYO 2023」が開催される。さまざまなギャラリーが一堂に集まりアート作品を展示、販売をするという形態はアートフェアを思わせるが、それ以外のコンテンツも多く用意されており、アートに関心を持っているがそんなに詳しいわけではない…という私のような人でも楽しめるよう。本イベントのアソシエイトディレクターとギャラリーリレーションを務める渡邉憲行さんとアソシエイトディレクター、コミュニケーション統括担当の倉沢琴さんに話を聞いた
![画像: COURTESY OF EASTEAST_TOKYO 2023](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783302/rc/2023/02/10/07c7de080805f8c791ec967ed32cc5b3508236d3_large.jpg#lz:orig)
COURTESY OF EASTEAST_TOKYO 2023
――私がアートに明るくないこともあると思うのですが、約25の参加ギャラリーのラインナップを見ても知っているところがあまりなく…。どのような基準で選ばれたのでしょうか?
倉沢 アートの世界では、売り出し方や、インスタグラムのフォロワーの増やし方などを積極的に考えるのは好ましくないとされているのかも、と個人的に感じています。だから、超トップレベルにならない限り、多くの人たちに見てもらったり、横のつながりを持つのは難しい。そこで、「EASTEAST_」を、今成長過程にあるギャラリーがまとまって世の中にアピールできる機会にしたいと考えています。
渡邉 アートの世界に限らずなのですが、今「PRやビジネスがうまく、有名人とのつながりがある」といった付加価値的な要素を得意とするところに力や富が集まっていくような感覚があります。それに、関心が若手の青田買いか超ベテラン作家に二極化しているような気もする。だからある程度年齢も重ねて、作品を安売りもできない中堅が一番難しい立場にあるのですが、その中にもすばらしい人たちはたくさんいて、まだまだ知られていないトピックがあるはず。それらを紹介したいと思っているんです。
――では知る人ぞ知るギャラリーが集まっているのですね。
渡邉 中でも、作品の売買をするだけではなく、作家との関係性を大切にしてコミュニティを築き上げ、新しい価値観を皆で醸造しているギャラリーを選定しました。そして、市場の動向や貨幣価値関係なく、独自の美意識を持っているということも重要視しています。本イベントでは、さまざまなテイストを横断して感じることができ、東京を中心とした日本のアートシーンの生態系のようなものもわかってもらえるはずです。余計なお世話かもしれませんが、彼ら同士のつながりも生まれてほしいな、と思っています。
――個性豊かなギャラリーが多いのでしょうね。
渡邉 ヘア&ヘッドプロップアーティストの河野富広さんとアーティストのSayaka Maruyamaさんが手がける「konomad」のスペースを初めて訪れた時は衝撃を受けました。アートを展示してあるので画廊と言えるのかもしれませんが、民家だったような場所に作品が所狭しと設置されていて、僕が見たことのあるそれとは雰囲気も運営の仕方も違うんです。
![画像: 品川区荏原に拠点を置く「konomad」の展示風景。「EASTEAST_TOKYO 2023」では河野富広の近年の作品をまとめた本『Fancy Creatures』をローンチする COURTESY OF konomad](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783302/rc/2023/02/10/5e0ec11948e0a64e4055e3698d787c242896f35b_large.jpg#lz:orig)
品川区荏原に拠点を置く「konomad」の展示風景。「EASTEAST_TOKYO 2023」では河野富広の近年の作品をまとめた本『Fancy Creatures』をローンチする
COURTESY OF konomad
倉沢 昨年東日本橋にオープンしたばかりの「Ritsuki Fujisaki Gallery」はギャラリストの藤崎律希さんが個人で経営しており、同世代である20~30代の新進気鋭のアーティストをメインに展示しています。
![画像: 「Ritsuki Fujisaki Gallery」からは所属アーティストの山本れいらなどが出展する。「I hate flowers1」© 山本れいら COURTESY OF Ritsuki Fujisaki Gallery](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783302/rc/2023/02/10/4f6c5901374cb2f9e51961a119531b5090ecab0a_large.jpg#lz:orig)
「Ritsuki Fujisaki Gallery」からは所属アーティストの山本れいらなどが出展する。「I hate flowers1」© 山本れいら
COURTESY OF Ritsuki Fujisaki Gallery
そして2020年荒川区の西尾久に誕生した「LAVENDER OPENER CHAIR」は、アーティストが集まって運営しているギャラリーで、食堂も同居しています。皆全然毛色が違うんです。
![画像: 荒川区の西尾久のギャラリー「LAVENDER OPENER CHAIR」。アーティストの䑓原蓉子、冨樫達彦、渡邉庸平がスタート。メンバーの冨樫が主催する食堂「灯明」が併設している COURTESY OF LAVENDER OPENER CHAIR](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783302/rc/2023/02/10/8ba7e0a3d791214e9d306052670a3997196b86a2_large.jpg#lz:orig)
荒川区の西尾久のギャラリー「LAVENDER OPENER CHAIR」。アーティストの䑓原蓉子、冨樫達彦、渡邉庸平がスタート。メンバーの冨樫が主催する食堂「灯明」が併設している
COURTESY OF LAVENDER OPENER CHAIR
渡邉 ZINEを取り扱ったり、出版を手がけながら一角で展示をやられているような「VOYAGE KIDS」や「stacks bookstore」などにも参加してもらっています。美術館やギャラリーと言われて想像するような何もないスペース、“ホワイトキューブ”とは異なるあり方を知っていただくのは、きっと刺激になるのではないでしょうか。本イベントでは、「アートってこういうものでしょ」という既成概念を裏切るような出会いがたくさんあるはずです。
![画像: 2015年にオープンした大阪にあるショップ「VOYAGE KIDS」から出展する®️寫眞の作品。「走馬灯at 長堀通」®️寫眞 ©®️寫眞 COURTESY OF VOYAGE KIDS](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783302/rc/2023/02/10/53b63234eef985677c889145f0523c6c2a101c83_large.jpg#lz:orig)
2015年にオープンした大阪にあるショップ「VOYAGE KIDS」から出展する®️寫眞の作品。「走馬灯at 長堀通」®️寫眞 ©®️寫眞
COURTESY OF VOYAGE KIDS
![画像: 2021年渋谷区神山町にオープンした書店「stacks bookstore」からはLURKなどが出展。「BUDDY5 」LURK ©︎ LURK COURTESY OF STACKS BOOKSTORE](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783302/rc/2023/02/10/3fc659c70d47f875778cd204166b9b68f529adf6_large.jpg#lz:orig)
2021年渋谷区神山町にオープンした書店「stacks bookstore」からはLURKなどが出展。「BUDDY5 」LURK ©︎ LURK
COURTESY OF STACKS BOOKSTORE
――展示スペースにもそれぞれの色が出そうですね。
渡邉 アートフェアは通常白壁で仕切られていることが多いのですが、それぞれのギャラリーが街の雰囲気や建築の個性を活かして展開していることを踏まえて、今回は数種類の壁をみなさんに提案して、展示空間をどう構成するかは各々に考えてもらっています。
倉沢 ギャラリーには、本質を薄めずに、ありのままで理解してもらえるようなプレゼンテーションをしてもらいたいんです。
――私のような初心者は、どのように会場を巡るのがおすすめでしょうか。
倉沢 トークイベントやビューイングツアー、身体表現や音楽のライブパフォーマンスなども企画しています。山梨県・河口湖に昨年オープンした、自らの置かれた環境について能動的に思考・実践を重ねるためのアーティスト・ラン・レジデンス(アーティスト自身が運営する滞在施設)「6okken」のチームによる「アート、その周辺の向かう先」という問いを来場者と共に考える参加型プロジェクトなど、アートに関わるプロジェクトショーケースも。あとは「キッチン」と呼んでいるのですが、フードコートもあって、食で独自の表現をされている「AC HOUSE」「TYON」などが出店します。そこで、ギャラリーやプロジェクトの展示をばーっと周った後に何か1個ぐらいアクティビティに参加し、最後に「キッチン」でゆっくりして、隣り合わせた人と喋って、みたいなプランではどうでしょうか。展示を見に行く、と気負うよりは、気軽に来てもらえるとうれしいです。
![画像: 「AC HOUSE」は昨年西麻布にオープン。ウォッカを使ったトマトと焼き茄子のパスタ「SPAGHETTI ALLA VODKA」など、意外性のある食材を組み合わせたメニューが楽しい。 COURTESY OF AC HOUSE](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783302/rc/2023/02/10/72ccb479fbd9bb24aab3fea71440e4c8464e83dd_large.jpg#lz:xlarge)
「AC HOUSE」は昨年西麻布にオープン。ウォッカを使ったトマトと焼き茄子のパスタ「SPAGHETTI ALLA VODKA」など、意外性のある食材を組み合わせたメニューが楽しい。
COURTESY OF AC HOUSE
渡邉 一気にたくさんのギャラリーの絵画やインスタレーション、彫刻といった多種多様な作品が見られておいしいご飯も楽しめる。最高の休日の過ごし方だと思います。
倉沢 エリアが決まっているロンドンやNYと違って、東京のギャラリーは各地に点在しています。それを1箇所でまとめて見られるのはお得ですよ!
渡邉 気になる作品があったら深掘りしてみてもいいし、高揚感を味わうだけでもいい。自由に楽しんでもらえたら。
――頭でっかちになる必要はないのですね!ふらりと行ってみたくなりました!最後に、このイベントを今後どう展開させていきたいかお聞かせください。
渡邉 引き続きアートに関わる人たちがコミュニケーションできる機会を設けたいです。そして、「EASTEAST_」がアジアのアート界の母艦のような存在になって、皆の海外進出の手助けができれば。日本・アジアのアート・カルチャーシーンの生態系をアートギャラリーなどのコミュニティ単位にフォーカスして紹介するマガジンも作る予定です。
倉沢 視点を変えるためにも、運営チームを新陳代謝しながら継続していくことが目標です。
渡邉 「EASTEAST_」 は2年に1回くらいのペースでの開催を目指しているのですが、3回で運営メンバー総入れ替えが健全かな、と考えています。
![画像: 渡邉憲行(Noriyuki Watanabe) NOZZA SERVICE INC.代表取締役。英国留学を経て、CALM&PUNK GALLERYの企画・渉外を担当。ギャラリー外でも数々の企画に携わっている。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783302/rc/2023/02/10/d9f5057ecf3a0dcbacab9fa2660775117825c324_large.jpg#lz:orig)
渡邉憲行(Noriyuki Watanabe)
NOZZA SERVICE INC.代表取締役。英国留学を経て、CALM&PUNK GALLERYの企画・渉外を担当。ギャラリー外でも数々の企画に携わっている。
![画像: 倉沢琴(Koto Kurasawa) 1994年大阪生まれ。ロンドン芸術大学卒業。デザイン事務所 YAR を経て、2022年6月よりクリエイティブオフィスSANAのメンバー。主なプロジェクトに、Hearth Kitchen、PARCO PRIDE WEEK「あいとあいまい」](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783302/rc/2023/02/10/be86e3ec3d36913d5f6024114c1af600f8f53feb_large.jpg#lz:orig)
倉沢琴(Koto Kurasawa)
1994年大阪生まれ。ロンドン芸術大学卒業。デザイン事務所 YAR を経て、2022年6月よりクリエイティブオフィスSANAのメンバー。主なプロジェクトに、Hearth Kitchen、PARCO PRIDE WEEK「あいとあいまい」
EASTEAST_TOKYO 2023
会期:2月17日(金) 14:00–19:00 / 18日(土) 12:00–19:00 / 19日(日) 12:00–17:00
会場:科学技術館
住所:東京都千代田区北の丸公園2番1号
入場料:1-Day Pass一般2,000円 23歳以下1,000円/3-Day Pass一般:5,000円 23歳以下2,500円/中学生以下は無料
問い合わせ先:info@easteast.org
公式サイトはこちら
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